第19話 迫りくる混沌と支え合う力
森の静寂を打ち破る呪文の響きが広がる中、俺は邪眼に再び力を込め、目の前の暗黒のファラオ団に立ち向かおうとしていた。だが、相手は数だけでなく、異様な雰囲気をまとった魔術師たちだ。一人一人がただならぬ実力を持っているのが伝わる。
「数が多いな…これは少し厄介かもしれないな。」
「主、油断してはいけません。彼らの目的はあなたを捕らえること。そのための準備をしているはずです。」
ニャルの冷静な警告を聞きながら、俺は意識を集中させた。その時、どこからか軽やかな声が聞こえてきた。
「やあ、融君。大変な状況みたいだね。」
振り返ると、そこに立っていたのは黄色いローブを纏った友人、ハスターだった。普段は気さくで優しい雰囲気を持つ彼だが、今はどこか威厳を感じさせる佇まいだ。
「ハスター…お前、どうしてここに?」
「君が危険だって聞いたからね。まぁ、僕も少し手を貸そうかと思って。」
その言葉に安堵が広がる。ハスターがいるなら、状況は少し変わるかもしれない。
「…助かる。けど、お前、一体どうやってこいつらに対抗するつもりだ?」
ハスターは不敵な笑みを浮かべた。
「心配ないさ。僕は“黄衣の王”としての力も使えるからね。」
その名を口にした瞬間、暗黒のファラオ団の空気が変わった。彼らの動きが一瞬止まり、明らかにハスターを警戒しているのが分かる。
「どうやら、君たちも僕のことを知ってるみたいだね。」
ハスターが柔らかく笑う中、別の方向から重々しい声が響いた。
「フン。相変わらず、頼りないな。」
その声を聞いた瞬間、俺の背中に冷たい汗が流れる。振り返ると、そこには異形の存在――俺の魔術の師匠、シュブ=ニグラスが佇んでいた。無数の触手に覆われたその姿は圧倒的な威圧感を放っているが、どこか頼もしさも感じる。
「師匠…」
「お前の未熟な力だけでは、こいつらを抑えるのは難しいだろう。仕方ない、私が少しだけ手を貸してやる。」
その言葉に心強さを感じる一方で、暗黒のファラオ団はますます警戒を強めているようだ。
そして、さらに意外な人物が声を上げた。
「阿佐間君、大丈夫?」
その声の主は、隣の席のクラスメイト、橘だった。いつもおとなしく、話しかけても控えめな反応をする彼女が、まさかこんな場面に現れるとは。
「橘…?どうしてここに?」
「私も…彼らの一員なの。暗黒のファラオ団に所属してるけど、信仰してるだけ。戦ったりするのは嫌なの。でも、阿佐間君が危険だって聞いて…どうしても放っておけなくて。」
彼女の声には確かな覚悟が込められていた。
「橘さん…」
「大丈夫。私、少しは役に立てると思うから。」
彼女は震える手で護符のようなものを取り出し、何か呪文を唱え始めた。すると、周囲に漂う禍々しい空気が少しだけ緩和された。
「主、今です。仲間たちの力を借りて、反撃の準備を。」
ニャルの声に促され、俺は邪眼に再び力を込めた。ハスター、シュブ=ニグラス、そして橘――頼もしい仲間たちの力が今、俺の背中を押している。
「分かった。行くぞ――!」
戦いの幕が上がる中、俺は彼らと共に立ち向かう決意を新たにした。暗黒のファラオ団との死闘は、今、始まったばかりだ。
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