Chapter 032 天使機巧発進
【A班:ノビリス・マイネ班】
大樹を覆っていた透明な障壁が霧散していく。
「行きます!!」
「は~~い!」
ノビリスことロレウは、同じペアのNo48のマイネに声を掛ける。
彼女は明るい返事こそするものの無機質な声色をしていて表情も無い。
この一週間ずっと一緒に、このブイリの森で魔物を狩っていて感じたことは彼女だけまったく成長していない……。
他のメンバーは昨日、一目で明らかに戦闘経験や能力が上がって自信があふれていることを確認できたが、彼女は依然として何も変わっていない。
戦闘中も努力はしているもののどうしても反応が遅く、能力も低い……。
妖精、精霊との交信もあまり上手くできず、すべて中途半端なまま。
だから私につけたのか?
そもそもこの特別指導コースは今後の伸びしろを期待されて選抜されたメンバーのはずなのに……。
伸びしろどころか、彼女の能力値は既に限界を迎えてしまっているのでは無いだろうか?
大樹の根本に到着した。
辺りを見渡すと台座があり、台座には例の黒い玉が置かれていて黒く発光しているのが見える。
周囲を探っても守護者らしき姿は見当たらない。
大樹はその大きさがとてつもない。
外周は高さに比べればそこまで太くないように感じるが直径十メートルくらいはある。
高さに至っては、てっぺんが雲に届きそうな高さだが、なぜか根っこの部分が見えない。
守護者なんて、いなければそれに越したことはない……。
私たちは周囲を警戒しつつ、黒い玉の置かれている台座に静かに近づく。
「──っ!」
異変を感じ、とっさにマイネの腕を取り後方に飛び退く。
『ドォォンッ!』──私たちが今まで立っていた位置に、空から何かが降ってきて地面に激突し、大きな土埃を巻き上げる。
土煙が収まり、半分地中に埋没した空から振ってきた「なにか」が姿を見せる。
それは巨大な “木の実” だった。
これは、この大樹に実っていた木の実が
上を見上げると、次々に落下してくる“木の実”が見て取れた。
次々と地面に降り注ぎ、轟音とともに土煙と大樹の周囲に大量の円形のクレーターが形成されている。
微かな震動とともに足音のような音が聞こえたので、大樹の背面を見ると、文献で見たことのある種族“巨人族”が二人こちらに向かってきている…
なぜ? どうする?
ノビリスはどうしてよいのか戸惑う。
ただでも明らかに木の実は、障壁が解除されて落ちてきたものだ……これで済むはずはない……。
一方で、巨人族がなぜこちらに向かっているのか理由が分からない。
逡巡している間に、最後に特大の三個の木の実が落ちてきた。
これまでと比べものにならない位の強烈な爆風が拡がり吹き飛ばされないよう下半身に力を込め耐える。
風が収まり前方を見ると、巨大な窪地が三個できており、中でも中央の木の実は更にひと廻り大きかった。
『ババババババンッ!』──突然、先に降ってきた木の実が一斉に破裂し、中から人型の何かが姿を現す。
頭部は金属製の仮面をつけていて、手には両手斧、大剣、長柄のパイクという槍に似ている武器の三種類のどれか一つを持っている。
体高は二メートル程度、動きもさほど鈍くない。ざっとみて百体近くいると思われる。
『ドガァッ!』
大樹の裏側では、巨人族の二人が既に実から出てきた“人型の何か”と戦闘を始めている。
どうやら敵ではなさそうだ。
私の横に立っていたマイネが急に
そして、マイネの声ではない機械のような声でしゃべりだした。
「『惑星メラ』ニオケル”世界級災害”ト想定サレル超過戦力ヲ確認……コレヨリ……
え? なに?
うわぁ……この守護者アカンやつでしょ?
この惑星の生態系ぶっ壊すレベル……。
神の箱庭
「マナちゃん出番だよ~、出力はフル……いや、ちょっと待って……やっぱり五割でいいや!」
「は~い!」
「インストール完了! コレヨリ対超過戦力“守護者”殲滅ニ移行シマス」
マイネの目が赤く光っている……人間なの??
私が立ち止まっていると、周囲を大量の守護者に囲まれた。
前にいた一体が様子見のつもりなのか、一体だけ私に突っ込んでくる。
避けつつ手甲により、拳を一瞬で数発、腹に叩き込み相手を真横に吹き飛ばす。が、多少ダメージが残っている様子だが、よろよろと起き上がってきた。結構、タフかも……。
その後方では中央のひと際大きい三つある木の実の殻が割れて、中に潜む守護者が姿を現した。
「ロレウ、今カラ仲間ヲコチラニ呼ビ寄セマス、中央ノ三体ヲコレカラ叩クノデ周囲ハ仲間ト協力シテ倒シテクダサイネ~」
──ッ 私の本当の名前を知っている!?
パチッ
マイネであった「ソレ」が指を鳴らすと近くに円陣ができ、中に他の班のメンバーが現れた。
「ジャア、ヨロシク」
そう告げるとマイネは宙に浮き、そのまま中央の三体に突撃する。
「ノビリス、これはどういう状況?」
「目の前の連中が敵で、大樹の後ろの巨人族は仲間……マイネが中央の三体やるから残りの雑魚を私達が片づけないといけない状況です」
ヴァン様……ミラーに質問され、手短に説明する。
「わかった。皆、油断するなよ」
ミラーがそう言うと守護者達迎撃のため、周囲の者も素早く陣形を作り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます