ヤンデレ幼馴染に勧誘されてる俺、昔の約束通り1人だけ冒険者になっても追いかけられる。
たいよね
約束
「大人になったら、三人で一緒に冒険者になろうね!」
遠い遠い、昔の約束。
いつ頃だったろうか、田舎の学舎での一幕。
俺達三人はいつも一緒の幼馴染だった。
綺麗な水色の髪と、無口でポーカーフェイスだが表に出ない優しさを秘めたルナ。
情熱的な赤髪と、天真爛漫で元気な性格で他人を慮る気持ちを持ったマリア。
自分には剣の才能は無かったけど、二人には相応、人並外れたそれ以上の才能があった。
ルナは言うなれば、魔術の天才。
まだ子供だと言うのに、全属性の初級魔術を扱えていた。
回復魔法さえ扱えて、村中の子供達がルナの元に集まり、『怪我を治して』と言う依頼が飛び交う程優秀な回復魔法だった。
未来は王宮魔術師だろうと、村中の誰もが噂していた。
マリアの方はと言うと、大人さえ余裕で打ち負かす程の剣術の才能があった。
生まれた時点で覚える物が決められているスキルも優秀な物ばかりを習得し、決して屈する事のない度胸があった。
将来は王宮騎士だろうと、村中の誰もが噂していた。
その点、俺は何も持ち合わせていなかった。
だけど、冒険者だった父親から受け継いだランスがあった。
頑丈な鉄製で、決して折れる事のない信念と硬さを携えたランスだった。
そんな俺達は幼馴染、二人は俺に何故か懐いて、俺も二人の事を大事な親友としていつも遊んでいた。
マリアとはよく組み手をしていた、いつもボロ負けだったけど『良い勝負だったね!』といつも手を握ってくれた。
剣も教えてくれていたが、才能の無い俺にはよくわからない感覚論ばかりでよく理解出来なかったが。
ルナはいつも魔術を教えてくれていた。
掌から小さな炎を出せた時は、とてつもなく褒めてくれていた。
しかし、彼女の才能に勝る訳もなく、小さな炎を出す程度で俺の魔術の才は終わってしまったが。
そんな二人も、今では立派な王宮騎士と王宮魔術師の仲間入り。
王都側から通達が来た時は村中お祭り騒ぎで、一日珍しく村の中がずっと明るかった。
──────
時は飛んで今、そんな立派な二人に俺は……。
「ね〜! シェイド、一緒に王宮騎士になろうよ〜! ボクと一緒なら、絶対良い所まで行けるよ? ね?」
「ダメ、シェイドは私と一緒に王宮魔術師になるの。シェイドが魔法の才能の方があるの、知ってるから」
めちゃくちゃ過大評価を受け、勧誘されまくっている。
無理だよ、無理だって。
荷が重過ぎるよ、流石に。
「あのな、ルナ、マリア。俺にはそんな才能ないの……昔も見ただろ?」
「うん、覚えてるよ! 子供の頃はずっと私と良い勝負をして、毎日鍔迫り合いをしてたライバル関係だったよね! 今でもだけど!」
「覚えてる、掌から巨大な炎を出して一本の木を燃やしてた所も。あの時の私以上で凄かったな」
ダメだこいつら、思い出が美化されすぎてとんでもない事になってる……!
と、そんな2人に毎日勧誘を受ける日々、俺は諦めるか逃げるかの選択肢しかなかったわけだ。
だが! 俺は昔に約束した冒険者になる、と言う約束を忘れていなかった。
父親の様な立派な冒険者になって悪人を懲らしめたり、人の役に立ちたいと思っていた。
俺はルナとマリアの二人が俺を引きずろうとしながら王都に向かった翌日に、家族に別れを告げ王都に向かった。
王都の冒険者ギルドに向かい、色々ややこし〜い手続きを終え、俺は冒険者になった。
ブロンズ級からのスタートだが、父の形見のランスを手にいつかはゴールド、いやプラチナ級まで駆け上がって見せる!
そんな時だった。
優雅な朝を迎える為に、コーヒー片手にギルド近くのホテルで朝の新聞を手に取っていた。
その新聞には、驚くべき事が書かれていた。
『辺境から来た類を見ない才能を持つ王宮騎士、王宮魔術師候補の二人が抜擢を辞退! 冒険者になると突然の公表!』
まぁ、コーヒー吹き出して折角の新聞がパァになったよね。
焦りながらギルドに向かい、さっきの事は忘れようと今日の依頼を受けるべく依頼一覧を見つめていた時、受付嬢からお呼び出しがかかった。
「シェイドさん、あなたとパーティになりたい、と二つ参加申請が通っています。おめでとうございます、ここまでの速度でソロからパーティになる冒険者は珍しいですよ」
その言葉を聞いた瞬間、嫌な冷や汗が止まらなかった。
案の定、受付嬢の声がする後ろに振り向いた時には……。
「紹介しましょう、ブロンズ級のルナ様とマリア様です」
「シェイドくん、久しぶり、だね♡5日ぶり位かな? ちゃんと約束通り三人で冒険者になれたんだね! 末長くよろしくね♡……今度こそ、逃さないから」
「シェイド、私達に黙って行っちゃうなんてずるい。私達はずっと一緒の幼馴染、でしょ? ……ずっと一緒の♡」
俺の冒険者生活、どうなるんだろうね。
というか、受付嬢さんはなんで驚かないんだよ……。
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