第4話 斬術戦法の先生



成程、斬術戦法と言うのは、剣術と言うカテゴリでは無いらしい。

先ず、闘猛火と言うエネルギーを増量させる特殊加工された刀を使い、エネルギーによる攻撃を行う事を、斬術戦法と言うらしい。

だから剣術では無く、斬術戦法と言う特殊な名前を名付けられたのだとか。

斬撃を飛ばすと言うよりかは多彩なレーザービームを斬撃と称してる様なものだ。

どっちにしても格好良いので全然問題は無い。

実際の所、肉体から生産される闘猛火と言う熱量を利用するので、熱光線兵器と変わりない。

それを斬術戦法と言う剣術として語っているだけの事。


成程と納得する俺は、父さんの伝手で最高の先生に出会ってしまった。

そう、銅島先生である。

銅島先生の斬術戦法に魅了されてしまった俺は、銅島先生のご教授を得る為に、自宅へと押し寄せていた。


『肉体を鍛えたいのなら、仕事の休みにでも教えてあげよう』


と、銅島先生直々にそう言われたので、俺は銅島先生が休みの暇を見て貰える事になった。

道路を走るだけでも、肉体を強化する為に必要な技術が培われると、銅島先生は仰った。

人より倍以上の呼吸をしながら走り、心臓と炎子炉の両方に酸素を送り込む。

そうして、肉体に蓄積された闘猛火が溜まり続けると肉体が高熱を発してしまうので、闘猛火を冷ます為に、肉体全体の排気孔を巡らせて闘猛火を冷却させるのだが、その際に闘猛火の熱が肉体の神経や筋肉を刺激させ、常人より倍以上の身体能力を発揮させるらしい。

これを〈炉心躰火ろしんたいか〉と言う技術であるらしく、抜刀官の殆どは扱う事が出来る技術であるらしい。

勿論、全身の筋肉と神経が刺激され続けるので、長時間使用し続けると筋肉痛で気絶してしまう。

が、幼い頃から鍛える事により、筋肉繊維が断裂と再生を繰り返し、強靭な肉体になるのだとか。

基本的に炎子炉は早くても五歳から七歳の間で開花し、其処から鍛錬を積めば抜刀官の中でも上澄みの身体能力となるらしいので、一日も欠かす事無く出来る鍛錬方法だ。


三十分、炉心躰火を使い続けて移動して、ようやく銅島先生の家に到着した。

銅島先生は分家筋でありながら待遇が良く、抜刀官でもある事から銀嶺家から援助金を貰っているらしく、その家も道場付きの武家屋敷であった。

それでも、家政婦や使用人とか必要最低限しか雇って無いので、基本的に門は開けっぱなし、部屋の掃除は暇があれば屋敷の当主である銅島先生自らが行っている。

現に、休みの日でも、銅島先生は一人、縁側の廊下を雑巾がけしていて、一番端から一番端へと、とっとっと、と足音を鳴らしながら拭いていた。


「…ん、来たか、アカシくん」


銅島先生はバケツに汚れ切った雑巾の汁を絞りながらそう言った。

俺は銅島先生に頭を下げると大きく挨拶を行う。


「どうじませんせいッ!おつかれさまですッ!!きょうこそ、斬術せんぽー、教えて下さい!!」


俺はそうお願いする。

すると、銅島先生は困った様な顔をして言った。


「何度も言ってるが、雷迅流斬術戦法は門外不出でね、銀嶺家の血筋しか教えられないんだ、他の流派なら教えられるんだが…」


と、また銅島先生にそう言われて俺はがっくりとした。

古流斬術である雷迅流斬術戦法。

これは、宗家である銀嶺家の血筋しか教わらない斬術なのだ。

なので、俺の様な他人には、教える事が出来ない決まりとなっている。

まあ、ダメであるのは元から知っていたので、ショックはあまりない。

ただ、ダメ元でお願いし続けたら教えてくれるんじゃないか?と言う期待を込めて言った程度である。


「こほっ…こほッ」


咳をする声が聞こえてくる。

その声に反応して、俺は視線を向けると、襖が開かれていて、其処から小さな女の子が顔を出していた。

この世界では珍しい、銀髪をした少女であり、背は低く、華奢な体をしている少女だ。

歳は俺とあまり大差が無い、が、表情は死体の様に蒼褪めていて、色白だった。


「すぅ…はぁ…アカシちゃん、来てたんだね」


掠れた声で、少女は言う。

彼女は、銅島先生の娘さんだ。

名前は銅島ハクアと言う子供だった。


「うん、だいじょうぶ?ハクア」


俺は心配しながら彼女に言う。

銅島ハクアを見ていると、前世の俺の事を思い出して、少し胸が痛んだ。

銅島ハクアは、見ての通り病弱で、あまり外を出歩く事が出来ない。

だからか外に遊びに行く事も出来ないので、友達が少なく寂しい思いをしているのだ。


「うん…アカシちゃん、…お父さんと稽古?」


そう聞いて来る銅島ハクアの視線は羨望を浮かべている。

自分が外を出歩く事が出来ないので、俺の様に活発に動き回る事が出来て羨ましいらしい。

俺も、身体が未知の病に犯された時、誰も遊んでくれず、一人寂しい思いをしていたから、彼女の寂しさは理解出来た。

だから、銅島先生に顔を向けて、詫びの言葉を脳内で浮かべると共に、銅島ハクアに話し掛ける。


「…ううん、今日は、ハクアと遊ぼうと思ってきたんだ、からだの具合はどう?」


と、俺がそう聞くと、ハクアは嬉しそうに笑みを浮かべてくれる。

小さいのに、何処か未亡人の様な雰囲気を漂わせているハクアは、咳をしながら襖を大きく開けた。


「はいって、アカシちゃん、おとうさん、ごめんなさい、アカシちゃんにお菓子、持って来てあげて?」


そう言うと、銅島先生は申し訳なさそうに頭を下げて頷いた。

先に、銅島ハクアが部屋の奥へ入り込むと、俺は縁側から部屋に入ろうとして、銅島先生に呼び止められる。


「アカシくん、…うちの娘と遊んでくれて、ありがとう」


また、俺に対して申し訳なさそうな表情で謝ってくれる。

別に大した事じゃない、昔の自分がして欲しい事を、彼女にしているだけに過ぎないのだ。


「おれこそ、ごめんなさい、どうじませんせい、また稽古、つけてくださいね」


一言、俺はそう言うと、ハクアの部屋へと足を踏み入れた。

ハクアの部屋は実に殺風景な部屋だった。

布団と、勉強用の机、枕の隣には、寂しくない様にと、小さなラジカセが置かれている。

そのラジカセがハクアにとっての世界であり、そこから情報を聞いているのだが、それだけでは外の全貌を知る事は出来ないし、田舎で起きる身近な事件などは教えてくれないのだ。

だから、田舎町で自由に歩き回れる俺が、彼女に屋敷の外は何があるのか、語るだけで彼女は目をキラキラさせながら聞いてくれる。

とても聞き上手な子だと、俺はそう思っていた。


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2024年11月26日 18:00

転生抜刀官、異能を宿す刀とトンデモ剣術が存在する世界に転生したので小さい頃から努力をして最強を目指そうと思います、異能剣戟バトル、刀剣ヒロイン、現代ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou

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