第14話 マーメイドの町の殺人
「あれは確実に死んでるですぞ…」
昨日元気にケンカをしていた赤チームリーダーのセンダさんは槍で滅多刺しにされており、顔は原型が無くなっていた。
マーメイド達は全員無言で死体を見ている、涙してるのは青チームリーダーのマリンさんと数名の女性、
面倒事はごめんだと気づかれないように去ろうとする一人と一匹。
「あ!旅人さん!誰がセンダを殺したか昨日みたいに解決してよ!お願いよ!」
マリンさんだ…
「見つかっちゃったですぞ、僕がかっこいいばっかりに…」
今はやめとけ、怒られるぞ…
僕は話を聞くだけで解決できるか分からないと伝え、一応全員に話を聞いてみた。
子供を覗いて60人…こんなのってないよ…
数時間後
全員の話を聞き終わった。
「これはこれは…もうお腹いっぱいですぞ…お菓子も入らん…」
「そうだな、もうギャグだな…」
話を聞いていくうちに分かった事は、センダはいない方が良いのでは?という事だった。
まず青チームのリーダーのマリンさんはセンダさんの奥さんだった。つまり昨日の喧嘩はポメヤが言った通り痴話喧嘩で合っていたと言う事だ。
結婚前からよく衝突していたらしいが、その衝突に町を巻き込むなよ…
そしてセンダさんには不倫相手が8名ほどおり、青チーム赤チームにそれぞれ4人ずつだ、上手い事やってたんだなぁ…。
それぞれマリンさんと別れてお前と結婚すると言われていたそうで、そのままズルズルと男女の関係を続けていたらしい。
1週間って8日ないよね?
そして赤チームはセンダのワンマンプレイで何度も危ない目に合っているらしく、自分達を手足のように扱い、美味しいところを持っていくので鬱憤が溜まっていたそうだ。
青チームはマリンさんの言う事にいちいち突っかかるセンダさんが大嫌いだったそう。
昨日のケンカも毎回センダが自分が獲ったからと肉を多く取っている事が原因で、たまには少しくらい多くくれても良いじゃないというケンカだったらしい。
実際にマリンさん達が頑張って魚を取ってるお陰でこの町は成り立っていた。
「もう良いんじゃない?通りすがりのヤリに殺されたとかで、面倒ですぞ。」
「確かになぁ…死んだ方が良いヤツっているよな」
しかしマリンさん…一応死んだら悲しかったんだな…泣いてたし…
「恋は盲目、センダはヤリモクって事ですぞ」
最近酷いね君。
しかしこれは犯人なんてもうどうでも良いんじゃないか?嫌われ者が殺された、そんなのどこでもある事だと思う。
「僕たちって一番関係ないですぞ」
「普通なら容疑者候補に上がらなくもないけど今回はないな、絶対にない」
一応推理してみると、まず女性がセンダさんを刺し殺せるとは思えない。返り討ちが良いところだ。
そうすると男性だが、センダさんは聞くところによると実力でリーダーになったらしい、複数人じゃないと無理だな。
「でもあの男性器みたいな男は昨日相当酔っ払ってましたぞ、僕の話もちゃんと聞かないし」
センダさんの事?あとお前の話は聞くに値しないよ?。
いくら泥酔してても命の危険が迫ったら抵抗するだろ。
「ポメヤはどのくらい遅くまでいたんだ?」
「トーマが寝て数分ってところですぞ、マリンさんが酔っ払って限界そうだったので部屋まで送ってそのまま寝ましたぞ」
「マリンさんは本当に寝てたのか?」
「確実に寝てた、というか飲み過ぎて気絶に近いですな」
うーん、もうマリンさん以外全員犯人でいいだろ、町ぐるみで邪魔者を排除したって事で。多分合ってるし。
間違ったところで僕たちもう町出るし。
「ですぞー適当に推理してもう次の町に行くですぞータコも食べたしね。」
貝ね?
マリンさんに頼んでみんなを広場に集めて貰って、僕の想像の推理ですがと予防線を張った後に喋った。
「最後まで静かに聞いてください。今回の犯人は複数います、マリンさん以外の全員です。」
全員がどよめき、お互いの顔をみる。
「まず宴会である程度センダさんを酔わせた後に海を見ながら飲みましょうとか適当にセンダさんを誘い出し、武装して待機していた人達で滅多刺し、後は恨みがある人達でまた滅多刺し、顔の損傷が酷いのは恨みが強い人が集中して刺したからでしょう。」
以上です、と締めくくり、少し反応を見た。
最初に口を開いたのはマリンさんだ。
「本当なの?みんなでセンダを殺したの?ウソよね?」
涙目でマリンさんは問いかけた。
「住人の総意です、彼がいなくなればこの町はもっと良くなる、みんなで決めました。マリンさんに相談したら反対する事が分かっていたので相談はしませんでした」
え、本当に合ってたの?この後どうなるの?
「まあ後は見守ってれば終わりますぞ」
「確かにセンダはワガママで女好きだったわ!でも森で初めて狩りを成功させたのは誰!?
お酒を他の町から調達できるようにしたのは誰!?
全部彼が町の事を思ってやったのよ!!」
本当ですか?結構有能じゃん…
「あれでも必要な人だったの!狩りの最中に死んだ人はいないでしょ?あれは彼が的確に指示を出していたからよ!」
「なんか無能共が上司の有能さに気付かずに退職に追いやったって感じですぞ…」
最初は威勢の良かった全員は無言になってしまった。
「女関係だってそうよ!他の街や国の王は妻を何人も作るって言うわ!男の人達は嫉妬もあったんじないの!?」
「もうこの町は終わりよ…」
そう言うとマリンさんは泣き崩れてしまった。
「なんかもう俺たちの出る幕じゃないな。」
「最初から出る幕なんて無かったですぞ、部外者だし」
確かに…
「もう好きにすれば良いのよ、あなた達では町の運営なんて無理よ…私ももう信用できない…お終いよ…」
マリンさんはそういうとフラフラと海に歩いて行き、水に入ると下半身が魚になって泳いで行ってしまった。
町民がざわめく…
「どうするんだ?マリンさんを唯一のリーダーにするんじゃなかったのか?
「もう無理そうだ、おい、誰かリーダーやるやつは?」
「二人に任せっきりだったもん、何も分からないわ」
「じゃあどうすんだよ!」
僕たちはリーダーの押し付け合いの喧嘩を遠目にこっそりと町を出た。
「結局またケンカしてますぞ、哀れな」
「まあもう無理だろ、カリスマって天性のものだしな」
「1つ謎が残ってますぞ。」
「あー、なんでセンダさんの死体を隠したりしなかったかって事?
「普通なら埋めたりして隠すと思うんですぞ」
「それはやっぱりあれだろ。」
リーダーが無能だったんだよ。
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