所属ギルドが最弱すぎて完全に俺頼りなのだが。~SNS中毒者の俺が幼馴染のためにするダンジョン攻略~

街風

第1話 幼馴染のために始まったハンターライフ! 

2話目以降は毎日20:13分更新でいこうと思います。


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―――西暦2047年8月


 総収容人数10万人のニューテキサス・スタジアムには前人未到の偉業を成し遂げたハンターの雄姿を見届けようと超満員の観客達で溢れかえっていた。


「すごいねサクラ!」

「うん、ひとがいっぱい!」


五歳の俺は、黒髪の幼馴染サクラと手を繋ぎ、その圧巻の光景を眺めていた。

すると、俺たちをここに連れてきてくれたバイオレットヘアーのお姉さんが、スタジアム中央を指さす。


「ほら、彼が今日の主役よ」


スタジアムのど真ん中に設置された表彰台。

そこへ金髪の外国人さんが登場するとドカンと会場が揺れる。


地震じゃない。

それは地を揺るがすほどの大歓声。


「「「「WOWOOOOOOOOOOOW!!!」」」」


神の降臨をたたえるかのような熱狂的な雄たけび。ただの叫び声だったそれは、やがて一つの言葉へと集約される。


「「「「M・V・P!」」」」


「「「「M・V・P!」」」」


「「「「M・V・P!」」」」


「「「「M・V・P!」」」」


それだけじゃない。

この瞬間は全世界同時生中継で放送されていた。

電光掲示板にはとんでもな速さでコメントが流れていく。


『You are the ultimate hunter』

『사랑해요. 당신은 구세주입니다』

『亚洲的英雄,你是我们的骄傲』

『You are the strongest player of all time』

『Please become the president!』

『アシュレイ様好きー!』

『Un jour, viens dans mon pays. Avec le plus grand respect !』

『Никто не может сравниться с тобой.』

『You are the pride of America!』

『شكرًا لك على أن أصبحت صيادًا.』

『You are truly the world's greatest Top Gun』



「MVPってなーに?」


サクラが質問するとお姉さんが優しく教えてくれる。


「ダンジョン攻略で一年で最も活躍したハンターに送られる称号よ」

「へえ!」


ダンジョンとは人類の敵であるモンスターで溢れる巣窟そうくつ。しかし、そこで採掘される魔石などの特殊な物質は人類に様々な恩恵をもたらす。


危険なダンジョンに果敢に挑むハンターは世界中の人達が憧れる花形職業。

トップの実績を残せば富、名声、栄誉、この世の全てが手に入るといわれている。


突然、前の席にいた美女達が下着を脱ぎだして、生暖かそうなそれをスタジアムのフィールドに投げつけた。有名人に対するアメリカンプロポーズのお作法らしい。


それでも金髪のハンターは動じることなく、ニコっと白い歯をみせて微笑む。


「かっこいいね!」

「え!?」


大好きな幼馴染の予想外な反応に、思わず握りしめる手にグッと力が籠る。


「そ、そうかなー。ちょっとキザっぽいというか」

「ううん、かっこいいよ」


チリチリと俺の心が焦燥して焦げ付いていく。


「シュート、わたし強いハンターと結婚したいな!」

「そんなぁぁぁぁ!!」


渾身の悲鳴は大観衆の歓声に埋もれて消えていく。

そして俺のハンターライフがはじまった。





―――西暦2060年4月


あれから13年の年月が過ぎた。

俺はハンターになった。


早朝からダンジョンに潜った成果を、ギルドの受付カウンターにガラガラと置く。全部魔石だ。


「朝からせいがでるねぇ~」

「この時間はライバルがいなくて活動しやすいんです!」


ギルド受付の江原セイコさんは、魔石を拾い上げ一粒ずつ査定していく。

艶やかでふわっとやわらかそうな茶色い髪。おっとりと優しそうな垂れ目。目元にぼつんとあるホクロには妙に色気がある。


「ふっ、命がけの死闘でしたが、今日も傷ひとつ負わずに倒すことができました」


もちろん、隙あらば男らしさをアピールするのも忘れない。


「凄いわ、シュート君。えーと、ゴブリンの10等級魔石が5個と、スライムの11等級魔石が3個で、合計16250円ね!」

「……」

「そこから、手数料と経費がもろもろひかれて、手取りが……」


ぱちぱちとセイコさんが小気味の良い音で電卓をたたく。


「……4875円」

「やっす。俺の手取り低スンギ」

「……せ、節約すればどうにかなるって」

「命賭けで働いてこれじゃ節約ってレベルじゃねーぞ!」

「お、男は金じゃないって!」

「詭弁だ! 俺は騙されないぞ! この前なんて、キャバクラで働いてる女子が、シャンパン一本で3万稼いだってSNSにあげてたし!」

「やめよ、そうやって比べるの。悲しくなるだけだから」

「……税金払ってるかも怪しいキャバ嬢に負けるとか納得ができないっ」


セイコさんの形の良い眉が申し訳なさそうにハの字に曲がる。


「ごめんなさい、ほら、うちのギルドって稼働してるのシュート君だけだから負担が大きくなってしまうの。うーん、ウチも新しい人が入ってくればいいんだけどねえ」


ギルドとは、ハンターが所属する事務所みたいなものだ。

ダンジョンに潜るにはどこかのギルドに所属する必要がある。


そして、ギルドのハンター最小人数は4人。

人数上限はなく、大手では1000人規模のところもある。

国に対するギルドの貢献度が一定以下だとギルドは取り潰しとなる。

そして、我らが弱小ギルド・ヘッジホッグのハンターは当たり前に4人。


ここでイカたギルドメンバーを紹介するぜ。


一人目。

青髪のよぼよぼジジイ、ミチシゲだ。

彼はいつもギルド内のソファーでお茶を飲んだくれてるギルドの和やか担当。

(ハンター引退済み)


二人目。

おなじく皺くちゃのよぼよぼ青髪のばあさん、アンコちゃん。

いつも黒いシュワシュワを飲んでいる。ギルドの経費でコーラを飲むのを生業としている。

(ハンター引退済み)


三人目。

ヘッジホッグのギルド長なんだがギャンブル中毒者で俺は会ったことない。

(現在行方不明で捜索中らしい)


そして四人目はこの俺!

ギルド唯一の現役ハンター勇往ゆうおうシュート様だ。(ピチピチ18歳!)


「おっと、忘れちゃいけない。彼女こそ最弱ギルドの看板娘の受付嬢!」

「い、いきなりなによ!?」

「自己紹介をどうぞ」

「え、ええ!? い、いえい。江原セイコ様だぜ?」


恥ずかしながらも、おそるおそる右手をあげて無茶ぶりにも対応してくれるいい女。


「あと、人妻子持ちなので彼氏は募集してません!」


泣いた!

全男性ハンターがむせび泣いた!

いい女ほど隣に男がいるのが世の心理なのだ。


そして、幻の5人目枠の紹介。

受付カウンターで放し飼いにされているハリネズミのキューちゅん。


これが我らがヘッジホッグの全メンバーである。

つまり何がいいたいかと言うと、このギルドは俺が活動をやめたら潰れるのだ。だって、活動してるの俺だけだし。


「どう、現実逃避で少しは楽になった?」

「逆に未来が暗すぎて悲しくなりました」

「……わたし達のこと気にせずにいつでも移籍していいんだからね」

「はは、そんなことできるはずないじゃないですか」


恩義があるとかそういう話じゃない。

俺のスキルが雑魚するぎるからだ。

雑魚すぎて移籍先がない。


ハンターになる人は、スキルという特別な力を持っている。

ほとんどが戦闘に役立つ強力な能力で、ついでにスキル持ちは身体能力も規格外に跳ね上がる。


「セイコさんも俺のスキルとステータスを知ってるでしょう?」


俺のスキルの名前は『韋駄天の心得』。

足の速さを加速する能力。

いわゆる身体強化系。


一見すると悪くない能力だが、ここに俺のステータスが関係する。

ステータスは、国の公共機関で測定することができる。

ゲームみたいな感じじゃなくて、本格的な体力測定で数値化される。


一般人で各項目30前後。

新人ハンターで平均300前後になる。


で、これが俺のステータス。


体力   201

魔力   68

力    35

速さ   220

動体視力 98

思考速度 90


御覧の通りの低ステータス。

これじゃ、韋駄天で加速しても元のスピードが遅すぎて使い物にならない。しかも、加速率も低くて、完全に外れスキルだ。


「どうしてこんなスキルにぃぃ」

「まあまあ元気だしなって。男はステータスじゃない。大切なのは優しさと包容力よ」

「ふっ、人妻だからそんなことがいえるんだ。この底辺の味を感じてみろよ、そんなこといえなくなるぜ?」

「ひねくれすぎじゃない!?」


はあ、とセイコさんが大きな溜息を吐く。


「あのね、このステータスで戦えているシュート君が異常なのよ。ゴブリンをソロで倒すにはそれぞれの数値が350以上が適正よ? なのにこの数値で毎日魔石を納品する君は変態です」

「へへへ、それほどでも」

「褒めてないんだけど!? 一度君が戦う姿見させてもらったけど、いつもギリギリで攻撃よけて曲芸師みたいなスタイルだったわ。あれじゃいつか死ぬわよ?」

「大丈夫ですって、ああ見えて結構余裕あるんで」

「わたしは心配よ。正直、シュート君はハンター以外の道で活躍すればいいと思ってる」

「ははっ、俺にはこの道しかありえません。ハンターとしてどうしてもがあるんでね」


そうつぶやくと、いまは疎遠になってしまった黒髪の幼馴染がチラリと脳裏に浮かぶ。



すると、受付の奥から唐突にチリンチリンと音が鳴る。

これは市から該当エリアにあるギルドに仕事の依頼が届いた知らせだ。


「どんな依頼ですか?」

「えーと、ダンジョンにスライムが大量発生してるみたいね。まあ、緊急じゃないし。行かなくてもいいんじゃない?」

「そんなわけにいかねーだろ!」


「え!?」

「スライムは美味しくお金が稼げるボーナスイベントなんだぜ!」

「シュート君、朝からダンジョンに潜ったのにまたいくの!?」

「俺は金のためならどこへでもいくハンターだ!」

「大きな声で最高にダサいこと言ってない!?」

「昼頃に戻ってきます! キャバ嬢なんかに負けるかぁぁぁぁ!」


そう言って、俺は美味しいスライム狩りに飛び出した。




―――シュートの残高――――



今回の収益  +4875円

貯金残高    120000円

合計      124875円

 


――――――――――――――――――――



すぐに強くなるので、いましばらく弱そうな主人公をお楽しみください。

NTRとかないです。

一途な主人公系ハーレムものです。


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作者のモチベに繋がるので、何卒よろしくお願いいたします。

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