ep.10-3 店の前に落ちていた手紙
大将は料理の手を止めて、不思議そうにルトに尋ねる。
「あれ、すずねちゃんは?おにぎり持たせたけど......」
「いや、俺は会ってないよ。あとこれ、なんか店の前に落ちてたから拾って来た」
ルトは右手を差し出す。
そこには手紙があり、『ゆうなぎの大将へ』と書かれている。
「なんだこれは……」
そう言うと、大将はその手紙を開く。
大将の顔が一瞬にして凍る。
その手紙には、短くこう書かれていた。
『妖狐はあずかった、返してほしければ一人で西地区の荒れた廃墟まで来い。
期限は、今日の17時までとする』
大将の顔が凍ったのを悟ったのか、ルトは手紙をぶんどってみる。
そしてルトの顔も凍った。
二人は共に時計を見る。
時刻はすでに14時を回っていた。
大将は何も言わず、バタバタと荷物をまとめ始める。
その様子を見たルトは止めようとする。
「おい待てよ!大将一人でどうするつもりだ!?」
大将はルトの言葉で手を止めることなく準備を続ける。
リュックに何かを詰め込み、それを背負った。
「すまん!行ってくる!!」
「おい!話を聞け!!!!」
ルトは大将の腕を取る。
大将は腕を外そうとするが、ルトの腕力が強いのか外れない。
そんなルトに対して大将は怒鳴る。
「おい!!早くいかせろ!!」
「だから待てって。お前、そもそも西地区の荒れた廃墟がわかるのか?」
「そこらへんの人に聞けばいい!!」
「この……馬鹿野郎!!!」
ルトは腕力だけで立っていた大将の態勢を崩して抑え込んだ。
大将は床で動けなくなっているが、バタバタと暴れる
そしてそんな大将にルトは諭しながらも怒鳴った。
「大将!すずねちゃんが心配なのはよくわかる!!
時間がないのもわかる!!
焦っているのも、気が動転しているのも!!
だから……頼むから今だけは話を聞いてくれ!
俺は西地区の荒れた廃墟がどこか知っている!!
過去の戦争で未だ廃墟になっているところだ!!!」
大将はその言葉を聞いて、バタバタするのをやめた。
そして泣きそうになりながらルトに話しかける。
「ルトさん……俺はどうすればいい?」
「泣くな!!!!今は1分でも時間が惜しい。
泣くのはすずねちゃんを助けた時でいいだろう!!」
「あぁ、確かにそうだ」
バチン!!!
大将は自分の顔を両手で力いっぱい叩いた。
大将の顔は真っ赤な手のひらの形が残る。
そしてさっきとは別人のような鋭い顔つきでルトに聞く。
「ルトさん、慌ててすまなかった……」
「謝るのも後だ。西地区の荒れた廃墟まではここから2時間ぐらいかかる。
つまり、俺たちに残された時間は1時間もない」
「ふぅ……」
大将は目を閉じる。
何を考えているのかは誰もわからない。
数秒後目が開かれる。
「ルトさん、頼む。助けてくれ」
「当たり前だ!!作戦を練るぞ!!」
二人はテーブルに座り、話を始めた。
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