第23話 誰かのためにできること

「私に何ができるのだろう?」

そんなことを考える時間が増えた。両親のため、自分のため、そして友人や周囲の人たちのために、何か役に立てることがあるのだろうかと。だけど、すぐに「私には何もできない」という気持ちが頭をもたげてくる。


両親の病気や経済的不安、自分自身の障害――これらを抱えていると、「支えられる側でいるしかない」という感覚に囚われてしまうことがある。それが、自分をどれだけ無力に感じさせてきたことか。


でも、ある日気づいた。誰かのためにできることは、大きなことではなくてもいいのだ、と。


その気づきのきっかけは、ある友人とのやりとりだった。私が悩みを打ち明けたとき、その友人はただ黙って話を聞いてくれた。そして最後に「ありがとう、話してくれて嬉しいよ」と言ったのだ。


その言葉に驚いた。「聞いてくれたのは友人なのに、どうして私が感謝されるのだろう?」と思った。でも、ふと考えた。「私が話すことで、友人が私を信頼してくれていると感じたのかもしれない」と。


その瞬間、誰かのためにできることは「何かをしてあげる」だけではないと気づいた。存在すること、話すこと、心を通わせること。それだけでも十分、誰かを支えることになるのだと。


それから、私は自分なりに「誰かのためにできること」を探してみるようになった。たとえば、両親に「ありがとう」と伝えること。友人に「最近どう?」と気軽に声をかけること。相手が元気でいられるように、小さな気遣いを意識してみること。それは、特別なことではなく、日々の中でできるほんの些細な行動だ。


そして、気づいたことがもう一つある。それは「誰かのために何かをすることが、結果的に自分の力にもなる」ということだ。感謝の言葉をもらったり、笑顔を見たりすると、私自身が少しだけ救われる。誰かのための行動が、自分の存在意義を感じさせてくれるのだ。


「私に何ができるのだろう?」という問いの答えは、まだ完全には見つかっていない。それでも、日々の中で少しずつ行動することで、私はその答えに近づいている気がする。


大きなことはできなくても、小さな思いやりを重ねることで、私も誰かの支えになれる。それは、自分自身を支える力にもなる。


今日もまた、誰かのためにできる小さな一歩を探してみようと思う。それが、私の心を温め、未来を明るくする一つの方法だから。

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