第2話 アロエ★

 私の名前はアロエ。

小さな村に住んでいるごく普通の女の子。

私は母を流行り病で亡くし、父と幼い弟のサボの3人で暮らしていた。

お父さんと畑に出てなんとか食費を稼いでいるけど、決して生活が豊かとは言えない。

16歳の私は多少の貧乏は我慢できるけど、育ち盛りのサボは耐え難い生活だろう……。

でもあの子は……文句やわがままなど一切漏らさず、いつも笑顔で仕事から帰ってきた私達を毎日出迎えてくれる。

幼いながらもこの現実を察してくれているのかもしれない。

そんな優しい弟だからこそ、私は母の墓前で誓った……。


”私がお母さんの代わりにサボを守る”


 それが私にできるただ1つの親孝行だと……そう思っている。

それに……裕福でなくても慎ましく3人で暮らしている今の生活には私なりに満足している。

いつまでもこのまま変わらず家族で過ごしていくんだと……心から信じていた。


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『あぁぁぁ……』


 いつも通り3人でご飯を食べていると……突然おぞましい化け物達が家になだれ込んできた。

一瞬人のように見えたけど、肌の色とか……むき出しの牙とか……人間とは思えない異様な姿が目に焼き付いた。


「あがぁぁぁ!!」


「お父さん!!」


 化け物達に襲われそうになった私とサボを……お父さんが身を挺して守ってくれた。

ただその代償に、お父さんは化け物達に押し倒され……体中の肉を食いちぎられていった。

医者じゃなくてもわかる……もうお父さんは助からない……と。

あまりの惨たらしい光景に、私は悲鳴すら上げることができなかった。

隣にいるサボも恐怖で震え、私の腕にしがみついていた。


「にっ逃げろぉぉぉ!!」


 お父さんが最後の力を振り絞って私達に言い放った言葉が恐怖で震えていた私の体に活を入れてくれた。


「サボ!」


 私はサボの手を握り、裏口から走って逃げだした。

逃げる最中……村のあちこちで化け物達が人を喰っているのを見た。

空気から伝わる血の臭い……耳を刺す悲鳴……村中で恐ろしい惨劇が繰り広げられていた。

私は恐怖心を必死に抑え込み、この手に握っている小さな命を守るために走り続けた。

私もサボもお父さんの死を悲しむことすらできなかった。


「おっお姉ちゃん……」


「大丈夫……お姉ちゃんがついてるから……」


 私達は必死に走った……。

どこかで助けを求めるために……。


『あぁぁぁ!!』


 だけど……行きつく先には異様な化け物達と血まみれの死体ばかり……。

助けを求めるどころか生きている人間に会うことすら……難しくなってしまっていた。

化け物の視界に入らないように物影に隠れ……サボを庇いながら逃げ続けた。

走って……走って……走って……どれくらい走ったのかな?

気が付けば全く知らない場所にいた

周囲には相変わらず数体の化け物共がうろうろしているから茂みの中で2人、身を隠している。


「いっつ……」


 家から逃げ出す際に靴を履く余裕がなかったため……私もサボも裸足だった。

どこかでガラスの破片でも踏んだのか……足の裏がぱっくり切れていた。

無我夢中で逃げ回っていたせいか、体もボロボロで服も所々破れていた。


「サボ……けがはない?」


「僕は大丈夫……それよりお姉ちゃん、足が……」


「これくらい平気よ」


 サボも服はボロボロだが、体に目立った外傷がなかったのが幸いだった。

足のケガはかなり痛いが、今は我慢するしかない。


「……! あれは……」


 周囲を見渡していると……大きな建物が私の目に映った。

もしかしたら人がいるかもしれないと……かすかな希望を胸に抱いてその建物へと向かった。


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「ここって……」


 どうにか建物にたどり着いたのはよかったが……そこは犯罪者を収容するための施設、刑務所だった。

巨大な建物を巨大な壁が取り囲むように並び立ち、あちこちには見張り台のような塔が建っている。


「あの……誰かいませんか!?」


 大きな鉄格子のような門から何度か大声で呼び掛けるも……返事はなかった。

もしかしたらここも……あの化け物達に襲われたのかな?


『あぁぁぁ……』


「お姉ちゃん!!」


 そうこうしている内に、いつの間にか化け物達に取り囲まれてしまっていた。

唯一の逃げ道は目の前にある刑務所だけ……。


「くっ!!」


 迷っている暇はなかった……。

私は門をこじ開けようと鉄格子を掴み、一か八か……渾身の力で押し出した。

幸いにも門に鍵は掛かっていなかった。

壊れていたのか何かの理由で開けっ放しになっていたのか……わからないけど、私達にとっては幸運だった。


「ぐっ!!」


 鍵が開いているとはいえ、門にはそれなりの重量があった。

囚人を逃がさないようにするためだろうけど……それが私達の命を危うくしているとは皮肉だった。


「うぅぅぅぅ……」


 サボも一緒に門を懸命に押してくれている……。


”生き延びたい”


 私達のその強い思いが天に届いたのか……ほんの少しだけ門が開き、わずかな隙間ができた。

かなり狭いが、子供である私とサボならなんとか通れる……。


「サボ! 早く入って!!」


「うん!」


 私はその隙間からサボを中に入らせ、すぐさま私も中へと入ることができた。

私はすぐさま化け物達が入ってこないように……門を内側から押し出して閉じ、すぐそばに落ちていた鉄の棒を門の取っ手に通してストッパーにした。

これでとりあえず、化け物達はしのげそうね……。


「お姉ちゃん!!」


「!!」


 背後から私を呼ぶサボの声がした……。

私がすぐさま後ろを振り返ると……そこにはサボの細い首を剛腕な腕で拘束する屈強な男がそこに立っていた。

男の左右にも仲間らしき強面の男達がイヤらしい笑みを浮かべて私を見ている。


「サボ!!」


「おっと……動くなよ?」


 

「うぐっ!」


「サボ!」


 動いたら殺すと言わんばかりに、男はサボの首を軽く締め上げた。

この屈強な男であれば、サボの首を絞めて殺すくらい簡単だろう……。


「あんた達……一体なんのつもり? 弟を離して!」


「離せ? 俺達の縄張りに勝手に入ってきておいて……随分と上から言うじゃねぇか……」


「縄張り?」


「そうだ……この刑務所は俺達の城だ。 だから勝手に入ってきたお前らは侵入者って訳だ」


 サボを拘束している男は我が物顔でそう言ってくるが、彼が着ている服は囚人服……ほかの連中もみんな囚人服を着ている。

つまりは脱走犯!!


「仕方ないでしょう!? 外には化け物達がいっぱいいて……ここしか逃げ場がなかったんだから……」


「そうかい……じゃあ取引しようじゃねぇか」


「取引?」


「俺達全員に死ぬまで奉仕しろ……そうすれば、このガキと一緒にここで匿ってやる」


「!!!」


 奉仕……この手の男が語る奉仕というのは、大抵決まっている。

要するに……私の体を引き換えに身の安全を保障するってことね。

自分達が安全地帯にいるからって……現実逃避に性の快楽に溺れたがっている。

救いようのないクズ共だ。


「別に嫌ならいいんだぜ? お前らが外にいる化け物共の餌になるだけだからな……」


「ひっ卑怯者!!」


「あぁ!? テメェ自分の立場わかってんのか!?


「あぐっ!」


「サボ!」


 男は怒りに任せてまたサボの首を締めあげた。

サボが一瞬白目をむいてしまったことに私は背筋が凍り付いた。

そして理解した……。

サボの命はこの男が握っていると……私の選択肢1つでサボは死ぬと言うことを……。


「げほっ!げほっ!」


 サボは幸い死なずにいたが、いつ男が気まぐれを起こしてあの子を殺すか……わかったものじゃない。


「わかった……わかったから……弟を殺さないで」


 私は膝をついて、要求を受け入れる姿勢を見せた。

こんなクズ共に純潔を捧げるなんて絶対嫌だけど……サボの命には変えられない。

今、あの子を守れるのは私しかいないんだ……。


「そうか……じゃあこの場で脱げ」


「……は?」


「聞こえなかったのか? この場で裸になっていってんだよ」


「そっそんな……」


「俺達の奴隷になるんだろ? だったらご主人様の命令通りに動いてもらわねぇとな……」


「じゃっじゃあせめて……弟のいないところで……」


 身を汚されるのは覚悟したが……まだ幼いサボに男女の繋がりなんて見せたくない。

まして……姉が強姦される姿なんて、この子の心に深い傷を負わせることになる。


「俺の命令が聞けないのか?」


「くっ!」


 私には男に逆らうどころか……最低限の配慮すら与えれないんだ。


「サボ……ごめんなさい」


 私はにこれからサボに悲痛なシーンを見せることに謝罪を述べ、恐怖や羞恥心で震える手で自ら纏っている衣服を取り払った。


「ほう……ナリは小汚ねぇが、”相変わらず”体は良い具合に育ってるじゃねぇか……」


「……」


 私は弟の目の前で……大勢の知らない男達が見ている前で一糸まとわぬ姿になった。


「そんじゃあさっそく……あの時味わえなかったテメェの体を堪能させてもらおうか……」


「あっあの時?」


「なんだ? お前、俺のこと忘れたのか? 俺はテメェのせいでこんな薄汚ねぇ刑務所にぶちこまれたんだ」


「!!!」


 その瞬間、私の脳裏に封印されていた忌まわしき記憶が蘇った……。


-----------------※※※---------------------


2年前……私は男に拉致されたことがあった。

川で水を汲んでいたらいきなり後ろから口を手で塞がれて、無理やり人気のない茂みに連れて行かれた……。


『騒いだら殺すぞ?』


 男の手元でキラリと光るナイフが私を恐怖で縛り付けた。

逆らえば殺されると、馬鹿でもわかる脅しに私は従うしかなかった……。


『ひひひ……小汚ねぇが、結構良い体してるじゃねぇか……』


 男に服を無理やり破かれ……下着も引きちぎられ……私は裸にされた。

もうダメだ……私は自分の純潔を諦めようとした……その時!!


『お姉ちゃん!!』


 水汲みを手伝おうと川へ足を運んでくれたサボが私を見つけてくれんだ。


『お姉ちゃんに何をしてるんだ!!』


 サボの大声に驚いた男は脱ぎ捨てていたズボンと下着を履きなおそうとしていると……。


『貴様! 娘に何をしている!?』


 サボの声を聞いて駆けつけてくれたお父さんが逃げようとした男を畑仕事で鍛え抜かれた腕っぷしで拘束してくれた。


『はっ離しやがれ!!』


『黙れ! 俺の娘を傷つけようとしやがって……ただで済むと思うな!』


 お父さんの手で男は騎士団に連れて行かれ……私はどうにか助かった。

男は後日裁判に掛けられて有罪判決を受けた。

私以外にも複数の女性に対してもこういった犯行を行っていたらしいので余罪がたくさんでてきたらしい。

犯行の動機は人生に刺激がほしかった……という身勝手極まりないものだった。

しかも男は既婚者で、奥さんのお腹には子供がいたらしい。

妊娠中で行為に及ぶことができない奥さんにしびれを切らした……というのも動機に繋がっているらしい。

奥さんとは離婚したと風の噂で聞いた……。

私はこの記憶を心の傷として胸の奥底に押し込んでいた。


------------------※※※--------------------


 そして今……その忌まわしき記憶の中心人物が私を犯そうとしている。


「あっあの時の……」


「思い出したようだな……。 お前のせいで……俺はこんな汚ねぇところにぶち込まれ……女房とも離婚せさせられたんだ!!」


「なっ何を言ってるのよ!? あなたが私を犯そうとしたのが悪いんでしょう!? 自業自得じゃない!!」


「うるせぇ!!…お前らみたいな一生男に縁のない女モドキの臭ぇ穴に俺のみたいな良い男がタダでぶち込んでやるって言ってんだぜ? 普通感謝すべきだろ?」


「ふっふざけたこと言わないでよ……」


「なんだよその反抗的な目は……お前、自分の立場が理解できてんのか?」


「あぐっ!」


 男は再びサボの首に回している自分の腕に力を入れ、私にサボの苦しむ顔を見せつけてくる。

そんなことをされたら……大人しく体を明け渡すしかない。


「お願い……私はどうなってもいいから……弟の命だけは助けて……」


「いいぜ? お前が俺達の従順な奴隷となるなら……ガキの命は助けてやるよ」


 男はサボを仲間に手渡し、ズボンと下着を脱いで下半身を露出する。


「ひひひ……どれだけこの体にぶち込むのを夢見たことか……」


 男は私の体をいやらしい手つきでまさぐってきた……。

まるで体中を虫が這いまわっているようで気持ち悪い。

もちろんそれだけでなく、私も男に性的な奉仕をさせられていた。

こんなおぞましい光景をまだ幼い弟に見せるなんて……。


「そんじゃあそろそろ開通式と行くか……」


「がっ!う……」


 男の汚らわしい物体が私の下半身を貫いた……。

私が守っていた純潔が……こんなクズに奪われてしまった……。

悔しい……悔しくてたまらない。

純潔を失った痛みと……弟の前で犯される屈辱と恥辱……それらすべてが心を圧迫する。

下半身から痛々しく垂れる血に……弟が涙を流している。

男女の行為なんてまだ知らない弟には、私がただ男に痛めつけられて血を流しているように見えているのかもしれない。

そうであっても……弟の心が傷ついたことは変わらない。


「サボ……大丈夫だからね? お姉ちゃんが守るから……」


 男のされるがままになるしかない私には……精一杯笑顔を作ってサボの心を安心させることしかできなかった……。


【長くなりそうなので区切ります。

続きは朝の8時くらいに予定してます。 by panpan】

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