人間と神という名の怪物は相性最悪なんですか?
稲荷 和風
第1話 神すなわち化物
この世界は、「神」というなの怪物によって支配されている。
国は毎年、神たちに生贄として、大勢の人間を差し出している。生贄として選ばれた者に拒否権はなく、ただ神に喰われるのを待つのみだ。
喰われると言ってもいろんな意味がある、食事、性交…娯楽……思いつく限り最悪だ。
国や場所、宗派などにより神は異なる。実際にこの国の神でも、人型の神は12名存在している。
力の強い神ほど普段は人型をしているが、弱い神や力をうまく扱えぬ神は人型になることはなく、奇形をしている。
また、神に気に入られ、神の眷属となった者は、自我や意識、記憶が全て消え、神のしもべとなる。
神は自身に反抗されることを極端に嫌い、恐れている。そのせいか、神の所望で街には神の眷属が人間を監視し、反抗的な姿勢を一度でも取った人間は眷属に喰い殺される。
意を唱える者は消され、毎年1万人近くの人間が神の生贄として捧げられている。
そんな世界で私は今、生贄に捧げられようとしている。政府の秘密住宅で他の皆と同じく、ベランダに立ち、奇形な形をした神に喰われようとしている。
下で口を大きく開け、私が飛び降りるのをじっと待っている。後ろでは眷属が槍を突き立て、飛び降りを急かしている。
足を滑らし、真っ逆さまに落ちてゆく、
「もう……おわりか……」
そう思い、抵抗するのをやめた、どうせ抵抗しても、殺されるだけだ。
いきなり何かに捕まれ、困惑した声があちこちから聞こえてくる。いつの間にか閉じていた瞼をゆっくり開けると、私は誰かに抱き抱えられていた。
状況が全く飲み込めない。
それは皆も同じようで、奇形の神でさえも混乱し、贄を取られたことに怒り狂っている様子だった。
私を抱きかかえているものは楽しそうに笑い声を上げ、奇形の神を煽っているようだった。
奇形の神が今にも触手を伸ばし、攻撃しようとした瞬間、空気が一瞬切り裂かれ、奇形の神は次の瞬間には切り刻まれていた。
周りの焦りなど、こいつはお構いなしに私を強く抱きしめ無邪気に笑っていた。
「良かったあ、底辺に食われずに済んで、」
そいつはまるで小さい子がお気に入りのぬいぐるみを抱きしめるように、大事そうに私を抱きかかえている。
人の形はしてるものの、人間とは言い難かった。大きな黒い鷹の翼、大鎌の様な尻尾、特徴的な狐の耳…、口元からちらりと見える、蛇の様な牙。
神に近い外見をしていた。あるいは上位の神かと思ったのは眷属が静かに引いたのを見た後だった。
人間と神という名の怪物は相性最悪なんですか? 稲荷 和風 @TYESIYAKTUNE1425
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