妄想ミステリー⑫

鷹山トシキ

第1話 異人館村の闇

 舞台は神戸の異人館村。洋風の建物が立ち並ぶこの地は、異国情緒漂う静かな村。しかしその裏側には、過去の事件が蠢いていた。探偵・久保田幸男(堂本剛)は、またしても複雑な事件に巻き込まれることとなる。


事件の始まり


ある晩、久保田幸男は異人館村の一角にある、今は閉鎖された劇場で行われるものまねタレント、カーロッタ・アダムズ(木村文乃)の公演を見物していた。カーロッタはその類い稀な演技力で、国内外の著名人のものまねを披露し、観客を魅了していた。その夜も、異国の文化が混じり合った神戸の街並みが彼女の舞台の背景となり、まるで異世界に迷い込んだかのような錯覚を与えていた。


公演終了後、久保田は会場を出る途中、突如、ジェーン・ウィルキンソン(石原さとみ)という女優に声をかけられる。ジェーンは華やかな外見とは裏腹に、陰りを持つ目をしていた。彼女は、自分の夫であるエッジウェア卿(藤原竜也)との離婚問題で悩んでおり、久保田にその手助けを求めてきた。ジェーンの話では、すでにエッジウェア卿が離婚に同意し、その書面を送ってきたというのだが、ジェーンはそれを受け取っていないと言い張る。久保田はその話に疑念を抱くが、まずは調査に乗り出すことに決める。


エッジウェア卿の死


翌日、久保田とジャップ警部(中村倫也)は、異人館村内のエッジウェア卿邸で発生した殺人事件の報を受ける。エッジウェア卿は首を刺されて殺害されており、現場はまるで異国の遺跡のような雰囲気を醸し出していた。エッジウェア卿邸は、外国から輸入したアンティークの家具や絵画が並べられた、豪華で趣味の良い家だったが、その一角で命を奪われる者が現れるとは、誰も予想しなかった。


現場に到着した久保田は、エッジウェア卿の執事(阿部寛)と秘書(高橋一生)から証言を得る。二人の証言によると、ジェーンは前夜、夫を訪れたことがあると主張するが、ジェーン自身はその晩、異人館村で開かれた別のパーティーに出席していたという。そのパーティーの出席者たちは、ジェーンがそこにいたことを証言している。


久保田は、ジェーンが「なりすまし」を使ってアリバイ工作をした可能性があると感じ始める。その夜、久保田はカーロッタ・アダムズに注目する。彼女はジェーンに非常に似ており、演技力を駆使してジェーンになりすますことができるのではないかと思う。しかし、カーロッタは翌日、ベロナールという睡眠薬を過剰摂取して死亡しているのが発見される。これはただの偶然なのか、それとも何か関係があるのか、久保田はその謎を追うことになる。


カーロッタの死と新たな手がかり


カーロッタ・アダムズの死が自殺ではなく他殺であることが判明した。その死因は過剰摂取した睡眠薬だが、その背後に誰かの手があると久保田は確信する。さらに、カーロッタが生前に送ったアメリカにいる姉宛の手紙を入手した久保田は、その中に1万ドルという金額が記されているのを発見する。この金額が何を意味するのか、久保田は調査を進める。


久保田はエッジウェア卿の親戚であるロナルド・マーシュ(松坂桃李)に目をつける。ロナルドは、エッジウェア卿から小遣いを打ち切られていたが、エッジウェア卿が保管していたはずの大量のフラン紙幣が消失していた。久保田は、この紙幣の行方が事件に深く関係していると感じ始めるが、決定的な証拠を掴むことはできない。


ジェーンの過去と秘密


久保田は、ジェーンの過去に関する調査を行う。ジェーンは現在、マートン侯爵(木村拓哉)と交際しているが、その前には俳優ブライアン・マーティン(佐藤健)と付き合っていたことがある。ブライアンはジェーンに対して恨みを抱いており、彼女を悪女だと評している。このことが事件解決の手がかりとなる可能性が高い。


その後、久保田は、カーロッタがジェーンになりすますために雇われたことを突き止める。カーロッタはジェーンと同じ体型や身長をしており、彼女に成り代わってパーティーに出席し、エッジウェア卿を殺害する計画があったのだ。さらに、ジェーンはその後、カーロッタに大量の睡眠薬を飲ませて殺し、証拠を隠蔽しようとした。


事件の真相


久保田はジェーンが犯人であることを突き止める。ジェーンは、マートン侯爵が離婚歴のある女性とは結婚しないという信念を持っていることを知っており、未亡人になるためにエッジウェア卿を殺害したのだ。ジェーンは、カーロッタを使ってアリバイを作り、その間にエッジウェア卿を殺害。その後、カーロッタに口封じのために睡眠薬を盛り、その死を事故に見せかけたのだった。


ジェーンは、カーロッタが自分を守る証拠を持っていることを恐れ、彼女を殺害したのだ。ロスの死は、ジェーンが自分の正体が暴かれることを恐れて行った犯行であり、カーロッタが話しすぎたことを隠すために彼女を抹殺したのだ。


逮捕と最期


久保田はジェーンを逮捕し、彼女の冷徹な犯行を暴いた。ジェーンは獄中から久保田に手紙を書き、絞首刑の日に自分を見に来るようにと告げる。


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