第29話 焼き肉食べたい

「チクショウ。ゴリTめ。げーじゅつが分からないヤツだ」


 帰りのスクールバス内で、大和がぼやいた。

 俺たちは反省文をおかわりするハメなって、すっかり遅くなってしまった。


「最終のバスに乗れて良かったっす。最悪、遠いポータルから歩いて帰るところだったっす」


 天空学園は空に浮いているから、空飛ぶスクールバスが出ている。

 当然、その運行時間に限りがある。

 今日は下校時刻ギリギリまでいたので、最終便で帰ることになったのだ。


 部活動終わりの生徒は前の便までで帰ったらしく、俺たち以外にはほとんど人が乗っていないバスだった。

 俺たちは席の後ろの方で集まって乗る。

 女子たちを座らせて、男三人はつり革で持って立った。


「遅くなっちまったから、ここから作るの面倒だな。どっかで食ってから帰るか?」


 俺はエリーゼたちに提案する。


「良いわね。ダーリン。回転寿司行きたいわ」


 ふーむ寿司か。

 それはアリだな。


「賛成ですエリーゼ様。マグロ、ハマチ、タコ、イカ。考えただけでお腹が減ってきました」


 ライラはすでに、あれやこれやと思いを巡らせているようだ。


「クリキチはどうする?」


「アタシも寿司で良いっすよ」


 じゃあ回転寿司で決まりだな。

 ライラがどんだけ食うか分からないが、食費が向こう持ちなので気にしない。


「じゃあ寿司食いに行こう」


 今日の晩飯が決まって良かった。


「寿司も良いけど。俺は焼き肉が食いてぇ。なぁ薫瑠」


 大和が薫瑠に話をふった。


「焼き肉か。子供の頃はよく大和の家でやったよね」


 薫瑠は懐かしむように言う。

 そしてふと思いついたように手を叩いた。


「そうだ! 大和、桜雅へのお礼は焼き肉パーティにしない?」


「う~ん? 焼き肉パーティか」


 大和は薫瑠の提案を考える。

 ややあって結論が出たようだ。

 ふんふんと頷いて言う。


「ぱーっと肉食うのも悪くねーな。そうしよう」


「なんだ、なんだ。何の話だ」


 俺は彼に尋ねた。

 すると大和は照れくさそうな顔をした。


「まぁ。その、なんだ。俺の事を助けてくれたからな。礼に肉をごちそうするぜ」


 なんと、龍胆大和が鬼咲桜雅に肉を奢るなんて。

 原作違いも甚だしい。


 とはいえ、ここで拒否るのも桜雅さんらしくない。

 肉が食べられるなら、桜雅さんはたぶん行く。

 それにみんなで同じ食卓を囲めば、大和のハーレムフラグも立つか?


「良いぜ。ただし俺だけじゃなく、エリーゼたちにも奢れよ」


 俺はエリーゼたちを示した。


「当たり前だ。命懸けて助けてくれたんだ。みんなでぱーっと肉食べようぜ」


 大和は楽しそうに笑う。


「それは面白そうね! 日取りはいつかしら?」


 エリーゼも食いついてきた。


「今度の日曜日の夜でどーよ? 店じゃなくてウチの離れでやろう」


 ほーう。大和の家とな。

 それは色々消えたフラグを、別の形で立てられるんじゃなかろうか。


「いいぜ。日曜なら空いている」


「私たちも大丈夫よ」


 俺たちは了承する。

 薫瑠が提案した。


「ねぇ大和、それなら食材を持ち寄るのもいいかもね」


「ああ、薫瑠。それはそうした方が良い。このゴリラが死ぬほど食うからな」


 俺はライラを指さした。


「誰がゴリラだ! バカ者」


 ライラに座ったままゴツッと殴ってきた。

 いやそういう所だぞ。


「そうねぇ。ライラのためにも持っていかないとね」


「エリーゼ様、私だって人様のお家じゃ我慢しますよ!」


 我慢するだけで、きっと腹が減る事には変わりないんだよな。

 俺は色々と仕込んで持っていく事に決めた。


「パーッとしたパーティなんだ。遠慮せず食えるように準備しよう。タレに漬け込んだ肉とか、持っていくぜ」


「桜雅さんの料理! これは当日はお腹空かせていく方が吉っすね」


 クリキチはキラキラした目で口元を拭っていた。

 さてはヨダレ垂らしたな。


「んじゃ、そういう事で、焼き肉パーティ決定だぜ」


 大和が締めて決定した。


 ■□■□


 そしてあっと言う間に時間が過ぎ。

 焼き肉パーティ当日の夕方。

 俺たちは龍胆家にやって来た。


「ここが大和の家なのね!」


 エリーゼが目の前の門を見た。


「大きな家っすねー」


 日本家屋の大きな屋敷だ。

 敷地は白壁で囲まれており、壁の向こう側にデカい家が見えた。


 ゲームの設定資料集によると、龍胆家は室町時代から続く古い家だそうだ。

 魔法がまだ世界に知れ渡っていない古来から、魔法を使う一族として生きてきたらしい。


 ゲームではこの大きく広い家にエリーゼは押しかけてきて、一つ屋根の下、大和と暮らすのだ。

 どんなハプニングやイベントがあるかは、おおむね俺が身をもって体験した感じだと思ってくれていい。


 ゲームでも印象深い場所を訪れることが出来て、俺はドキドキした。

 桜雅さんはここに来ることはないので、正直諦めていたが、何があるか分からないものだ。


 焼き肉パーティのついでに聖地巡礼できるとはな。

 俺が軽く感動していると、後ろにいたライラが緊張した面持ちで言う。


「ここにあの剣聖がおられるのか……!」


 ああ、そうか。

 本来ならここに押しかけた時に消化してるはずだが、俺の方に来ていたからな。

 ライラのイベントがまだだったか。


「門前で突っ立てても仕方ない。ちと早いが、ピンポーン!」


 俺はインターホンを鳴らした。


『おう、来たか。入れよ。薫瑠はもう来てるぜ』


 木造りの門が遠隔で開いた。


「それじゃ、龍胆家にお邪魔しまーす!」


 俺はテンション高めに門をくぐるのだった。


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今日からしばらく一挙2話更新です。

28話目からお読みください。


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