第4話 三十歳から始まる「あんまりな不具合」について。

 大麦こあら「カットオーバー・クライテリア」という漫画を最近読みました。

 冒頭は以下のように始まります。


 ーー人間30になると

 脂っこいものが食べれなくなったり

 風邪やケガが治りにくくなったり

 肌が荒れたり太りやすくなったり

 いずれ死ぬ設計だとしても

 あんまりな不具合じゃないですか


 こちらは主人公の瀬戸の独白で彼の職業はシステムエンジニアで、人生もプログラム的に考えていることが伺える内容となっています。

 三十歳になることで起きる不調を「不具合」と捉えているわけですから。


 ちなみに「カットオーバー・クライテリア」はがっつりBLなので、苦手な方はスルーしていただきたいのですが、帯には「強メンタル新卒部下✕超エンジニア脳辛口上司」とあり、上司と部下の社内恋愛ものとなっております。

 今作は大麦こあらのデビュー作で、他に僕は一作読んでいるだけですが、登場人物の「え、こいつ何考えてるの?」と分からなくなる表情がめちゃくちゃ上手いんです。

 小説だと表情の描写を重ねるとテンポが悪くなるので、「え、こいつ何考えてるの?」という演出をするなら、台詞と行動に任せてしまうんですが、大麦こあらはそれにプラスの表情の上手さもミックスされるので、目が離せなくなるんですよね。


 さて、大麦こあら作品についてはまた別の機会に詳しく書くとして、三十歳になることについて今回は書かせてください。僕は現在、三十三歳。脂っこいものは当然食べられなくなってますし、ちょっと前にできた口内炎が住民票を移したの? と思うほど口の中に残ってますし、肌に関してはお風呂上がりにスキンケアをしなければ、ぱりぱりになります。

 二十代の頃には大雑把にクリアできていたことが、三十代になるとちゃんと順序立てないとクリアできない。そんな感覚に見舞われることが多々あります。

 おそらく四十代になるとクリアそのものを諦める事柄も出てくるんだろうと思います。それが具体的に何かは今は分かりませんが。


 ひとまず、今僕が語れることは二十代と三十代の違いです。

「カットオーバー・クライテリア」の瀬戸が言う「あんまりな不具合」はおっしゃる通り。その上で僕が追加したいと思った不具合は「孤独感」です。

 三十歳になると一人でいること、それがこの先も続くだろうという実感に耐えられなくなるんです。あくまで、これは僕個人の経験でしかありませんし、僕が三十歳の誕生日を迎えた時はがっつりコロナ禍でした。

 世界的に多くの人が孤独だった時期に僕は三十歳になったので、より一層実感したと言う可能性は十分あります。


 孤独感を解消する方法はシンプルに考えれば、誰かと一緒にいることです。

 コロナ禍において、一緒にいて良いと社会的に認められるのは友達でも職場の同僚でもなく家族でした。

 僕の実家は広島で、当時生活していたのは大阪。県をまたぐわけにもいきません。

 という風に考えた結果、残されたのは自分で家族を作るでした。


 誰かとお付き合いをして、結婚をする。

 そうすれば、妻という家族ができて、社会的にもコロナ禍であっても一緒にいて良い存在となる。


 シンプルな思考回路ですが、当時の僕は大真面目に恋人を作ろうと奮闘しました。世は緊急事態宣言とか言っている時期にです。

 結果、今年の五月に入籍しました。

 飛躍した結果ですが、事実なので仕方ありません。

 あらゆる紆余曲折がありました。コロナ禍で恋愛をするなんて、大変以外の何ものでもありません。ただ、見方を変えれば遠距離恋愛はしやすい環境だったかも知れません。

 物理的に会ってはいけないわけですから、距離が近いか遠いかは関係なくなります。


 ちなみに僕と妻は出会った当初、お互いに住んでいる場所から換算すると丁度100キロ離れていました。

 遠距離恋愛というほどでもありませんが、仕事帰りにふらっと会える距離でもありません。それを歯がゆく思ったりはしませんでしたが、同棲をする時は荷物の関係で少し苦労しました。


 なにはともあれ、僕は無事結婚しました。

 今のところ孤独に苛まれることはありません。

 また、結婚して気付いたことがあります。

 結婚すると家族が増えるなんて言う場合、子どもができることを指しますが、妻の両親や祖父母がまず増えます。

 僕はおじいちゃんというものを知りません。

 父は自分の両親と縁を切っていましたし、母のお父さんは僕が生まれる前に亡くなっていました。

 妻の祖父母は健在です。なので、僕は結婚したことで新しいおじいちゃんがいる生活を送ることとなったのです。


 二十代の一人で生活していた頃は家族が増えるなんて、逆立ちしても想像することはできませんでした。けれど、三十代になって結婚をして、僕は以前からは考えられない環境に身を置かせてもらっています。


 三十代は確かに体調面の「不具合」は増えますし、二十代に比べて挑戦できる幅も狭まります。

 ただ、だからこそ、不具合を起こさないための方法論を考えますし、今だからできる挑戦によそ見せずに向かうことができたりもします。

 年を取るのはそんなに悪いことじゃないと僕は思います。


 という、ぼんやりとした結論で今回のエッセイを終えさせてください。


 ●


 日常エッセイと言いつつ、なんだか三十代は楽しいぞエッセイになってしまいました。

 あくまで僕は楽しいだけで、他の人にとって年を取ることに対して、全然違った受け取り方をされる場合もあるでしょうし、それが間違っているわけでもありません。

 ああ、更にぼんやりとした内容に。


 次回は小説の話にします! 

 明日もよろしくお願いいたします!

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