進んだVR技術は現実かどうか分からない件

@sige02

第1話 現実か否か


『只今、臨時ニュースが入りました。本日十七時時頃、総理大臣と他大臣複数人が撃たれて死亡したと情報が入りました。犯人は現在のところは不明であり、犯行声明も確認されていないとのことです。この衝撃的なニュースをどう捉えられますか?』


『いやぁ、これは大変驚愕させられる事件です。なぜなら犯行現場がセキュリティ的に厳重な場所であり、且つ複数のボディガードがいたのですから。この中でどの様にして暗殺を実行されたのか早急な真相解明が求められますね』


薄暗い倉庫の中で、スマホで臨時ニュースを見ている男が話した。


「おいおい俺たちも相当な悪だと思ってたけどよぉ、上には上がいるんだな。コイツは相当ぶっ飛んでる奴だぜ」


「あぁ……、しかも俺たちが折角お膳立てしてきた計画がこれで全てがパーになった。

末端でもこれだけ苦労したんだから、上の方は今頃相当お怒りだろうな」


その男は、身長190センチはありそうな大男だ。しかも服の上からでも分かる程に大きな筋肉がついていた。


「ぅぅ!ぅぅう!!」


「お目覚めかなあ?」


「雪菜様!お目覚めですか!」


メイド服を着ている綺麗な黒髪の少女が話した。


「咲夜……あなたこそ平気なの?」


雪菜は咲夜の方に視線を向けて話した。咲夜は所々怪我をしているようだった。綺麗な顔が腫れていた。


「はい問題ありません……」


咲夜は痛みを我慢しているような表情をしながらも雪菜に心配させないように話した。


「おいおいご主人様に嘘を言うなんて悪いメイドだな。お前は抵抗しすぎたせいで、数ヶ所骨折してるのによぉ。運転手の方は直ぐに死んじまったんだけどな……お前凄い丈夫だな。これから少し楽しみだぜ!」


男はにやりと笑い、これからのことを想像しながら話した。


「おいおい、そのメイドは俺の物だぞ?これからはソイツをペットにして遊ぶんだからよ!」


「え~そのメイド旦那の愛人にするんですかい。旦那すぐ女壊しちゃうから、俺に下さいよ。こんな上物滅多にいないんですから」


「クッ……!」


咲夜は悔しそうな表情を浮かべて、男たちを睨みつけていた。


「わ、私の身体で貴方たちが満足できるなら好きにしてくれて構いません。ですが、雪菜様には一切手を出さないで貰いたい!」


「だ、ダメよ、咲夜!私のために貴方が犠牲になることなんて――」


「元からそのつもりだ。あの嬢ちゃんは姫宮家当主との取引材料だからな」


「あっちの姫宮財閥のお嬢様も上物だよなぁ。あ~旦那がいなければ、俺が犯しまくってたのによ!」


「いいんです、雪菜様……。私が弱かったため、このような状況を招いてしまったのです。これは力不足な私への罰ですから……」


「そ、そんなこと……」


「そうだ。弱かったお前が悪い」


大男が咲夜の意見に肯定するように話した。

その表情には嘘偽りなく、本心から言っていることが容易に汲み取れた。


「それもそうだな。まぁ一般人にしては良くやった方じゃね?俺たちも薬が無かったら、負けていただろうしな。まぁその薬のせいで、こんなムラムラするんだけどよ」


「おい、それ以上言うな」


大男の声には怒りが混じっていた。


「わ、悪かったよ……。遂やる事なくて暇でおしゃべりしちゃってよ」


「はぁ……。分かった。お前はメイドの下を使え。俺はコイツを殴って楽しむからよ」


「お、流石旦那話が分かる男だぜ!だけど、あんたとの付き合いは長いけど、その趣味は理解出来ねぇよ……」


「話は聞いていたな?姫宮の嬢ちゃんに手は出さない。お前が約束通り身体を差し出すならな!」


「はい……分かっています」


「さ、咲夜……」


雪菜の目尻に溜まった涙が零れ落ちた。


「雪菜様……出来れば後ろを向いていて下さい。流石に見られたくはないので……」


「おうおう、随分とやる気満々のようで嬉しいぜ!はぁこんな上物とやるのは初めてかもな。旦那に殴られた顔が綺麗だったら、もっと良かったけどよ!」


「覚悟は決まったようだな。服を脱げ」


大男が腕を組みながら咲夜を見下ろしていた。

手を何度も握りしめていて暴力を振りたくて仕方ないようだった。

そしてもう一人の金髪の男も我慢出来ないのかベルトに手をかけていた。


「はい……」


咲夜は全てを諦めたようにして、雪菜を護るために自身の身体を差し出す覚悟を決めていた。涙こそ出てはいなかったが、泣きそうな表情で笑っていた。

雪菜はその表情を見て、咲夜が覚悟を決めたのだと悟った。自身が何も出来ないことが分かっているのだろう。涙を流しながら、後ろを向いた。


咲夜がメイド服に手をかけて脱ぎ始めた時、倉庫内から声がした。


「すみません……」


くぐもった声が倉庫内に木霊した。


「誰だ!」


「あん?


「え…」


男たちは先ほどの情欲が無かったように切り替えて状況把握するために、武器を手に取り入口の方を見ていた。


「あ……」


一人だけ違う方向を見ている雪菜には、声の発生源が一早く理解出来ていた。


雪菜の声に釣られるように、他三人の視線が雪菜の視線を追った。

そこには全身ライダースーツでヘルメットを被った身長190くらいの大男がいた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ヘルメットを被った男が足音が一切させずに此方に歩み寄ってきた。


「誰だてめぇ!!」


「え、萩原辰馬です」


「そうか。なんで、こんな倉庫に来たのか知らねぇが運が悪かったな。おい殺せ!」


「人遣いが荒い旦那だぜ。お楽しみタイムの邪魔したんだ、死ねや!」


男が手に握っていた銃を辰馬に向けようと腕を上げようとしたとき、パーンと銃声が鳴った。


「はっ?」


大男が隣を見た。そこには額に穴が開いた相棒の姿があった。

バタンと男が後頭部から勢いよく地面に倒れた。


「「キャッ……」」


雪菜と咲夜が銃声に驚いたような声を出した。



「いや?いきなり俺に銃撃とうとしたから……まぁ次から気を付けましょうか」


「……」


(というかコイツいつ銃を撃った。抜いたところすら視認出来なかったぞ。迂闊に俺が銃を抜けば、間違いなく先に殺される。ここはコイツを油断させたところで、殺すしかない!)


咲夜が辰馬の技量のレベルに驚いた。


(早い……私と比べ物にならない早撃ち。この人なら!)


「お、お願いします!私たちは男たちに誘拐されたんです。助けてくれたなら何でもお礼はしますので、どうか……!」


頭の回転が速い雪菜が瞬時にどうすればいいのか考え、行動に移した。


「状況を見る限りそうでしょうね……そこの男の人、抵抗しなければ……警察?に出しますけど……」


辰馬が警察というワードに疑問符を浮かべながらも話した。


「……分かったよ。俺も相棒を殺されて、お前に思う所はあるが俺が勝てるイメージが浮かばない」


「分かりました。少し痛いかもしれませんけど、我慢して下さいね」


「はぁ?」


辰馬の言っている意味が分からないのか不思議そうな表情を浮かべながら大男が話した。


その時、四度の銃声が倉庫内に響いた。


「アァ――ッッ!!」


辰馬が大男の両腕両足を撃ちぬいたのだ。


「な、なんで俺を撃ったんだ!!無抵抗だったろうが!!!」


「え?だって、そこの人にも同じように痛めつけようとしたんでしょう?僕もやってみたくなったんですよね。今まですぐに殺していたから、そんな発想なくて!だから―――壊れないで下さいね?」


大男に歩みよりながら辰馬は話す。そして、金髪の男が落とした銃を拾い弾倉を確認して、大男の足に向けた。


そして撃つ。


「アッ!」


「や、止めろ、俺の肉が……」


金髪の男の銃がリボルバーだから六発分を男の右太ももに全弾撃った。


「ガッ……アッ……テメェ絶対に殺す!!」


「……別に楽しくないな」


辰馬はリボルバーを捨てて男の額に銃弾を一発入れて穴を開けた。


「うっ……」


バタンと大男が横たわった。


確実に死んだことを確認した辰馬は、少女達の方へ視線を向けた。


「ん~まだ終わらないのか?いつになったら、この任務終わるんだろうか……」


「「え?」」


「あ~別に何でもないです。気にしないで下さい」


「……助けて頂きありがとうございます。私は姫宮雪菜です。そちらのメイドは七瀬咲夜」


「いや……それはいいんだけど……おっと、これは不味い。リスタートかな……」


「ま、不味いですか?」


雪菜は引き攣った笑みを浮かべながら問いただした。

今も怪我で痛そうなメイドも同じ表情を浮かべていた。

辰馬は確信したように、腹の底から笑った。


「ハハハ!!いやいや、大した役者なメイドさんとお嬢様だなと思ってね」


「まぁ失敗しても次があるだろうから、一先ず寝るとするか。次は上手くやるよ」


辰馬は大男の死体を枕にするようにして、横になった。

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