第36話

テトが勝利の余韻に浸っていると、ふと周囲の空気が変わった。

彼女の目の前に広がる光景が、じわじわと歪み始める。

瞬く間に、勝利の興奮が霧散し、彼女の視界に映ったのは、

再び現れた恐ろしい影だった。


「ほう、やはりその程度か。」


その声は低く、冷たく、まるで彼女の心の奥を揺さぶるような響きがあった。

テトは恐怖に駆られつつも、すぐに周囲を見回したが、

彼女の周りにはただの空間だけが広がっていた。


「これは一体……?」


テトは信じられない思いで声を上げる。目の前にいたオド=ルゼは、

今や薄れゆく幻影であり、現実ではないことに気づいた。

彼女は全力で幻影を打ち砕くために突進したが、攻撃は空を切り、

何も触れることができなかった。


「我の姿の幻影を操って君に自信を持たせたのちに叩き潰す。なかなか面白い手法だと思わないか?」


その言葉に、テトの心は激しく動揺した。

彼女が戦っていたのはただの幻影だったのだ。

幻影の中で、彼女の勝利は実際には何の意味も持たなかったのだ。


「それに、君は我を倒すことができなかった。すべては夢でしかない。」


その言葉に、テトの心は重苦しいものに覆われた。彼女はどれだけ努力しても、

破壊神には到底敵わないという現実を突きつけられたのだ。


「お前は一体、何を企んでいるのだ!」


テトは怒りをあらわにしながら叫ぶ。

彼女の心には再び仲間たちの顔が浮かび上がる。

彼らを守るために戦うという決意が、再び彼女の胸の奥で燃え上がる。


「企み?貴様面白いことを言うな。まあ教えてやろう。君のような小さな存在には決してできないことをするのだよ…。」


オド=ルゼの言葉には、あざ笑うような冷酷さが宿っていた。

彼女の心の中には再び怒りが燃え上がり、絶望の淵から立ち上がろうとする。


「私は仲間の大好きな世界を救うため、絶対にあきらめない!」


テトは再び力を振り絞り、幻影の前に立ち向かう。しかし、彼女はすぐに気づく。

この戦いは、ただの肉体的な戦いではなく、彼女自身の心の戦いでもあることを。


「私がこの手で、全てを終わらせる!」


彼女の心は、過去の悲しみや怒りを乗り越え、真の力を引き出す時が来た。

テトは、仲間の思いを胸に、強く立ち上がる。たとえ相手がどんなに強大でも、

彼女は自分の信念を貫くことを決意したのだ。


「私の力を、見せてやる!」


そう叫び、彼女は再びを構えた。オド=ルゼの幻影を打ち破るために。

テトは、心の底から湧き上がる力を信じ、自らを解き放つ準備を整えた。


「すべては世界のために!!」


彼女の心の叫びが、空気を震わせ、周囲の空間が再び変わり始める。

テトは全てを賭けた一撃を放ち、オド=ルゼの本体に立ち向かうのであった。

テトはドリルを振り下ろし、その一撃に彼女のありったけの力を込めた。

しかし、オド=ルゼの本体は冷静にその動きを捉え、素早く反応する。

彼女の力が周囲を照らす中、オド=ルゼはわずかに動いて、その攻撃をかわした。


「甘いな、テト。君のその意志は評価するが、力が伴わなければ意味がない。」


オド=ルゼの声は、低く、冷たく響いた。

その言葉はテトの心に突き刺さり、彼女は再び自信を失いかけた。

彼女の全力をもってしても、敵はまるで彼女を嘲笑うかのように余裕を持っている。


「なぜ我に勝てると思ったのか。君はまだまだ未熟だ。」


その瞬間、幻影がテトの周囲に闇を巻き起こし、彼女の動きを封じ込めた。

テトは必死に抜け出そうとするが、闇の力は強く、彼女を引きずり込もうとする。


「さあ、消え去るがいい。君の存在は、もう必要ない。」


その言葉を聞いた瞬間、テトの心に恐怖が走った。

彼女は仲間たちとの約束、彼らのために戦うと決意したはずだった。

しかし、その思いが力に変わる前に、

彼女は圧倒的な力の前に押しつぶされそうになっていた。


「いや……いやだ!私には仲間がいる!私は負けない!」


彼女は叫び、再びドリルを振るが、オド=ルゼはそれを容易く受け止める。

その瞬間、彼女は自分の無力さを思い知らされた。


「無駄だ。君の力では、我には到底及ばない。」


オド=ルゼが、再び近づいてくる。

テトは絶望的な気持ちに駆られながらも、心の中で仲間たちの声を聞こうとする。

しかし、彼女の耳にはその声が届かない。彼女は完全に孤立してしまっていた。


「さあ、終わりだ。」


オド=ルゼの手が伸び、テトの体に触れる。

その瞬間、彼女は全てが終わったことを理解した。

力が抜けていき、彼女はドリルを地面に落とした。

闇に包まれ、周囲の景色がぼやけていく。


「私は……負けたのか……」


その思いが、彼女の心を占めていく。敗北感が彼女を支配し、絶望が彼女を襲った。その瞬間、彼女の心には何も残っていなかった。

力を失った彼女は、そのまま倒れ込んでしまった。


「さあ、私の祭壇に君の存在を捧げるがいい。」


オド=ルゼの声が響き、闇が彼女を完全に包み込む。

テトはそのまま、意識を失った。

彼女の心の中には、仲間たちの顔が浮かぶが、それすらも薄れていく。

闇に飲み込まれ、彼女は全てに忘れ去られてしまうのだった。

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