ep.14-2 あさぎりの店長 オルク

オルクは店の中に入り、大将の元に向かう。

すずねは少し怯え、オルクから離れるように逃げる。

逆に大将はオルクの存在を無視するかのように料理を続けていた。

そんな大将の態度に腹が立ったのか、オルクは喧嘩腰で話しかける。



「おい、こっちを見ろよ!」

「すみません、料理を作っているので後にしてくれませんか?」

「なんだと!?……まぁいい。今日は気分がいいからな」



オルクはカウンター席の手前で立ち止まる。

料理の仕込みのため、食材を切っている大将に向かって話しかける。



「お前に一ついいことを教えてやろう」

「……なんでしょう」

「俺の店の久々のリニューアルオープン日を今日からにした!!

悪いが今日のお客は俺がもらうから、久々のオープンで悪いがお前のところには人が来ないぞ!ハハハ!!!」

「……」



オルクは高笑いする。

それを無視して大将は料理を作り続けていた。

笑っていたオルクは反応が無いことに少し違和感を覚えたのか、大将に怒鳴るように聞く。



「おい、聞いているのか!?」

「……すみません、料理に忙しくて……何か言いました?」

「っ!!!」



オルクの顔は、茹でだこのように急に真っ赤になる。

だが、大きく息を吸って冷静になろうと努力をしているようだ。



「スー......ハー......まぁいい。今日はお前のところに人が来ないことだけ伝えれたら満足だ」

「そうそう、おひとつ聞きたいことが」



今まで相手にしてなかった大将が食材を切り終えたのか包丁を置いた。

珍しく大将に話しかけられたオルクは顔をしかめているが、気にせず大将が話しかける。



「オルクさんのところ、風の噂ではお店が真っ二つに切られたとか。大丈夫でしたか?」

「そんなこと大したことじゃないな。結局リニューアルオープンにつながったから、ありがとうと言いたいぐらいだね」



オルクは強がりなのかこめかみをぴくぴくさせながらも大将に話す。

その様子を見ていた大将はオルクに話す。



「そうですか。であれば、再び切られないように頑張ってくださいね!

 ……あっ、すみません。切られたことを喜んでいらっしゃったから、切られた方がいいのか……」



大将は満面の笑みでオルクの方を見て話す。



「再び真っ二つに切られること、心から願ってますね。何なら、次は5等分ぐらいが良いと思いますよ」

「黙れ!このクソ料理屋め!!!」



大将の皮肉にぶちぎれたのか、オルクは大きな声で怒鳴った。

そして厨房の大将の元に駆け寄ろうとする。

二人のやり取りを見ていたすずねはどうすればよいのかおどおどしている。



厨房に向かったオルクは大将の胸倉をつかむ。

大将は抵抗をせずに、なすがままになっていた。



「おい、ここでボコボコにしてもいいんだぞ」

「……やっぱり、すずねちゃんの一件があったからか……なんか度胸がついた気がするなぁ」

「お、おい!聞いているのか!!」



胸倉をつかんでいるはずの大将が、何かぶつぶつと呟いていることが気持ち悪いのか、

オルクは少しひるみつつも怒鳴ることをやめない。

大将は、ハァと呟きオルクは胸元をつかんでいる手の手首をつかんで力をこめた。



「いたたたたた!お前、何しやがる!!!!」

「暴力は……ダメですね」



大将はオルクの手を離さない。

オルクは痛みに顔を歪ませながら、大将の手を離そうとする。

それを無視して、大将は無理やりオルクの目と自分の目が合うように手で引き上げて怒りを抑えたような低い声で話す。



「別にリニューアルオープンをしようが、客を持っていこうが俺は構わない。

 だが、俺の店で暴れることと俺の仲間への恐喝や暴力は何があっても許さない。

 それがわかったならさっさと出ていけ!!」



オルクの返事を聞かずにつかんでいたつかんでいた手を離す。

ドサッという音と共にオルクは地面にしりもちをついた。

オルクはすぐに立ち上がり、少しだけ恐怖に顔を歪めながら逃げるように店から出て行こうとする。



「くそっ、覚えておけよ!必ず仕返しはさせてもらう!!!」



そう言うと、引き戸から出ようと手を出す。

だが、オルクが引き戸を開ける前に勝手にガラガラと開いた。


髪が腰のあたりまで伸びていて、頭に二本の角が生えているすらっとした高身長の女性が立っていた。

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