F
山科宗司
第1話
「いや、ごめんね。神の失態、神体だよね」
神を名乗る老人はヘラヘラ笑いながら男に平謝りしていた
「別に何も面白くないんですけど」
そう冷たく答える男・・・・というより、男の魂は憤慨していた。
神の失態とは男が魂だけになった理由、神の手違いによりまだ死ぬ予定ではない男が死んでしまったのである。
「笑ってる暇があるなら元に戻してくれませんか?」
「感覚を感じる体が無いのに、浮かんでいる感覚がして気味が悪いんですけど」
老人は少し考えた後、話し始めた
「冗談が好きなわしやが、人の運命を捻じ曲げるのは冗談じゃすまない。別にお前はわしが間違って殺しても世界には何も影響も無い人間なのだが・・・・」
「わしの交友関係にも色々あってな、そこで提案がある。お前は本来、あと数十年間無駄・・・というのは酷いが、転生を管理しているあいつも失笑するような人生をお前は送る、それは悲しいだろ?」
老人の手はごまをするように回っていた
「まぁ、確かに」
「そうだよな、悲しい人生を送りたい奴なんてここにも下界にも存在しない。だからわしは、限りなく賛美される人生をお前に送って貰う」
「この人生はわしの優しさと、ある神にばれる前に対処したい危機感から生まれるものだ。どうだ?嬉しいか?」
男は勝手に殺された被害者であったはずだが、失笑と評される己の人生より老人が一方的に与える賛美の人生を送ってみたいと思ったが、少し気になるところもあった。
「その賛美される人生とは具体的にどんな人生なんだ?神話の主人公とか?」
「いや、わしそのものが神話だし、さすがにお前を神に迎える気は無いが。具体的と言われたら・・・・」
老人は悩んだ、なぜなら「賛美される人生」とは特別な力は持っていたが、何も行動しなかった失笑される男と大して変わらない一人の怠け者の人生だったからである。
「・・・・・神が童話のように教えてやろう、賛美の人生を」
「昔々、あるところにとても怠け者の男が住んでいました。彼には家族がおらず、とても孤独な日々を過ごしていましたが、ある日ひょんな事から特別な力
「罪の家来」を従えられるようになりました。
罪の家来は怠けた男の代わりに様々な仕事をこなしました、木を切ったり、切ったタ木を薪に加工したりと、家来はとても優しく、頼りになる家族でした。
ですが、男は怠け者である自分の為に働く家来の事を、働く代わりに自分の命を狙う悪魔だと考えるようになっていきました。
朝日が煌めくある日、いつものように家来が男を起こしに行くと
男は消えていました。
家来は自分の不甲斐なさ故の結果であると嘆きながら森の中に男を探しに行きました。
おしまい」
「この話を聞いてどう思った?」
老人は自分の口から出る話しは全て面白いと、うぬぼれていた。
「神に対する賛歌の意味を神が一番理解出来ていないんだと思うと悲しくなりました」
「神に喧嘩売ってるのか?」
老人は大きな声で怒鳴り、男を振り回し始めた。数分後、怒りが収まった老人は男の事を放り投げ、再び話し話し始めた。
「人生とは行動する勇気と何かを変える力が伴っているからこそ、賛美され、人々の記憶に残るようなものになるとわしは考える」
「さぁ、己の勇気と新たな力を持ち、賛美される英雄となる人生を送るが良い」
男は不信感を抱きつつ、神の言う事を信じ、賛美の人生を送ることとした。
「一応言っておくが、お前の人生は平行世界、言うなれば異世界で生きてもらう」
「その世界はお前の愚かさと、わしの交友関係故、向かわせる先が無かっただけなのだが、まぁお前らも好きだろ?異世界」
「へへ、そうですね」
男と老人はニタニタ笑い合い、お互いの趣味を話し合った
「いやー、人間にしては良い趣味してるなお前、名前は・・・・別に聞きたくねぇけど」
「誰かさんのせいで死人に口なし状態になったから何も言えねー」
「へっへっへ、間違って人を殺すなんて無能だろーその神」
「そうかもな」
「はっはっはっ・・・・」
二人は改めて考えてみると、なんて酷い関係性なのだろうかと冷めた
「ごめんな、間違って殺して」
「いいよ別に、次が決まってるんだし」
二人は仲直りの証として握手か抱擁をしようと思ったが、男には腕が無かった。
「まぁ・・・・わしが見守ってるから安心しときな」
「ありがとうな」
「それじゃあ、英雄となって、賛美される人生を送れよな」
老人は少し悲しそうにそう言うと、男を新たな人生へと導いた
「ふぅー」
男の体は、老人が童話として話した怠惰な男の物であると予測出来たが、罪の家来と呼ばれる力を手にする前なのか、童話の最後、家来を疑って森に逃げた後なのか判断する方法は何も無い。
「てか、なんだこの体」
「腕は細いし・・・・」
怠惰な男の判断は正しかった、罪の家来は
F 山科宗司 @Impure-Legion
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