第14話

彼女の選んだ宿に着き、八畳の和室に通された。


彼女の仕度を待って早々に風呂に向かう。


髪をまとめ上げている浴衣姿の彼女は、雰囲気が全く変わり、見ている方が恥ずかしい。


『どうしたの?』


『イヤ、何でもない』


『何?教えて〜』


彼女のテンションが高い分、こっちのペースが乱される。


『今日は散々だなぁと思ってね』


『私と一緒じゃイヤ?』


『そんな事ないよ、光栄です。』



外は相変わらず吹雪になっていて、露天風呂には誰もいない。


内湯に浸かりながら、いつ帰れるのか考えてもしょうがないけど、安全に彼女を送り届けなければならない責任を感じていた。

ただ、彼女の積極的な態度にどこまで理性的でいられるか…

既に状況に流されているので、もう考えない事にした。



夕飯の時間にはまだ早いので、彼女を待って部屋に戻り、窓際で外の景色を眺めながら、背中越しに聞いた。


『ご飯の時間までどうしようか。』



荷物の整理をしていた筈の彼女が背中に抱きついてきた。


『今日はありがとう』


風呂上がりで気を抜いていたところに、突然の事で体が動かなかった。

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