僕の声。聞こえますか?

もっさん

第1話 建国



「ん・・・・・。」




僕はゆっくりと目をあけた。



目をこすりながら起き上がると、近くにあるカーテンをひらいて大きな両開きの窓を開ける。


朝日が僕の体を優しく包む。



「う~ん!今日も晴れてていいね!」



両腕を天に掲げて伸びをしながら言う。



顔に当たる潮風が、とても気持ちがいい。



人間って不思議だよね。前世の時もそうだけど、目覚ましをセットしてもしなくても、決まった時間に起きてしまう。



僕は明るくなった部屋を見渡す。



「・・・・・広すぎだろ。むしろこの部屋だけで住めるわ。」



思わず独り言の様に呟いた。



100畳以上はある広い部屋に、有名な画家が描いた絵が飾られ、見た事のない調度品が置かれている。そして天井には、豪華なシャンデリア風のライトがある。




あれ?




僕は平民だよね?




心の中でツッコんでいると、部屋の扉が開き、フリフリの衣装・・・・・メイドの格好をした10人の美女が続々と入ってきた。




「ヒカリ様。おはようございます♪」


「「「「「「「「「 おはようございます!!! 」」」」」」」」」




侍女長が僕に向かって恭しくカーテシーをすると、後ろにいる侍女達も同じ様にならう。



「・・・・・うん。おはよう。」




あれ?




起きたの伝えてないよね?




何で分かったのかな?




僕の表情を見て察したのか、笑顔で侍女長は答える。



「ヒカリ様?私達はヒカリ様専属の侍女です。どんな時でも、ヒカリ様の苦にならないよう細心の注意を払っておりますのでご安心ください。」


「そうです!ご就寝の時も、交代でヒカリ様の部屋の前に待機しているだけです!」



一人の侍女・・・・・チェリーが嬉しそうに笑顔で僕に言う。




えっ?




それって一晩中見張られているってことかな?




しかも侍女長。貴方は一体何をやっているんですか?




マズいでしょ?




だって貴方は皇女様なんだからっ!!!




「そっ、そうなんだ。・・・・・うん。ありがとう。」


「「「「「「「「「 はい!!! 」」」」」」」」」



顔をヒクヒクしながら、とりあえずお礼を言っておく。




すると、一斉に侍女達が動き出した。


埃一つなさそうな広い部屋を掃除する者。何人寝れるの?って思えるような、先程まで寝ていた大きなベットをメイキングする者。


パジャマ姿で寝ぐせ全開で立っている僕を、複数人で脱がし、着せ、髪を整える。




何か、お人形さんみないになってますけど?




最後に、黒が基調のワンポイントの刺繍が施されている薄いロングコートを侍女長が着せながら笑顔で言う。



「ヒカリ様。いよいよ今日でございますね。・・・・・せっかくの晴姿ですので、もっと煌びやかな衣装もございましたのに。」


「ハハッ。いいんだよ。」



僕は笑顔で答える。



ナンバーズ達が、あれ着ろ、これ着ろ、うるさかったが、やっぱりこの服装が一番落ち着く。




「それでは、先に行ってお待ちしております。」


「「「「「「「「「 お待ちしております!!! 」」」」」」」」」




全てが終わると、侍女達はカーテシーをして部屋から出ていく。



僕は見送った後、陽ざしが降り注いでいる大きな窓に手を付いて外を見る。



眼下には城下町が広がっていて、木々があり、川が流れている。自然と調和されていてとても美しい。



そして先の方には、真っ青な海が見える。



巨大な城の最上階の窓から見る景色は、まさしく絶景だった。




「今日も景色が綺麗でサイコ~だな!」


「フフッ。そうですね♪」




「レイン。・・・・・・独り言に反応しないでくれないかな。」


「フフッ♪」




いつの間にか僕の影から現れた美女。


銀色の輝く長髪。黄金の瞳。そして魅惑のプロポーション。



そんな女性が僕に向かって笑顔で返事をすると、ゆっくりと跪いて言う。



「さぁ。ヒカリ様。そろそろお時間ですよ。皆が待っています。」


「・・・・・はぁ。気乗りしないなぁ。」


「フフッ。またそんな事を。」



レインは立ち上がり、僕が動き出すのを待っている。




しょうがない。




駄々をこねても、結局はレイン達に連行されるから、ここは男らしく行きますかね。




もう一回ため息をつき、壁に掛けてある帽子を取って深くかぶると、扉へと歩き出しながら後ろに従えているレインに話しかける。



「そういえば、さくらと、しずくと、サスケはいるの?」


「いえ。あの子達は先に行って会場の警備にあたらせています。」


「そっか。」




僕は扉を開ける。



最上階の一番奥にある自分の部屋から出ると、広い通路の両脇には9人の様々な種族の男女が立って待っていた。


後ろに控えているレインを含む、この10人を見る人が見れば、祈るか、絶望するか、恐怖で逃げ出すか、命乞いをするかのどれかだろう。


それ程、この世界で有名でいて、恐れられている人達だ。




・・・・・何故か僕の仲間だ。・・・・・そして何で部屋の外でスタンバっているのかな?




「はぁ。・・・・・皆。おはよう。」



「「「「「「「「「 ハッッッッッ!!! 」」」」」」」」」




挨拶をすると、僕が考えたこの世界にはないオリジナルな敬礼をする。



そのまま歩き出すと、皆、通りすぎた僕の後ろから付いてくる。



屋上へと上がると、後ろに控えていた可愛らしい少女がぴょんと僕の前に出ると、ブイサインを横にし、片目の前に出して嬉しそうに言う。



「さ~て! 今日はぁ~♪ ヒカリっちの晴れの舞台だぴょん♪ 行っくよぉ~♪」




そう言うと、両手を広げて早く抱いてポーズをする。



「ハハッ。はいはい。」



僕は少女を抱きしめて持ち上げる。



少女はとても嬉しそうだ。




「・・・・・チッ。そんな事をしなくても転移出来るだろうが。」



レインが小声で愚痴る。




「さっ。 いっくよ~♪」



レインの声を完全無視の少女は、元気よく右手を上げると、突然、僕達の床に巨大な魔法陣が現れた。



すると、視界が突然変わる。



周りを見渡すと、大きなテントの中の様だ。



外では、多くの話し声が聞こえる。



僕は少女を降ろすと、仲間達を見て情けない顔で言う。



「ねぇ。・・・・・やっぱりやめない?」




「貴方様を民に知らしめる、またとない機会ですよ?」


「・・・・・僕の主なんだよ?・・・・・ここはちゃんと宣言しないとだめ。」


「何を腑抜けた事を言っているのじゃ!」


「おっ、おでが付いているから。だっ大丈夫。」


「ヒカリっち♪ がんば♪」


「そうっちゃ!」


「美しい女性達もいっぱいいますよ!」


「ウフッ♪ 一人がいやでしたら、私が隣にいましょうか?・・・・・いや、むしろどこか遠い所で二人で住みましょう ♡♡♡♪」


「若。諦めなされ。」


「ヒカリ様。ここはしっかりとお姿を見せるべきかと。」


「・・・・・この胸デカ聖女め。」




仲間達が、笑顔で返答をする。




・・・・・レインさん?仲間に胸デカとか言っちゃダメですよ?




「しょうがない。行くか。」



僕はテントの幕を開け、外へと出る。




すると出た瞬間。





オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!! 



ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!



キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!



ゴースト様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!






震える。






震える。






地が震える。






それ程の大歓声。






城下町から少し離れた大平原。


その少し丘になっている頂上のテントから出てきた僕は、眼下を見渡す。






人。






人。






人。






まさしく人の海。






いったい何人いるのだろう。




「ヒカリ様。今この国にいる全ての者達が集まっております。・・・・・・・その数。一千万人。」



後ろに付き従えている仲間の一人が笑顔で言う。




ある者は涙を流しながら僕の名前を叫び。



ある者は恍惚の表情をしながら僕を見つめ。



そしてある者は神に祈る様に黙ってひれ伏している。




・・・・・一千万人?




今、一千万人って言った?




それって、オーストリアやスイスより人口多くね?




その全ての人達が、一人の・・・・・僕だけに向かって歓声を上げている。






うん。






意味が分かりません。






僕が唖然としながら突っ立っていると、後ろに従えていた10人の仲間達が、数メートル先にある巨大な豪華絢爛な椅子の両サイドに、綺麗に等間隔に一列に並んだ。



それに合わせる様に、地が震える程の大歓声がピタリと止む。



見ると、全ての人達が片膝を付いて頭を垂れている。・・・・・一千万人全員がだ。



誰一人言葉を発することなく。



まるで別人の様に。



ピタリと。



静寂がこの島を包んだ。



先程まで歓声で聞こえなかった、風の音や、近くの川のせせらぎが聞こえる。






僕は黙って、歩を進め、巨人が座るの?って思えるほどの中央にある巨大な椅子の前まで来ると、ゆっくりと座り、足を組んだ。





一千万人。全ての人達が僕の方へと顔を上げて見ている。



その瞳はうっとりとした、どこかいっちゃっている様な瞳に感じる。



並んで立っている仲間達も同じ様に。






うん。






マジでこえぇよ。





・・・・・はぁ。切り替えて【ゴースト】で行くか。



ここに居る、全ての人達に僕の声が届く様に、仲間の一人が魔法を唱える。



すると僕の前に小さな魔法陣が現れた。



気持ちを切り替えて、僕は不敵な笑みを浮かべる。






そして一言。






「・・・・・さぁ。はじめようか。」






オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!



オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!






静寂からの大歓声。






眼下に広がる人達の鳴り止まない歓声を聞きながら、不敵な笑みを浮かべる僕の頬に汗が一滴流れる。






・・・・・・・・・・。






・・・・・・・・・・。






・・・・・・・・・・。






・・・・・・・・・・。





・・・・・・・・・・。






何でぇ?






何でぇ??






何でこうなったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!






この日。






『世界最強の国』が誕生した。























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あとがき


  読んで頂きありがとうございます!


  久しぶりに新作書きました!


  今回も完結まで駆け抜けようと思ってます!


  何かない限りは、毎日1話アップする予定です。


  今後も応援よろしくお願いします!



  PS:星やレビューを頂けると作者は泣いて喜びますw




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