第28話 反省文の書き方

 大和との激闘から三日後。

 天空学園二年一組の教室で。


「…………」


 俺は黙々と反省文を書いていた。

 他にもエリーゼ、クリキチ、ライラ、薫瑠、そして大和が同じように反省文を書いている。


 あれから俺たちは思いっきり怒られた。

 まぁそりゃそうだろう。


 禁止されている生身での決闘に加えて、第三決闘広場は穴ボコだらけのボロボロ。

 やらかした俺たちは、仲良く生徒指導のゴリTこと、後藤先生に説教をくらい、反省文提出を言い渡された。


 正直、停学処分くらいはあるかなぁっと思ったが。

 龍胆家の人たちが、大和を助けるためにやったことだから、厳しい処分はしないように申し伝えてくれたのだ。


 当の本人は、あれ以来、上手くコントロール出来るようになったらしく、現在は使いこなせるように鍛錬を始めたということだ。


 やはりあの黒い球が邪魔していたようだ。

 あれは何だったんだろうな。


 サンプルを残せるなら残したかったが、どう考えても物騒なシロモノだから、消えて良かっただろう。


「……以後、気をつけて行動します。大変申し訳ございませんでした。っと」


 俺は反省文を書き上げた。

 まぁこんなもんだろう。


「え、ダーリンもうできたの? 凄い!」


「いやこんなの適当に『コレコレの事に対して経緯はこうで、もう少しやり方があったと感じます。以後は気をつけるのでごめんなさい』のフォーマットで書けばすぐだろ」


 エリーゼは留学生だが、日本語がペラペラ、スラスラだから、反省文を書くのに苦労しているわけではないはずだ。

 何を悩んでるやら。


「だって私、悪いと思ってないし、反省する事ないと思ってるもの。自殺を決意してた大和を助けるために、みんな命を懸けたわけでしょ? 誇ることはあっても怒られる事はないと思うの」


 なるほどなぁ。真実を知っている者からすればそうだろうけど。

 あと、何気に彼を呼ぶ呼び方が下の名前になっている。

 いい傾向だ。そのまま推し変してくれ。


「ま、実際はそうでも、周りに示すためには一応、指導しないとダメだろうからよ。適当にでっち上げちまえよ。なぁ大和」


 俺は原因を作った当事者に話を振った。

 俺もなんだかんだ龍胆って呼ぶより、下の名前で呼ぶようになっていた。


「おう。そうだな。バーっと書いて、ごめんなさいで締めりゃ教師共も溜飲下がるだろうぜ」


 大和も適当に書いたのか、すでにペンを置いて、魔力を練る練習をしていた。

 ねりねりびよーんとコネて遊んでいる。

 なんか楽しそうだ。


「なんだよそれ。面白そうだな。俺にも教えろよ、大和」


「いいぜ。ここをこうして、魔力をこうして、練り上げる感じだな」


 なるほど。なるほど。

 俺と大和はしばらくびよーん、びよーんと引き伸ばして遊ぶ。


「ほれ、ストリングスプレイ・スパイダーベイベーってな」


 俺は魔力を蜘蛛の巣みたいに編んで、蜘蛛の人形を上下させる。


「やるじゃねぇか。なら俺はギャラクシー・ネット!」


 大和は、ババっと魔力組んで複雑な網目にした。


「ほぉ。やるな、大和。ならばこれでどうだ!(シュバババッ)」


「くっ。さすがだぜ、桜雅。けど負けねぇ(ズダダダッ)」


 とまぁ謎の勝負をすること三回。

 ふと視線を感じてそちらを見ると、女子四人(一名、女性に変化)が生暖かい目をしてヒソヒソ話していた。


「やっぱ大和と桜雅って仲いいよね」


「くっ。まさか恋敵が大和になるなんて強敵ね」


「心の中で通じ合った仲っすからね。面構えが違うっす」


「大和がそれとなく誘ってからの、興味を持った桜雅が近づく流れ。やはり大和✕桜雅だな」


 なんかエラい事言ってる。


「おい。ちょっと待て。俺と大和はライバルであって、敵同士。決して仲が良いわけじゃない」


 俺はすぐさま彼女たちの誤解を解きにいく。

 大和も大きく頷いた。


「そのとおりだ。俺はコイツとは殺し合う仲だぞ。あとライラぁ! ナマモノを本人の前で言うんじゃねぇよ。」


「いや微妙にツッコミどころがズレてんぞ。大和」


 隠れて想像は自由ですって、言外に認めてるようなもんだぞ。それ。

 薫瑠が男性に変化して言う。


「でも二人とも僕より仲が良い気がするんだよなぁ。ちょっと嫉妬しちゃうね」


 薫瑠がむーっと可愛く睨む。

 俺は露骨に嫌そうな顔をした。


「わざわざ男に変化して言うなよな。ほら見ろよ、アイツら『新しい組み合わせだぁ』ってキラキラしてるぞ、オイ」


「自分から燃料投下するんじゃねーよ。バ薫瑠」


 大和も呆れるように抗議する。


「あー! バカって酷い。なら二人はこういうの出来るのかい?」


 ギュイーンと魔力を練って、表現したのは綺麗な蝶々だった。


「なん、だと……! なんて繊細な魔力コントロールだ」


 俺は戦慄した。


「やるじゃねぇか。薫瑠! 桜雅、合体技で対抗すんぞぉ!」


「応! 合わせろ、大和!」


 俺たちは魔力を練り合わせ始める。


「ほらー! やっぱ仲がいいじゃない。私も混ぜなさいよ!」


「アタシもやるっすー!」


 エリーゼとクリキチが参戦してきた。


「あ! エリーゼ様。反省文ちゃんと書かないと王族としての立場が」


「固いこと言わないの。ライラ、貴方も手伝いなさい」


 もはや反省文を書く雰囲気ではなく。

 俺たちは魔力を練って、造形物を表現するバトルを開始する。


 それはゴリTが様子を見に来るまで続き、最終的に全員怒られて、追加の反省文書くハメになるのだった。



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近況ノートに書きましたが、本日より一挙二話投稿いたします。

二話目は一時間後に投稿いたします。


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