Re:吸血姫幼女と送る、愉しい軟禁生活②



 さて、それでは今日はどこから攻めていこうか。そんなことを考えながら、俺はじっとエリザの顔を見つめ続ける。


 現状、ほっぺたと唇はセーフライン。あと、過去には髪の毛や手を握るといったことも試してみたが、どっちもセーフゾーンだった。


「てか、エリザの髪の毛って、サラサラしてて触り心地が良いんだよな」


 俺は何気なく手を伸ばして、指先で軽く弄んでみる。一本一本が細くしなやかであり、とても滑らかな指通りをしているのが分かる。


 まるで絹糸のような滑らかさを持ち合わせた髪は、触れるだけで気持ちの良さを感じることができる。いつまでも触れていたくなるくらいに綺麗で美しい髪だ。


「さらさらだし、いい匂いがするし、本当に綺麗な髪してるよなぁ」


 髪質を気にしたことがないので羨ましいとは思わないが、それでも素晴らしいものは素晴らしいと思うわけで。これは良いものだ(CV:塩沢風の渋いボイスで)。


 そうしてしばらくの間、エリザの髪を弄んでいたわけだが……やっぱり一向に起きる気配がない。どんだけ眠りが深いんだよ。寝る子は育つって言うけどさ。


「しっかし、ほんと可愛い顔をしているよなぁ」


 改めて間近で見てみると、つくづくそう思う。睫毛長いし、鼻筋通ってるし、顔のパーツ一つ一つが整っているし。まさに完璧と言える造形美だ。まさしく非の打ち所がないと言っても過言ではない。それぐらいの美しさを持っているのだ。


「……こんなに可愛い女の子にいたずらができるとか、最高かよ」


 自分でも分かるくらいにゲス顔になりながら、俺はぼそりと呟く。我ながら最低なこと言ってると思うけど、気にしない。だって、暇つぶしの為だし。それに相手がエリザだし。


 俺の血を吸わせてんだから、文句は言わせないからな。それに何かを得ようとするなら、それと同等の代価が必要だ。……って、どこかの兄さんが言ってたしな。等価交換の法則ってやつだね。


「さてさて、それじゃ次のステップに進んでいきますかね」


 俺はそう呟きながら、さらに奥へと進んでいくことにする。具体的には手の位置を徐々に下げていき、今度は胸元へと移動させていく……。


「……流石にここは止めておこうか」


 そっと俺は伸ばした手を引っ込めた。双丘に興味が無い訳じゃないけど……悲しいかな。エリザのはまな板でぺったんこだ。魅力や魅惑というものを感じさせないお山である。


 残念だが、登頂できない山には登れないんだ。ごめんな。……いや、ひょっとすると天保山ぐらいはあるかもしれない。ちなみに天保山の標高は4.53 m。山と言えるか怪しいレベルだ。


「貧乳はステータスで希少価値なのかもしれないけど、俺が求めているのはもげるサイズだからさ」


 もげ、もげもげ、お山をもげってね。……そういえばあの作品、新作が出てたけども……今の俺には見る手段が無いんだよなぁ。続き、見たかったなぁ。


「しかし、そこを諦めるとしたら、次に狙うのは……」


 そう言いながら視線を下に向けた先にあるもの。それは……まぁ、あえて言うまでもない。


「ここがいけるのなら、大体の場所がセーフラインになるよね。多分」


 到達難易度はかなりのレベルに跳ね上がるだろう。というか、ここまで来るといたずらというか、暇つぶしのラインを大きく超えてしまうのではないだろうか。


 ……とはいえ、ここまで来たら引けない。俺は探検家……いや、勇気を探求心を兼ね備えた冒険者なんだ。異世界転生しなくても、誰だって冒険者にはなれるんだぜ☆


 そしてここまで来たなら……進むしかない。男なら、度胸を見せなければなるまい。今がその時だ!


「……よしっ!」


 意を決し、俺はゆっくりと手を伸ばしていく。向かう先は、そう……エリザのお腹だ! というか、おへそが見たい! 当たり前だよなぁ!!


 という訳で、いよいよクライマックスです。


「ってことで、お体に触りますよ……っと」


 俺は彼女が着ている寝間着の奥に隠れている聖域を求めて、手をまた伸ばして―――


「動くな」


 直後、背後から聞こえてきた声に俺の身体はビクッと反応する。そしてそれと同時に、俺の首元にナイフが突きつけられた。それは果物ナイフとかじゃなくて、コンバットナイフと呼ばれる代物だ。


 刃先が首の薄皮に触れており、少しでも動かせば傷をつけかねない状況になっていた。そんな状況で、俺は冷や汗を流しながら固まってしまう。


「いいか。少しでも動いたら殺す」


 後ろから聞こえてくる声の主は、そう淡々と言葉を紡いだ。抑揚のない声で発せられたその声は、ひどく冷たく聞こえた。


 間違いなく、俺が何かしようとすれば確実に殺られる。そんな確信めいたものが俺の中にはあった。故に、動けない。下手に動けば殺されるから。


「返事は?」


「……はい」


 有無を言わさない迫力に押されるように返事をすると、スッと喉元からナイフが離れていった。それと同時に俺はホッと胸を撫で下ろす。


「よし。それじゃあお前、こっちに来い」


「ぐえっ!?」


 その相手は返事を聞くなり、ぐいっと俺の襟首を掴み上げて引っ張ってきた。そして無理やり立たせると、引き摺るようにして歩き出す。抵抗することもできず、されるがままに俺は部屋の外に連れ出される。


 そして部屋から出た途端、俺はポイッと乱暴に投げ捨てられる。地面に尻餅をつく形で転んだ俺は痛みに耐えつつも、目の前の人物を見上げた。


 そこにいたのは黒髪ロングの美麗な女性だ。スラリとしたモデル体型をしており、背も高くて170cm近くある。


 それから顔立ちはとても整っている美人さん。けど、刺さるような鋭い目つきをしていて、威圧感を覚える見た目をしている人だ。


 服装は驚くことなかれまさかのメイド服だ。白のカチューシャを着け、エプロンと黒のスカートに白ニーソを履いているという組み合わせ。その姿はまさにメイドさんと言った感じである。


 こんな格好の人、秋葉原とか行けば見かけるんだろうけど、普通の世間一般ではかなり珍しい部類に入るのではないだろうか。俺は少なくとも、近所では一度だって見たことが無い。当たり前だけど。


「……全く。油断も隙もない奴だな」


 俺を部屋から連れ出した張本人は腕を組み、侮蔑するような目で俺のことを見ていた。その目には殺気すら感じられそうな程に鋭さがあり、思わず身震いしてしまいそうになる。


「いや、まぁ……つい出来心で。というか、俺はこの退屈な環境に、少ない癒しを求めて……」


「うるさい。黙れ、下郎が」


 そう言って冷たい目を向けてくる相手。その視線を受け、俺は思わず萎縮してしまう。


「いいか、貴様。二度とあんな真似をするな。次やったら今度こそ殺す」


 その言葉と共に再び向けられる威圧的な視線。正直、怖くて仕方がない。ただの社畜である俺ごときが、この人に逆らえるわけがないのだから。


「……はぁ。分かった、分かりましたよ。九十九ちゃん」


「誰が九十九ちゃんだ。馴れ馴れしく呼ぶな」


 溜息混じりに俺が相手の名前をそう呼ぶと、彼女―――九十九千弦つくもちづるは露骨に不機嫌そうな顔になった。


 ちなみに彼女がどういった存在なのかというと……簡潔に説明するのなら、こう言わせてもらう。エリザのお世話役。それに尽きるだろう。


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