陰キャな僕と陽キャなギャル。恋のキューピッド作戦始めました

フィステリアタナカ

第1話 陰キャな僕、陽キャなギャルと掃除する

 高校の休み時間。僕がスマホのパズルゲームで遊んでいると、教卓の方から賑やかな声が聞こえてきた。


「今日、終わったらどこ行く?」

「カラオケとかかな」

「えーー、またカラオケ? ボーリングとか他のにしようよ」

「美咲どう思う?」


「あー、あたい今日は用があるからパスで」


「えーー、美咲来ないの?」

「どうせたいした用じゃないだろ? そんなの後回しにして遊ぼうぜ」


 どうやらクラスの陽キャグループが何やら放課後について相談しているみたいだ。


「美咲が来ないんだったら、バスケに行こうぜ。男女で三対三ゲームしようや。それで負けた方がジュース奢る感じで」

「そんなの男子が勝つに決まっているでしょ」



「おー、お前ら席に着け」

「先生早いよー、まだチャイム鳴ってない」


 ◇


「じゃあね、美咲」

「ちょっとあんた達、掃除くらいやっていきなさいよ」

「忙しいからパスで」

「はぁ」


 そう言って溜息をついたのは日向寺ひゅうがじ美咲みさきさん。陽キャグループの中でも真面目な方で、しかもスタイルが良く、カワイイ。一学期で告白された回数が二桁になったという噂を聞いたことがある。


「まったく、みんないなくなっちゃうんだから。今泉やろ」

「うん」


 教室掃除の担当になった時は、いつも日向寺さんと二人で掃除をしている。彼女は制服を着崩していて、掃除中、僕は彼女の大きなおっぱいにどうしても目がいってしまう。


「よいしょ」

「その列、運ぶよ」

「ありがとう。じゃあ、ほうき持ってくるね」


 二人で教室の床を掃く。粗方掃き終わり日向寺さんが塵取りを持ったとき、僕はいつもドキドキしてしまう。


(あっ、今日は縞パンだ)


 彼女は無防備に塵取りを持ってしゃがむ。僕は何事もなかったかのように箒を動かすが、パンツが見えていることを指摘するべきであろうか。


「よいしょ」

「日向寺さん。残りの机、僕が運ぶよ。今日用事あるんでしょ?」

「まだ時間あるから大丈夫。用事あるってよくわかったね」

「休み時間、話してるのが聞こえてきたから」

「あたいらの話、みんな聞いてるんだ。エロいこと言わないようにしないと」


(どう返せばいいのだろう)


 掃除が終わり荷物を確認していると、いつものように日向寺さんに挨拶された。


「じゃあね、今泉。またね」


 ◆


「ただいまぁ」

「おかえり、ゆずる

「父さん、今日早かったんだね」

「今日は休みを取った。J2のサッカー見たくてな」

「そうなんだ」

「譲、今日の夕飯何食べたい?」

「うーん。お肉が食べたいかな」

「わかった。じゃあ、カレーにしよう」


(ん? カレー?)


「譲、材料無いから買いに行くぞ」


 夕食の材料を買いに、父親とスーパーへ行く。スーパーまでは車で十分じっぷんだ。


 ◆


「豚肉、豚肉っと」


 スーパーに着き、早速店内へ。じゃがいも、人参、玉葱と、カレーの材料をかごの中に入れていく。


「あっ、今泉!」

「ん?」


 声のした方を見ると、日向寺さんが女性と一緒に買い物をしていた。


「美咲、この人は?」

「クラスメイトだよ」

「そう」


 おそらく女性は日向寺さんの母親なのだろう。


「譲、知り合いか?」

「うん、同じクラスの日向寺さん」


 日向寺さん達がこちらにやってくる。


「どうもこんばんわ。日向寺と申します。いつも娘がお世話になっております」

「いえいえ、こちらこそ。今泉と言います。息子がお世話になっております」

「買い物ですか?」

「はい、夕飯を買いに来まして」

「そうなんですね。奥さんが羨ましいですわ。こんなイケメンで、買い物を率先してやってくれるなんて」

「ははは、妻には先立たれまして。そちらの旦那さんが羨ましいです。こんな美人な人を妻に迎えるだなんて」

「ふふふ。浮気されてもとおっととは離婚しました。今は娘と二人きりです」

「すみません、踏み込んだ話をしてしまいまして」

「いいえ。こちらこそ詮索するようなことを言ってしまい申し訳ございません」


(大人の挨拶って、何か大変そうだな)


「ではこの辺で失礼します。譲、行くぞ」

「うん」


 買い物を済ませ家に戻り、エコバッグから材料を取り出す。いつも作っているようにカレーを作り、出来上がってから父親をテーブルに呼んだ。


「出来たよ」

「ありがとな、譲」


 父親がテーブルに来て、僕はカレーライスを運ぶ。


「いただきます」

「いただきます」


 カレーを口に入れ、「もう少し辛くてもよかったな」と思っていると、父親が日向寺さんのことを聞いてきた。


「お前、日向寺さんとは仲がいいのか?」

「うーん、普通かな。掃除のとき話すくらい」

「そうか」

「うん。日向寺さんカワイイから人気があるよ。お母さんも綺麗でびっくりしたよ」

「そ、そ、そうだな」

「どうしたの?」

「な、何でもない――あっ」


 父親がスプーンを落とした。ひょっとして動揺している? 何だか様子が変だ。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした」


 ◇◆◇◆


「ねえ、美咲」

「何、おかん」

「あの、今泉って子と仲が良いの?」

「うーん。良い方だと思う。よく一緒に掃除するし」

「そう」

「今泉はあたいと違って勉強できるし、真面目な人だよ」

「そうなの」

「それにしても今泉の父さん、イケメンだったよね。あんなイケメンがクラスにいたら目の保養になるんだけど。おかんもそう思わない?」

「そ、そ、そうだね。カッコよかったわ」

「ん? 何かおかん変だよ。具合でも悪い?」

「だ、大丈夫よ。美咲」

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