ヒッキー荷物預かり所 ~異世界で花咲くニートのスキル!~
hekisei
第1話 異世界転移
「
ドアを開けて母親の顔が
手には「御不在連絡票」と書かれた黄色い紙があった。
「自分で頼んだ荷物くらい自分で受け取れよ」
すると母親に痛いところを突かれてしまう。
「いつも家にいるんだから、たまには役に立ったらいいじゃない」
母親は働いていて昼間は不在だ。
だから荷物を受け取るのもままならない。
「あんたもそろそろ働いたら?」
高校卒業以来7年間も
「うるせえ、ババア!」
おもわず枕元にあった物を母親に投げつけていた。
ガチャン!
懐中電灯がドアに当たって床に落ちた。
「いい加減にしなさいよ。いつになったら働くの!」
「働くとか無理だし。
その瞬間、部屋の中が真っ暗になった。
スイッチを入れると、部屋全体が青白い光に包まれた。
「え?…来世って、今かよ!」
光が消えると
が、四方に窓があって、その外には太陽の降り
「い、異世界に転移してしまったのか?」
長い間のニート生活のお
だからといって部屋から外に出て行動を起こそうとしないのがニートだ。
優之介は
ニート生活をしている間、困難な事からは
その習性は異世界に飛ばされても変わらない。
優之介は知らない間に眠ってしまっていた。
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえる。
コンコンコン。
優之介は無視した。
コンコンコンコン!
ドアのノックの音は次第に大きくなる。
逃げ場のない部屋にいる以上、出るしかない。
ひょっとして悪意のある人間だったらどうしよう。
少し心配ではあったが、本物の強盗だったら窓を破ってでも入ってくるだろう。
ノックをしているということは、少なくとも紳士的な人間に違いない。
そう思った優之介はドアを開けた。
そこに立っていたのは奇抜な青い制服を着た中年男性だった。
見慣れないシンボルが
外見からすると異世界の配達人なのだろうか。
「初めまして。疋田優之介さんですね」
「えっ、ええ」
なんで初対面の人間の名前を知っているのか?
「私はクローネ・パクスと申します。クローネと呼んでください」
「クローネさん……ですか」
「そうです。荷物配達人をしている関係で、村人全員の名前と住所が頭の中に入っているんです」
「なるほど」
「それで、ちょっとお願いしたい事があるのですけど」
快活な口調ではあったが、いささか強引だ。
優之介は素早く頭の中で計算した。
クローネは悪い人間ではなさそうに見える。
ここで恩を売っておけば、勝手の分からぬ異世界で何かと助けてもらえるかもしれない。
「どのような事でしょうか」
「荷物を預かって欲しいんですよ」
「荷物……?」
異世界に飛ばされていきなり荷物を預かってくれって。
これは一体……
「お隣さんの荷物でしてね」
「隣?」
優之介はドアから1歩でてクローネの指さす方向を見た。
隣と言っても100メートルはある。
「預かるのはいいのですが」
まだこちらの世界のシステムが分からないから優之介が慎重になるのも当然だ。
「受取人が営業所に取りに行くとか、時間を指定して再配達してもらうとか。そういう選択肢はないのでしょうか?」
クローネは大きく
「何かと元の世界と違っているので
「俺が別の世界から来たって、どうして分かるんですか?」
「見れば分かりますよ。服装が違っているし……」
クローネはさらに続けた。
「ヒッキーさんのように、向こうの世界から飛ばされて来る人が時々いるんですよ」
「ヒッキーさんって、俺の事?」
「疋田優之介さんという名前は長いですから、ヒッキーさんという事にしておきましょう」
優之介の名前はいつの間にかヒッキーになってしまった。
が、異世界で別の名前を持つというのも悪くない。
なんだか生まれ変わったみたいな気がする。
そう思いながらヒッキーはまだ質問に答えてもらっていなかった事に気づいた。
「クローネさん、さっきの質問ですけど」
「ああ、営業所と再配達の事ですね」
「ええ」
「営業所は遠いし、この村では歩く以外の移動手段が未発達でしてね」
「遠いって?」
「ヒッキーさんの世界の単位で10キロくらいでしょうか」
「10キロって! 歩けないよ、そんなの」
運動不足のニートにとっては10キロどころか1キロ歩くのも大変だ。
「でしょう? だから時間指定の再配達も有料なんです」
「有料って、いくらくらいなの」
「銀貨1枚ですね」
「銀貨1枚って」
「ヒッキーさんの世界で1万円くらいじゃないですか」
「再配達に1万円って!」
ヒッキーは驚く。
「私も営業所から歩いて来ているんで、あまり気軽に再配達に応じられないんです」
「確かにそうですね。でも銀貨1枚というのもなあ」
「会社が決めた再配達料金ですが、そういった
「分かりました。それじゃあ荷物を預かっておきましょう。そのくらい大した手間でもありませんし」
「助かります!」
クローネは心底喜んでいる様子であった。
彼の笑顔を見ていると、人の役に立つのも悪くない、そう思ったヒッキーだ。
かくして最初の荷物が運び込まれた。
後に「ヒッキー
(次回に続く)
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