No.10 通信記録
(銃撃音及び爆音が絶え間なく響いている)
【ぎゃあああぁああ!?】
【レイがやられた! 救護班は!? 援軍は!? 何時になったら来るんだ! これ以上は持たないぞ!】
【持つも何も最初から無理に決まってんだろ! 奴等に俺達の武器が通じた事があるかよ!】
【食い止めるなんて最初から無理だったんだ! 退却するしかない!】
【俺達が此処を逃げたら、アイツらは町まで行くぞ! 俺には娘が、あ、ぎゃああっ】
【くそっ! またやられたぞ! 土嚢も鉄条網もなんの役にも立たねぇ! なんなんだよあの光は! なんでぐにゃって曲んだよ!】
【作戦本部の連中は何やってんだ! 戦車どころか戦闘機も来ないぞ! 空爆は何時再開するんだ!?】
【そんなの分かりきってんだろ! とっくに全滅してるに決まってる! あの変な光に全部撃ち落とされてな! 今じゃもう俺達歩兵しか残ってねぇよ!】
【士気を下げるような事を言うんじゃない! 戦わなきゃ終わりなんだぞ!】
【畜生っ! あんな化け物の意味分かんねぇ攻撃で死ぬなんて、そんな最期はごめんだ!】
【あ、ああ……主よ、何故こんな……】
【何時まで不貞腐れてんだテメェは! 十字架を握る前に銃を持て! 撃ちまくれ! どんな化け物だろうが、銃で死なない訳がねぇ!】
【銃なんかで死ぬ訳ねぇだろアイツらが! 戦車も空爆も効かねぇんだぞ!】
【じゃあどうしろってんだよ! このままじゃ……】
(今まで鳴っていた爆音が急に静まり返った。銃声も少しずつ静かになる)
【ま、待て! 見てみろ!】
【アイツら、退いてる……?】
【逃げてる……奴等逃げてるぞ!】
【な、なんだ? 俺達が勝ったのか?】
【勝ったんだ! 奴等ついに逃げ出したんだ!】
【い、いや、おかしくないか? 戦車も爆撃も効かなかった奴等が、なんでここで帰るんだ?】
【いいじゃねぇかそんなの! 俺達が勝ったんだからよ! 合衆国万歳ってな!】
【いぃやっほおおお!】
【生きて帰れるぞぉぉ!】
(言葉が聞き取れないほど激しい歓声が響く)
【作戦本部に連絡だ! 奴等の驚く顔が目に浮かぶぜ!】
【お、おう。それは、なんであれ必要だな……】
【お前は心配性だなぁ。ほれ、俺が代わってやる。そんなに心配なら見張りでもしとけ】
【あ、ああ……】
【たく。アイツの心配性は相変わらずだな】
【ま、気持ちは分かる。なんで奴等が引き返したか分からねぇからな。兎に角報告を】
【や、ヤバい! みんな逃げろ!】
【……今度はなんだ?】
【つ、津波だ! 津波がここに迫ってる!】
【はぁ!? 海からここまでどんだけ離れて……】
【嘘だろオイ!? 作戦本部からも退却命令だ! 津波が来るから全隊高台に避難しろって……】
【ど、どういう事だよ!? なんで津波が……】
【奴等は逃げたんじゃない! 俺達を全滅させる準備が出来たから、帰っただけなんだ!】
【畜生! 全部奴等の掌の上って事かよぉ!?】
【兎に角逃げろ! 少しでも高い場所に避難するんだ!】
【で、でも此処は平地で……】
【建物の上でもなんでもいい! 兎に角高い場所に逃げ】
(激しい水音と共に音声が途絶える)
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