Chapter 029 副作用がヤバい……


 ブイリの森に入って、一週間が経過した。


 ミラーは、プリンスとともに森の魔物退治へと繰り出したが、最初は一緒にはいるものの互いに勝手に魔物を倒していたが、それも森の奥に進むまでの話だった。


 段々と強い魔物が出始め、単独だと、少々危うい場面も出始めたため、徐々に互いに連携を取り始めるようになり、実戦による濃厚な戦闘を重ね、今ではすっかり息のあったコンビへと仕上がった。


「ブラザー! そろそろ本拠地に戻らないかい?」


「あぁ、プリンス! 俺も今そう考えていたところだ!!」


 一週間前は互いに嫌悪していた間柄であったが、今は戦友マブダチの関係にある。


 しかし、この一週間、恐ろしく過酷だった。

 だが乗り切れてしまう……いや、

 手渡されたキズナオールとイメージビタミンVだが、怪我をしても飲んだらすぐ治るわ、想力が切れそうになってもすぐ満タンになってしまう……。


 それは良いことなんだが、副作用なのかHP回復薬キズナオールの方は、滋養強壮効果で疲れを感じなくなり、休憩が必要なくなったことや、想力回復薬イメージビタミンVの方は睡眠無効の効果が含まれ、その効果がえげつなく、二十四時間寝なくても大丈夫な身体になってしまった。


(──なーんか、あとで反動が一気にきそうだけど……)



 その結果、一週間二十四時間、飲食等以外はずっと魔物を狩り続けることになった。

 まあ、そのお陰で、一週間前とは見違えたようにステータスが急成長したと思う(二人とも【鑑定】持ちじゃないから見れないけど)


 本当は五日目あたりで腕輪が光を帯び、森の入り口に設営したベースキャンプに戻るタイミングのお知らせがあったが、せっかくの強くなれる機会なのでそのまま七日目まで魔物を狩り続けた。


(面倒臭がりの俺をここまで変えるとは何か違う成分が含まれていたやもしれない……)


 俺たち二人が入口の基地に戻った時には、もう残る他のメンバー全員が揃っていた。


 皆、出発前より精悍な顔つきになった……? 

 あれ……? 

 頬は痩せこけ、目の下にくまができていて青白い顔色だ……なんか健康的に見えない……。

 ふと、プリンスを見ると彼も同じような感じだ……。

 毎日一緒だったので変化に気が付かなかった。

 もしかして、俺もか?


 おそらく、あの特殊な回復薬ポーションのせいだろう……。

 闇市で取り扱う怪しい薬を飲んだような気分だ……。


 聞くところによると、このうちの何人かは例の〝安全圏生成陣セーブポイント〟のお世話になったようだ……。

 あまり無茶はしてほしくない。


 全員、夕食を済ませ、ポータブルシャワーで体の汚れを洗い流し、新調した肌着や下着と新品の武具、防具を身に纏い、その日は基地の中で十分な睡眠を取った。


 翌日の朝、巻物を開き、初代学院長から初日に一応、話のあった本題について再度具体的な説明を受ける。


 <その1>ブイリの森に巣くう特定の魔物の討伐

 “四凶”と呼ばれるこの世界に存在してはならない魔物とのことで、ここ数か月で存在を一部確認されたと噂には聞いていたが四体もいたとは驚きだ……。

 ブイリの森中央にそびえ立つ大樹を囲うように四方に配置された四つの塔にそれぞれ鎮座しているとのことでそれを討伐する。


 <その2>「白い玉」をある場所に納める

 四凶を倒すと、中央の大樹を覆っている透明な障壁が解除されるので、大樹の根本にある黒い玉を取って、白い玉を替わりにおく、障壁が解除されるのは時間が限られているため、四凶をほぼ同時に討伐し、障壁解除後にすぐに別班が大樹の根本に向かう必要がある。


 ちなみに大樹の根元の玉が置かれている台のそばには“守護者”と呼ばれる存在がいるはずだから気をつけるようにとのこと。


 なるほど、それで五組必要だったわけか…


 だが、そうそううまく四組ともそれぞれ四凶を倒せるのか?

 どっかの班が、倒せなかったり、イレギュラーが起きたらすぐにつまづいてしまいそうな危うさがある。


 それならもっと人出を増やせば良かったのに……。


 はい!!ここで優等生のローズさんが思ってたことを質問してくれた。

 ローズさん本当にこういう時、助かる。


 初代学院長の答えはこうだ。


「え? そんなことしたらおもしろ……じゃなく、うぉっほん! お前たちの試練にはならんでやんす」


 おもしろ……? え? なに? 

 あと途中で「やんす」口調に変わった。

 そもそもそういうしゃべり方とは違うだろ?

 ってか「やんす」って口調はなんだ?


 色々とツッコミを入れたいところだが、なぜか今の説明でローズさんは納得してしまった。


「それに腕輪が光った時点でステータスは充分である証じゃから問題ない」


 なんだ……先にそれを言えばいいのに……。


 討伐先は俺たちが決めていいとの話なので、皆で四凶の情報を元に班をどこに割り当てるかを決めるため、各々の今の能力を情報共有、確認を行った。


【A班】

 No1ノビリス(ロレウ)[手甲、具足による格闘、強化系【瞬動】、エネルギー系【雷球】]

 No48マイネ[武器なし、自然魔法系【交信】]

 →現時点詳細不明の守護者へ


【B班】 

 No2[細剣、特殊系【具現】]

 No18シャワー[エネルギー系【水弾】、【水蛇】]

 →渾沌こんとん


【C班】

 No4タワー[金棒、強化系【剛力】【剛身】]

 No22シュート[エネルギー系スキル【鉄】、特殊系【指弾】]

 →とうごつ


【D班】

 No5オニギリ[刀、エネルギー系【火箭】]

 No9ドクター[爆薬、特殊系【鑑定】、特殊系【錬金】]

 →窮奇きゅうき


【E班】

 No3プリンス[片手剣、エネルギー系【幻霧】]

 No8ミラー(ヴァン)[戦杖、強化系【思考加速】、特殊系【分身】

 →饕餮とうてつ



 よし……こんなもんかな?

 今、想定できる範囲で、もっとも多少のイレギュラーにも対応できるよう柔軟な布陣を検討し終えた。



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