第6話 丑三つ時
魔王が来た。
魔王が逃げた。
草木も眠る丑三つ時。
温泉用の衣から外出用の衣へと召喚魔法で着替えた奏斗は、秘湯があった場所に突っ立ったまま、芽衣、箕柳、聖月はてんでばらばらに奏斗の元に来ては、言ったのだ。
芽衣は嬉々とした表情で。
箕柳は険しい表情で。
聖月は面倒くさいと訴える表情で。
「城の結界師が言うには、魔王の
芽衣の炎の魔法で、昼間かと見紛うほどに明るく、紅蓮の炎に包まれていると勘違いしてしまうほどに熱くなってしまった中、箕柳が城の結界師から聞いた言葉を、奏斗、芽衣、聖月に伝えた。
「その他国の魔法の証ですら甚大な魔法力だった事から、他国の魔王だと推定。魔王にも仲間意識があったのか、それとも協定を結んでいたのかは知らない。もしかしたら、身内だったのかもしれない。なんにせよ、その他国の魔王が自国の魔王に力を貸して、城の結界部屋から脱出する事に成功したらしい」
「え?他国の魔法と自国の魔法って違うんだっけ?」
芽衣の疑問に、箕柳は粛と答えた。
「ああ。微々たるものらしいが、違うらしい」
「違ってたら、他国の魔王に俺たちの魔法は通じないんじゃないか?ん?そもそも、俺たちの魔法は他国で使えるのか?」
「通じるし、使えるらしい」
「そっか。まあ、魔法が通じなくても使えなくても、拳だけで十分倒せるだろうしな」
応援しているのか、魔法は必要だと意見しているのか。
魔法の炎の明るさと熱さが一気に増したが、幾度も経験しているので、全員へっちゃらであった。
「他国の魔王が乱斗を他国に連れて行くのか。乱斗と共に他国の魔王が自国を滅ぼそうとしているのか。どちらかは分かりませんが。どちらかを探らないといけないので、面倒極まれりですね」
聖月は死んだ魚のような眼球を腐敗させて、真っ黒な穴だけになってしまった目を奏斗に向けた。
奏斗は粛と頷いたのち、聖月、芽衣、箕柳の目を確りと見つめて、言った。
魔王と一緒に秘湯に入ろうと思う。
(2024.11.29)
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