ep.4-2 魔法使いアストラ
大将とオルク、すずねが見た方向には、頭に三角の帽子をかぶった女性が立っていた。
女性は黒いローブを全身にかぶっていて、背の高さ以上の煌びやかな杖を持っている。
オルクは、話の腰を折られたのが嫌だったのか、
その女性に向かって怒鳴る。
「なんだこら!!他人は首を突っ込むな!!!」
「……」
オルクは数歩、女性の方に歩く。
その瞬間、目に見えない速度で女性はオルクに杖を向ける。
そして何かを呟いた。
ビュン!!!!
杖から出た光がオルクの顔のすぐ横を通って、壁に穴をあける。
こめかみ部分から血が少し流れている。
オルクは当たった部分に手を当てたあと、血が流れていることに気づいて悲鳴を上げる。
「ぎゃあ!!!」
「ごめん~手が滑っちゃった~。
次はしっかりと頭に当てるから、もうちょっとそこにいてくれない~」
杖をオルクの頭部分にピッタリ合わせてニコニコしながら話す。
女性の間延びした声とは裏腹に目は全く笑っていない。
「た、助けてくれ!!殺される!!!!」
「あっ、逃げないでよ~。店の中だからあんまり外せないの~」
オルクは叫びながら店から出ようとする。
それを女性は追っかけながら、何発か魔法を打っている。
足や手をかするたびにオルクから声をあげる。
そして店から逃げるかのように出て行った。
女性は店の外に出て何発か打ったのち、店に戻って来た。
大将はその女性に向かって話しかけた。
「魔法使いのアストラさん、ありがとうございました。本当に助かりました」
「ん?助ける??うるさいハエが飛んでたから撃ち落とそうとしただけだけど~?」
「......この人、いつもこんな感じだけど本音なのか、皮肉なのか……」
少し首を傾けつつも、大将は感謝を言った。
そして、オルクが出て行ったにもかかわらず立ちすくんでいるすずねの方に向かう。
「大丈夫だった?」
「う、うん……」
「とりあえず、そのカウンターに座って休憩して」
大将に話しかけられてようやくすずねはカウンターの席に座る。
耳や尻尾がペタンとしていて、少しショックを受けているように見える。
その様子を見ていたアストラは何もなかったかのように店から出ようとする。
「じゃあね~。悲鳴聞こえたから入って来ただけなので~」
大将はアストラの方に向いて声をかける。
「あ……せっかくなんで一緒にお昼食べませんか?
ちょっとお時間頂くかもしれないですが」
「ホント!?いいの~?」
大将の提案にアストラは目を輝かせながら尋ねる。
「もちろん。少しそこのカウンターにでも座って待っててもらえますか?」
「わかった~」
アストラはすずねの横に座った。
大将はすずねとアストラに温かいお茶を渡し、
顔はまだ少し青白いように見えるすずねに話しかける。
「すずねちゃん、大丈夫?どこか怪我したりしてない?」
「......うん」
「ごめんね、変なことに巻き込まれちゃって」
すずねは首を横に振る。
小さい声で呟く。
「だいじょうぶ。すこしおどろいちゃっただけ」
「そう。俺は何があってもすずねちゃんを守るから......信じて」
大将はすずねの目を見て話す。
すずねも目をしっかり見る。
少し安心したのか、血色がよくなっていくのがわかる。
「うん。しんじる」
「ありがとう。さて、お昼ご飯を作りますか!」
大将は冷蔵庫から食材を取り出し、料理を始める。
その様子をアストラはニコニコしながら見ている。
一方、何か思うことがあるのかすずねはもじもじとしていた。
三人とも話さず、料理を作る音だけが響く。
「あの……」
すずねはアストラの方を向いて、口を開いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます