わたしがいいならいいの

@misakillchan

あの人

わたしはいつも外国の王子様のような素敵で優しい男の人と出会うことを本気で夢見ていた。

思い続ければ、人はその通りになれるなんてインスタの投稿ですら信じた。


そんなこんなで20年間恋人なし。

特にあせりもなかった。気になる人ができても毎回その夢に飲まれていった。




そんなわたしが実際に恋に落ちたのはわたしより年齢が一回り以上、もしくは20以上うえだと感じる発注先の配達員だった。

そんなの一歩間違えれば、というかはたからみたらパパ活にしか見えないなんて言われてしまうような人だった。

完全なる片思いだと思う


きっかけは目を合わせたこと。

それまでは不思議と一度も気にしたことがなかったから、それまでの記憶はない。

彼は目を合わせようとしない人だった。それどころかいつも物を届けにきては愛想も悪いような印象だった。

なぜだろう。目を合わせないことに気づいてからよく彼を見るようになってしまった。

彼を見はじめてから目が合うまではすぐだった。

その日から彼の目をみるたびにそらせなくなった。三白眼はよく見ると奥二重で、鼻や口元も一般的。とてもイケメンとかじゃないけど、なぜかその目は綺麗に映った。



それからは意識をしてしまう。

わたしはなんでこんな気持ちになるのかもわからず。考えても仕方ないし、わたしがいいのならそれで良いと思うことにした。

でも、結婚してるかもしれないし、キャバやソープづけかもしれない。いろんなことを考えているうちに気がおかしくなりそうな日もある。



クリスマスはピザも作るしデザートも作る。

気が早いけど、装飾も完全だし、あとはシャンパンを買うだけ。

あなたがもしかしたらわたしの家に来るかもなんて、ありえない話の300倍くらいありえなそうな夢をみてはぼんやりしてだんだん鬱になっていく。目を合わせれば合わせるほどこの思いが上書きされ続けていって、苦しくなる。

だからもう見ない方がいいのかもしれない。


ただひとつ、あなたのせいにできるとしたら

わたしにだけ目を合わせてくれるようになってしまったこと。他の人にも平等にしてくれたらいっそすぐに冷めることができたのに。


今日もロクセットの愛のぬくもりをきいて眠る。

わかってる。わかってる。何かにすがりつくように依存していたい自分がどこかにいることも。

王子様なんて本当にいないんだね。

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