あの娘の長い黒髪が靡く。

ましまろのきもち

第1話

僕は恋をした。


その娘は赤い口紅を塗って、アイシャドウを入れ、艶のある綺麗な長い黒髪を靡かせながら僕の横を通りすがった。


あまりの美しさについつい後ろを振り返ってしまった。


よく見ると彼女は膝近くまであるピカピカの長いブーツを履いて、ショートスカートを履き、まるでハリウッド女優のような色気やオーラがそこにはあった。


僕は完全にその美貌っぷりに虜になってしまった。


これが一目惚れってやつか、、、


この16年という人生で初めてそれを体験した。




僕にはこれまで恋愛という恋愛をしたことがなかった。


それは相手に好かれるということだけではない。


相手を好きになることすらなかったのだ。


なぜ好きな人ですら作れなかったのかはわからない。


周りでは次々とカップルが誕生していた。


お互いに真面目な人同士だったり、学校をバックれるような不良同士だったり、一周回って真逆の性格の人同士のカップルもいた。


その光景を目にした僕は羨ましくて仕方がなかった。


僕だってこんな恋をしてみたい。


最高に可愛くて、優しくて、気遣いができる最高の彼女を作って、自慢しまくって、デートで色々なとこ行って、最高の青春を過ごしたい!


そう毎日のように思った。


しかし現実はそう甘くはなかった。


次々にできていくカップルは大抵イケメンか可愛い人だった。


そして明らかにモテなさそうな容姿の人たちは彼氏彼女ができることはなく、可哀想な人扱いを受ける余物同然の人たちなのだ。


男は気遣い、女は優しさとか言ってるけど、結局顔かよ!!


僕はひどく落胆した。


大体かっこいい人は二重だな、、顎がシュッとしてるな、、

キリッとした目を持ってるな、、、、女子ウケ抜群の髪型だな、、


そうして自分と比較すると自分の姿が見るに耐えなかった。


一重だし、太ってるわけじゃないけど顎はシュッとはしてないし、若干垂れ目だし、髪型もイカしてるわけでもないし、、


もう自分じゃどうすればいいかわからなくなった。


クラスではたまにではあったが誰がイケメンか!誰が可愛いか!!

みたいな話題になることがあった。


大抵挙げられる人たちは彼氏彼女がいて、幸せそうな人ばかりだった。


半分寝ながらその話を聞いていると、とある女子が小声で


「ひなた君って、なんかさ、こうパッとしないというかさ、絶対モテないよね、、隠キャみたいだし、なんかキモいし、、」


と言っているのが聞こえた。


聞こえないふりをしたが、内心は泣いていた。


わざわざ口に出さないでよ、、


モテないことは重々自分でも自覚はしていた。


しかしそれを他人から言われるというのはまさにオーバーキルである。


やっぱこのまま高校生活、一度も彼女が作れないまま寂しく終わっちゃうのかな、、


大袈裟と考える人もいるかもしれないが、僕的には大袈裟でもなんでもなかった。




そんな日の放課後、トボトボとクラスの女子に言われたことを引きずりながら歩いていた時のこと。


前からあの長い黒髪の娘がやってきたのだった。

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あの娘の長い黒髪が靡く。 ましまろのきもち @mashimaronokimochi

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