Chapter 027 特別指導コース?


「たまたま」相手が逆上したところを勝ちを拾えたってことで、オーダーはクリアしてるということで、大丈夫だよな?


 俺は初代学院長に視線をやると少し顔を伏せて小刻みに揺れている。


 あれ? なんか必死に笑いを堪えてる人のポーズに見えるんだけど? それから何組かの対戦の後、一年No1のノビリス対一年No2ローズの対戦が始まった。


 おいおい大丈夫か……。まさか血を見たりしないだろうなぁ?


 ノビリスは近接、遠距離両方こなせるオールラウンダーで、シャワーは、No18で遠距離型でエネルギー系スキル【水弾】【水蛇】の二種を使って援護に回っている。


 もう一人の学友は行動支援系だが、そもそもかなり動きが遅い。

 二人でいつも行動しているが、いつも二人……今回三人一組ルールで、あぶれてしまった子に間に合わせでチームに入ってもらったようだ。


 対するローズチームはNo2を筆頭に、残りの二人とも十位台の上位と主力以外の戦力差が大きい。


 しかし、そんな俺の心配をよそにノビリスチームの一方的な勝利だった。

 相手もほぼ同じ構成で近接型のローズさんと支援、遠距離系だが、まず、ローズとノビリスでは格闘センス、実践経験があまりにもかけ離れていた。


 ローズは、想力エネルギーを物質化する特殊系スキル【具現】で、彼女の得意としているレイピアを作り、挑むも“想力を使用しない状態”のノビリスに軽々とレイピアを躱され、一瞬で制圧される。


 残る二人の移動阻害や遠距離攻撃もかわし、ほぼ一呼吸の間にやや固まっていた二人を、突き飛ばし転がせたところで決着がついた。



 いやぁ、ノビリスって強いなとは思ってはいたけど、まさか、あそこまで他の人と実力に差があるなんて……。

 少しくらい加減を覚えた方がよさそうだ。


 学院長を見るとなにやら、うんうんと頻りに頷いている。

 なーんか違和感が……。


 あとはNo4の通称タワーやNo5の通称オニギリくらいの動きがやはりひと際目立っていた。


 まあなんだ。

 本当はローズとプリンスも本当はもっとアピールできただろうに。

 相手を選ばなければ……。


 十組五試合の模擬戦が終了したところで、初代学院長が席を立ち、何やら紙を実技担当教師に渡して、いきなりパッと消えた。


 文献で読んだことがあるが、恩恵ギフトスキル八福シリーズの【空間転移テレポート】だ。初めて見た。やはり、本物なんだろうな。


「え~今、初代学院長から教育方針書を受け取った。これによると『特別指導コースにこれから伝える番号のものを推薦する』と書かれている。じゃあこれから番号を言うぞ」


 なんだ特別指導コースって? 

 初耳なんだが絶対その中に俺は入ってくるだろうな……。

 初代学院長、さっきわざわざ俺を名指ししてきたからな……うわーっ、ほらやっぱり!!


 番号を呼ばれたのは、No1~No5、No8、No9、No18、No22、No48の十人だった。


 ちなみに教授達の中では今年の一年は粒揃いで特に五位以内の五人を?スーパールーキー5?と呼んでいると聞いたことがある。

 良かった~。俺入ってなくて……。 


 ニックネームに読み替えると。


 No1=ノビリス=ロレウ

 No2=ローズ

 No3=プリンス

 No4=タワー

 No5=オニギリ

 No8=ミラー……ヴァン、俺のこと。

 No9=ドクター

 No18=シャワ―

 No22=シュート ←自称はシューティング・スター

 No48? あのノビリスチームに間に合わせで組んだ子か……ニックネームは分からない……。


 なんだろう。どういう基準で選んだんだ? 

 上位五人はわかるとして、第九番のドクターやNo18のシャワーさんやシュート……。

 特に第四十八番より、動きや想力が高かったのは他にいたのだが……。


「ちなみに現学院長からの指示なんだが、初代の言うことはすべて聞くようにと俺たち教授、教師陣は指示を受けている。


「推薦と書かれているが個人で辞退する意思がある以外は基本、特別指導コースに行ってもらうことになるはずだ……。まあ現学院長にこの後、報告にいくからまた連絡する。以上、解散!


 






 いやー、初代学院長ザ・ナートのボディで色々動けて助かるわー。


 天使マナが作って、ロンメル高等技術学院の地下に保管しておいた自動人形を操作した後に女神サクヤは素直に感想を漏らした。


「マナちゃん、コレザ・ナート君しばらく使っていいかな?」

「はーい、主様、大丈夫ですよー、ハイスペックに仕上げたので街一つくらい、灰にできますよー」

「いやいや……、街を灰にしてはいかんでしょ!! 私、仮にも?善神?なんだから!!」 

「そうなんですかー? 主様って善神だったんですね~、いつも一人でモニター観て、不気味な笑いを浮かべているので意外です~」


 別に悪気のなさそうな顔で結構傷つくことを言ってくる。

 見るとアラネルはこちらの会話に気づいてないフリをして、自分の席の画面に顔をくっつけている。


 ほう……。

 そういう風に思われてたんだ、私って……。


 天使マナは性格がフワフワしていて、正直、あまり何も考えてなさそうな雰囲気を出している。


 そうすると、一つの疑問が私の頭によぎる。


「ところで、なんで魔物は絶対許さないんだっけ? 教典に書いたんでしょ? 浄化担当の天使だからかな?」

「いいえ~、私は書いてないですよ~、私が作った自動人形たちが、私のインプットに応じて色々やったんだと思います~」

「ちなみになんて設定したの?」

「えーと、確か……『魔物倒してねっ』って入力しました……」


 ほう、私も雑だが、この子もかなり雑だなぁ……。


 さて、ロンメル高等技術学院にマナちゃんの人形……ザ・ナートが置いてあったから、起動したら、すぐ近くに【隠】高ステータス反応が出たからみてみたらあらまぁなんと! 豊作、豊作!! ……二人もいるなんてね。


 学院の中じゃ、温すぎて流石に当面、覚醒なんて普通しないでしょ。

 普通はね、普通は……ぐふふふっ!!


 ちょっと悪そうな顔をしたサクヤを見て、天使マナはやっぱり主は本当は邪神の類なのかな? と思ったが口にしなかった。


「んじゃ……初代機ザ・ナート行きます!! ポチっとな」



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