陸の女王~魔王を倒したお姫様は、自国で産業革命を始めるようです~
立積 赤柱
第1話 国を回すのは大臣です
これはのちに『陸の女王』と呼ばれることとなる、王女様のお話。
昔々あるところに、それはそれはお転婆なお姫様がおりました――
「書類確認なんて、やってられないィ~!」
と、積み上げられた書類の束を雪崩のように崩しているのが、そのナナ姫。栗色の長い髪をまとめ、少し目が吊り上がった凛々しい顔立ちをしている。事務処理は苦手そう。それもそのはず。彼女には奇妙な才能があった。魔法使いとして名高い王家に生まれながら、全く魔法が使えなかったのだ。その代わり、ナナ姫には天性の才能が備わっていた。強靱な身体と体力が……とても、魔法使いの王家の血筋とは思えない才能だ。その力と技は、父から「護身用に」と習わされ開花した。
外国から雇った武術の先生を、城の屈強な兵士たちを次々と叩きのめしてしまったのだ。
この国に、彼女に敵うものは無し――
そして、
「姫様。ご自分で『王の仕事を手伝いたい』と申したではありませんか。また投げ出されるおつもりですか」
なだめているのは、彼女が崩した書類をかき集めている書記官の青年だ。線の細い同い年の青年だが、彼はナナ姫ともに世界を旅した中。ただし、主従関係であるため、恋愛感情などもってのほか(なにが?)。
「だって、コナン。なんなのよ、これを読んで、私はサインをするだけ……大臣たちがほぼ国のことは回しているじゃない。私の承諾って必要なわけ?」
と、羽根ペンをクルクル回している(器用だな)。
「姫様が読まれることで、
今、彼女がやっていること。それは国内政務の書類のチェックだ。
城から力試しの旅に出て、5年以上経過していた。世界中を回り、遂には勇者の仲間となり、世界を手にしようとする魔王軍とも戦った。苦難の末、魔王を倒したナナ姫は、すっかり大人になって故郷に帰ってきたのだ。そして彼女は、父である現国王の仕事の負担を減らそうとしたのであった。彼女がそんな決意をしたのは、王の病状にある。魔王との激戦から帰った故郷では、王である父がすっかり弱っていた。病に伏せる父を見て、自分がやらねば、勇者との旅で王族としての心構えも身につけた……と思う。
そして、毎日のように事務作業に追われる羽目になるとは――
「私の
「いけません! 大臣たちが身勝手に国を動かさないためにも、姫様が目を通していただかないと――」
「つまり、失敗した責任は私ってことよねぇ?」
「……」
コナンは沈黙した(おい! フォローしろよ)。
「それより、
ナナ姫は立ち上がると、楽しそうに窓を開け、目の前に広がっている『城』の工事現場を見た。今、事務作業をしているのは、その隣に作られた仮の事務室。彼女たちの城は旅をしている間に、魔王軍に襲われ、拠点として使われていたのだ。
勇者と共に取り戻したのはいいもの、城は荒れてしまった。
さらに城下町も寂れてしまった。当然ではある(事務作業が多いのはこのためだ)。
まあ、魔王軍が去ってから、散り散りになっていた人が再び街に始めたのはいいが……どうしてもお城は、魔王軍の記憶があり、人々に毛嫌いされていた。
「いっそう、お城を建て直しちゃいましょうよ!」
が、ナナ姫の一言。
この国に彼女に敵うものはなし……しかも、勇者と一緒に魔王軍をやっつけたとなれば、発言力も強い。
それに丘の上に立っていたお城は、新たに人が戻ってきた街からは不便であった、行政機関として。なので、新しいお城を、新たに人が集まり、街として形成し始めた土地の横にと、計画がまとまったのだ(国民には迷惑なのでは?)。
ただ、一時本拠地であるお城を落とされた彼女の王家には、先立つものがない。人望やらは何とかなったが、お金がなかった(あと、ナナ姫の物理的な脅し)。
ナナ姫たち王族ですら、唯一城下町に建物が残っていた宿屋を仮住まいとしている。摂取はしていない、後で金を払うのだから。
そのため、お城の使える材料すらケチりたかった。よくよく考えてみれば……丘の上にある。
「あれを解体して、使い回しちゃえ!」
と、またしてもナナ姫の一言。
この国に彼女に敵うものは無し……と、いうわけで旧城の解体と、新城の建設が同時進行で行われていた。
ムチャに思われるかもしれないが、ナナ姫には計算ずくであった。この国家事業によって、石工や木工などの職人が集まり、国の経済を回そうとしていたのだ。
多分、キッと、必ずや――
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