またか? 崔の下ネタ!

崔 梨遙(再)

1話完結:1200字

 僕は、40歳を過ぎてしばらくして、救急車で運ばれた。その時、20年ぶりに父との同居を始めた直後だったので、朝、ダイニングで倒れている僕を父が見つけて救急車を呼んでくれたのだ。その頃、僕は胃腸を中心に消化器を壊していたのを父が知っていたので内科に運ばれた。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腸潰瘍、食道潰瘍だった。だが、夜には意識を取り戻し、晩には父の車で自宅に帰った。


 その1週間後の朝、僕はまたダイニングで倒れていて、また父が救急車を呼んでくれた。前回、内科に運ばれたし、その時の僕は独語症状があったらしくて精神科に運ばれた。2、3日、意識が無かった。だが、僕は幻聴と幻覚の症状があったらしい。統合失調症と診断された。僕は精神病に認定された。15日間の入院を経て、僕は退院した。


 退院後、ゆっくり療養したかったが、そんな金銭的余裕は無かった。とはいえ、通院と処方された薬で症状を抑えていたが、いきなりフルタイムで働くには無理があった。知人を頼り、あちこち派遣で活動している佐々木さんと知り合いになった。



 佐々木さんから、単発や短期のバイト(派遣)を紹介された。『試験監督の仕事だ』と言われて行ったら、矢印のプラカードを持って“会場はこちらですー!”と叫び続ける誘導の仕事だった。夏場は暑かった。


そして、運命の仕事。『銀行の仕事だ』と言われて行ってみたら、銀行の宝くじ売場のバイトだった。仕事内容は“呼び込み”。宝くじ売り場の前で“本日、一粒万倍日でございます! 宝くじをお求めの方は、こちらの売場へどうぞー!”などとメガホンを持って叫ぶのだ。


 そこに、その人は現れた!


 ラフな服装、帽子を被ったお爺ちゃん。60代から70代だろう。お尻を押さえながら、トコトコと僕の所にやって来た。


「兄ちゃん! 兄ちゃん!」

「はい、なんでしょうか?」

「ごめん、トイレを貸してくれ! 漏れそうなんや」


 僕は、ダメ元で宝くじ売場の女性に“トイレを貸してあげられないか?”聞いてみた。やっぱり“トイレは貸せません”という返事だった。


「すみません、やっぱり貸せません。この信号を渡ったところ、あのビルのトイレが1番近いです、今、信号は青です。そちらへ行ってください!」

「わかってるねん! あのビルが1番近いのはわかってるねん! でも、もたへんねん!」

「まだわかりませんよ、早く信号を渡ってください!」

「あ!」


 爺の目が急にウットリ、トロンとした。すごく気持ちよさそうな顔だった。


「アカン、もう漏れたわ」

「あのビルで下着とか買ったらどうですか?」

「いや、もう、漏れたしええわ」


 爺はトコトコ駅の方へ歩いて行った。ズボンの後ろを派手に濡らしながら。



 人が脱糞する瞬間の表情を初めて見た。脱糞する瞬間は、すごくいい表情だった。







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