わたしと帝都の陰陽師  ~は? あやかし? そんなのいるわけ……なのに出たァッ!~

渡森ヨイク

第0話 あやかしなんて、いるわけないと思っていました

 ……ちゃぽん。


 背後で小さな水音がした。

 たぶん、こいねただけ。

 怖がることなどなんにもないのに、身体からだが動かなくなっていた。自然と呼吸が浅くなり、指一本すら動かせない。

 う、うそでしょ? これが俗に言う金縛かなしばり⁉

 あせるわたしはある怪談を思い出す。


『人けのない真夜中、ひとりで不忍池しのばずのいけに行くと、あやかしに襲われる……』


 いやいや、文明開化の進んだ現代、そんなのあるわけないじゃないの!

 

 ——なのに。


「ほう? 今宵こよい女子おなごか」


 背後からわたしを抱きしめたのは、人ならざる者の、びしょ濡れの手だった……。

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