第10話 希望のかけらを探して
最近、空を見上げることが増えた。雲の形や青さの移り変わりをぼんやり眺めていると、心のざわめきが少しだけ静まる気がする。以前はそんな余裕さえなかったのに、どうしてだろう――ふと、自分が変わり始めていることに気がつく。
両親の病気や将来への不安は、相変わらず私の中に大きな影を落としている。経済的な問題、介護への恐れ、自分の障害に向き合う日々。これらの問題が一度に消えることはないし、時折押しつぶされそうになる。それでも、最近私は小さな「希望のかけら」を見つけることができるようになってきた気がする。
その「希望のかけら」は、大きなものではない。友人と笑い合ったひととき、福祉窓口で親切に話を聞いてくれた相談員の言葉、近所を散歩中に見つけた季節の花――そんな些細な瞬間が、私に「まだ大丈夫」と思わせてくれる。
以前の私は、日々の小さな幸せや喜びに目を向ける余裕がなかった。それは、自分の置かれている状況があまりにも重たく感じられたからだと思う。でも今は、その小さな瞬間が私にとってかけがえのない「支え」になっている。
最近、両親と未来について少しだけ話すことができた。お互いに遠慮して避けてきた話題だったが、意を決して切り出してみたのだ。「将来、どうするのが一番良いんだろうね」と言う私に、母は「みんなで少しずつ考えればいいよ」と答えた。
その言葉を聞いて、私は「一人で全部抱えなくていいんだ」と初めて実感した。私が少しでも未来を明るくしようと努力しているように、両親もまた私を支えようとしてくれている。その事実が、心に小さな温もりをもたらしてくれた。
「希望のかけら」を集める作業は、まだ始まったばかりだ。これからも、不安や葛藤が私を苦しめるだろう。でも、その中で小さな幸せや安心を見つけることで、少しずつ前に進めるような気がしている。
未来はまだ見えない。答えも出せていない。それでも、私はこの瞬間に感じる希望を大切にしたいと思う。それが、私にとっての「今を生きる力」になるから。
今日もまた、空を見上げる。青い空に、私の希望のかけらがどこかに浮かんでいるような気がして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます