第14話 押しかけるヒロインたち
家に帰って俺は急いで飯を作って食べながら、今後の事を練る。
龍胆大和は龍属性を制御できない。
この事実は非常にまずいのだ。
俺が目指す理想のゴールにたどり着く前に人類が絶滅する。
学ストの各ルートには、それぞれに敗北エンドが存在する。
どれもこれも世界が滅んだり、人類が絶滅したり、とにかく厄介な展開だ。
エリーゼルートの敗北エンドは人類の絶滅。
ルートボスである【混沌の欠片】の一片「深祖の吸血鬼」ググラガ。
龍胆大和が巻き込まれて、桜雅さんも巻き込まれたらしいあの「惨血事件」の首謀者である。
「アレを倒すにはどうしても龍属性が必要だ」
なにせ俺が目指すハーレムルートにたどり着くには、俺はググラガ側に寝返る必要がある。
だから俺じゃ倒せない。
俺が知るシナリオ通り、龍胆大和が倒さなければいけない。
「となると、俺が大和と戦って龍属性をコントロールできるようにすればいい」
俺の概念魔法「奪う」を使って、「コントロールできない」という事実を奪ってしまえばいい。
理論上は可能なはずだ。
難しくても、少しでもその事実を削れたら、龍胆大和ならコントロールできるようになる。
だって俺は、彼が自在に龍属性を使って戦っている姿を知っているのだから。
ゲームと違う世界であろうと、きっとこの事実は変わらないはずだ。
「ははは。焦りすぎて希望的観測になってるなぁ」
俺は寝転んだ。
「はぁ。当たって砕けろだな。やってみて失敗したなら次を考えればいい」
差し当たって、まずは龍胆大和との決闘を成立させることが重要だ。
出来ればエリーゼもその決闘に同席させたい。
そこで大和とのフラグが立つかもしれない。
エリーゼが彼に抱いているマイナスな印象を、この決闘で払しょくさせたいところだ。
「よし。まずは薫瑠に相談しよう。アイツは昔の大和に戻ってもらいたいと思っている。アイツと画策して決闘まで持ち込めば、後は流れで何とかする」
勝負は水物。
細かく決めたところで、どうなるかなんてわからんからな。
今日の俺のように。
「それにしても、大丈夫だろうか」
物語では彼女が大和に惚れて、無理やり家に押しかけて同棲生活が始まるのだ。
つまり俺が勝ったため、俺の家に押しかけてこないだろうか。
「いやぁ、ここマンションだし。押しかけは無理だろう」
ちなみに大和の家は大きな豪邸だ。
意外と彼はボンボンである。
「さてハーレムルートに行くためにも、大和には頑張ってもらわないとな」
今日は色々あって疲れたのでさっさと寝ることにした。
■□■□
翌日。
今日は土曜日で学校がお休みである。
お隣の部屋の人が引っ越すらしく、ちょっと外がガヤガヤしていた。
まぁそんな事より、俺は目の前にいる女子に話しかけた。
「で、なんでお前は俺の家に来てるんだ。クリキチ」
「そりゃあ、アタシは桜雅さんの相棒にして奥さんNo.2っすからね。当然、来るっす」
朝からやって来て、俺の家で宿題やってるんだよな。コイツ。
というか、彼女(予定)から奥さんに格上げされとる。
「なんだ、その奥さんNo.って。俺はお前を嫁にした覚えはねぇぞ」
いや只野安尋としては、だいぶ嬉しいけどね。
それでもシナリオのために、ここは心を鬼にして拒絶する。
「そんな冷たい事言わないでください。アタシは桜雅さんに助けられて一生ついていくって決めてんすから。責任取るためにも結婚してくださいっす」
グイグイ来るなぁ。
原作じゃもうちょっと奥ゆかしかったぞ。
「お前、誰に何を吹き込まれた」
「それは協定により言えないっす。ただ、アタシもう遠慮しない事にしたっす。うかうかしてると桜雅さん誰かのモノになりそうだし」
なるほど。俺がエリーゼを追っかけてたから、ヤキモチがMAXになって行動することにしたと。
うーん。まぁ良いか。
どうせ、俺が悪行を行えば、そのうち彼女は愛想を尽かす。
クリキチルートやハーレムルートじゃ、そうなる運命だからな。
適当にあしらって、愛想を尽かすまで待つか。
「はぁ。俺はお前を嫁にするつもりはねぇぞ。俺じゃなくてとっとと別の男を見つけろ。可愛いんだから」
「えへへへ。可愛いっすか? なら桜雅さん以上の良い男はいないっすよ」
しまった。ちょっとコミュニケーションをミスった。
蕩けた顔になってらっしゃる。
「にやけて気持ちわりぃな。おい、そこ計算間違ってるぞ」
「え!? あ、ほんとだ。桜雅さんが勉強できるなんて信じられないっす」
驚き方がいちいち失礼なヤツだ。
「お前がバカなだけだろが。はぁ宿題終わって昼飯食べたら帰れよ」
「えー? 今日は親に友達の家に泊まるって言ってきたっす」
「泊まる気満々か! 夜になったら放り出すから覚悟しろクリキチ!」
彼女が遠慮を捨てると、こうなるのか。
俺はクリキチの新たな魅力を知れて、ちょっと嬉しかった。
んで、その日の夕方。
結局、クリキチはこのまま夜までいる気らしい。
今もソファに座ってスマホいじってる。
誰かと連絡を取り合っているようだ。
そろそろ放り出すか。
「さて、クリキチ。そろそろ帰れ」
「まぁまぁもう少しだけお願いっす。あと少しで着くって言ってたし」
何だ? 何かを待ってる様子だ。
俺が訝しんでいるとインターホンが鳴った。
「ん? 新聞の勧誘か?」
荷物が届くって話はないし、たぶんそうだろう。
迷惑な話だ。
インターホンのモニターをつける。
「はいはい。新聞はいらないですよ」
だが映ったのはエリーゼだった。
『あなたのエリーゼが来たわよ! ダーリン!!』
「帰れ!」
俺はモニターを切った。
マズい。恐れた通り、エリーゼが押しかけて来たようだ。
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押しかけヒロインはエロゲーの伝統芸能。
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