九、その後、その先へ
第11話
なな子達が無事に二年へと進級した初日の朝、いつものお馴染みのメンバーでいつものように登校していた。
なな子達の学校はクラス替えがない為、二年になっても皆同じクラスである。
悠佑「また兄貴と爽汰の奴がなな子を連れて来いってうるせぇんだよッ…ったく」
なな子「じゃぁ…今度の休み行こうか?悠佑の家」
悠佑「いやいや、アイツらを甘やかしたらいかんッ!」
なな子が香月邸を訪問してからと言うもの、香月家と鷹鳥家の交流が頻繁に行われるようになっていた。
悠佑の兄である理久斗は、なな子の父である弘乃丞に衝撃を受け、弘乃丞を大変リスペクトするようになった。それからというもの…なな子の父弘乃丞と吾郎の父大五郎、いとこの巡哉、悠佑の兄理久斗の血の気が酷似している四名で、月に二回「ふいうちステーキ」というお店で肉食会を開催している。
涼太「悠佑、ななちゃんの事で兄弟とも戦ってんのかーッ!」
悠佑「笑い事じゃねぇんだよッ!兄貴は一番のくせものだからなぁ…。なな子の父ちゃんといつの間にか仲良くなってるしッ」
涼太「まぁ悠佑に似てるもんね…(笑)」
悠佑「あんな奴と一緒にすんなッ」
悠佑は頭から湯気を立て怒っている。
すると、悠佑は突然思い出したようになな子に言った。
「そういやぁ…爽汰の奴、うちの高校受験するとか言ってたんだけど…。アイツぜってぇになな子目当てだぜ?マジで厄介だわぁ…」
悠佑が天を仰いだ。
なな子「それならそれで良いじゃない。楽しそう」
悠佑「いやいやいやッ、俺は全然楽しかねぇよッ」
なな子「でもほら、爽汰くんに良さそうな原石、同じ高校なら探しやすいし」
悠佑「うん、俺も発掘手伝うわ」
なな子「・・あっ!ちょっと待って…そう言えば…松尾くんのお姉ちゃんと妹って、二人ともまだ想い人はいなさそうよね??」
なな子は思い出したように目を丸くしながら吾郎を見た。
吾郎「え…うん…いないと思うけど…」
悠佑「え、吾郎って姉ちゃんと妹いたんだ」
吾郎「あぁ…2個上と、2個下…」
玲花「吾郎のお姉ちゃんもすっごく美人なんだよッ!妹も可愛いしッ!なのに恋バナのコの字もないのよね…」
吾郎「…っっ」
悠佑「ちょっと待って…2個上と2個下って、兄貴と爽汰と一緒じゃんッ」
なな子「どうよ?」
悠佑「それだわ」
「・・・」
なな子と悠佑は、二人して静かに吾郎を見た。
吾郎「え…。ちょっと待って、香月くんみたいなのが二人もなんて……俺、手に負えないんだけど…」
悠佑「うん、おまえなら大丈夫だわ」
なな子「大丈夫ね」
吾郎「…っっ」
香月ブラザーズの原石は松尾家姉妹に託されたのであった…。
この後…、鷹鳥家と香月家に加え、松尾家との交流が頻繁に行われるようになるまでにそう時間はかからなかった…。その交流の主は毎回「湖畔で親睦深めようキャンプ」(通称:湖畔野宿/吾郎の父、大五郎命名)の開催であった。そこには、いとこである巡哉と彼女の可菜実、吾郎の彼女である玲花や友人の涼太と多満子までもが参加したのであった。
なな子達がしばらくワイワイ話をしながら校門を通り校舎に向かっていると、校舎の入り口付近がなにやら賑やかだった。
「何だァ?あれ…。女子が群がってんじゃん」
悠佑がキョトンとしながらその光景を眺めた。
「あ!あれって…もしかして今年の新入生イチのイケメンで有名な
玲花が生き生きと説明している。
「ずいぶん詳しいね」
玲花の彼氏である吾郎は少しムスッとしている。
玲花「知識として詳しいってだけだよ!少女漫画の知識と一緒!私の心と頭はいつも吾郎だけだからねッ」
吾郎「…っっ」
悠佑「朝からあちぃーなッ、おまえら」
なな子「そう言ってる悠佑も暑いから離れてくれる?」
悠佑「嫌だよ」
涼太「でもさー、その"魅惑の亀"?って人のおかげで悠佑のファンも減るんじゃない?」
悠佑「別に俺はなな子だけでいいから何の問題もねぇよ。それよりおまえのファンだって減るんじゃねぇの?」
涼太「俺だってたまちゃんだけでいいから問題なしッ!」
多満子「えへへ…」
そんな仲間達の会話を笑顔で聞きながら、なな子は"魅惑の亀"こと亀木琉生の横を通り過ぎようとした。
複数の生徒に囲まれていた琉生は、チラッと横を通り過ぎようとするなな子の横顔を見た。
"ハッ…"
ガシッ…
魅惑の亀、琉生は思わずなな子の腕を掴んだ。
「!!・・・え…」
なな子は驚いて振り返った。
その場に居合わせた悠佑達も驚いて琉生を見る。
琉生は赤い顔をしながらなな子を見つめ静かに口を開いた。
「あ…の…覚えてないですよね…。俺…一年前にこの近くの路地で…あなたに助けられたんすけど…」
なな子「・・・えっ…」
玲花「まさか…例のなな子が助けた子って…」
悠佑「マジかよ…こんなに歳近かったのかよ」
琉生「・・・っ」
玲花「リ、リアル…乙女のタートルプリンス伝説じゃん…亀だしッ!」
吾郎「それよりもっと壮大な物語があるでしょ…浦島っていう」
涼太「・・・っ」
多満子「・・・っっ」
なな子「・・えーっと…ずいぶん、背伸びたんだね…ビックリした…」
琉生「はい…あの時は背低くて幼く見られがちだったんですけど…。あの後…本当に絡んでくるような人が居なくなって、安心してあの道歩けるようになって…。俺、あの通りにある竜宮亭が実家で…。すっげぇ、助かりました…」
吾郎「・・・ほら、壮大な物語の方が近いじゃん、浦島っていう」
玲花「・・・っっ」
涼太「・・・っ」
多満子「・・っ」
琉生「あの…本当に感謝してて…。あの時にかけられた言葉で俺、すっごく勇気付けられて…その…ずっとお礼言いたくて…本当に…ありがとうございました…」
なな子「いえいえ…一年も前の事なんだし、お礼なんてそんな…」
琉生「す…」
なな子「・・・す?」
琉生「…す…」
なな子達一同「・・酢?」
琉生「…すー・・」
悠佑は思った。
"す…ってコイツ…まさか…なな子に向かって…すっとこどっこいって言うんじゃねぇだろうなッ!"
悠佑は険しい顔で琉生を見つめた。
琉生「す、好きですッ!!ずっとあなたに会いたかった…」
なな子「・・・っっ!」
悠佑「なっ…!!そっちかよッ!!」
涼太「え…逆にどっちだと思ったの?」
「えぇぇぇえーっっ!!」
その場に居合わせた人達の様々な叫び声が響き渡る。
悠佑「・・っっ。オイオイ…ちょい待て!なな子は俺と付き合ってんのッ!おまえが告ったところでダメだかんなッ」
琉生「・・・」
悠佑「オイ、そこのおまえ…亀とやら!ちょっと目線こっちに向けろッ」
琉生「・・・」
悠佑「コラッ!亀ッ!無視すんなッ」
琉生「何なんですかァ?俺あなたには用ないんですけど」
悠佑「え…話聞いてた?俺コイツの彼氏…」
琉生「だから何ですかぁ?別に結婚してるわけじゃないっすよねぇ?」
悠佑「…っっ!!ちょっと…ゆっくり話し合おうかァ…亀くんよォ…」
琉生「俺はアンタなんかと話し合うことなんざないね」
悠佑「おまっ…何だその口の利き方わァッ!こんな亀見た事ねぇぞッ」
流生「俺、亀じゃねぇし」
悠佑と琉生はギャンギャン騒ぎ合っている。
そこへ、風紀委員の顧問である辰島巡哉が駆けつけた。
巡哉「オイッ!おまえらッ!朝っぱらから何騒いでやがるッ!」
琉生「先生ー、この人が後輩をイジメます」
悠佑「テメェ…ちげぇだろッ!男と男の話し合いをしてんだろうがッ」
「何だァ?男と男の話し合いって…」
巡哉がそう言いながらなな子に目をやった。
「・・・・」
"またおまえかよッ"
巡哉は静かに悟る。
巡哉「鷹鳥、おまえやっぱりあの眼鏡かけといた方がいいんじゃねぇか?」
なな子「あの眼鏡、今母さんが使ってんだよね」
巡哉「は?椿さんが??何で?」
なな子「なんか刑事時代の知り合いに頼まれて今、万引きGメンのボランティアしてんの」
巡哉「うっ…マジかよ…おまえの家族スゲぇな…」
一方その頃、とあるスーパーでは…
ウィーン……スタスタ…
椿(母)「アウトーーーッ!」
男「ギクッ…」
椿「お店出たからアウトーーッ!」
男「な…な、何だよッ…」
椿「あなたが三十二分前と二十四分前、十七分前と四分前にそのカバンに入れた物を全て言い当ててあげましょうか?お会計がお済みでない物達を」
男「・・・っっ、し、知らねーよッ」
スタタタタッ…
ドスッ…
男「うっ…」
椿「私に捕まったらもう逃げられないのよ…事務所でじっくり話を聞かせてもらうわ」
男「ヒィッ…」
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なな子「何か…母さん、今凄く生き生きしてんだよね…」
巡哉「現役復活かァ?まぁ、椿さんはそういうのが合ってそうだよなァ」
なな子「そうね…。・・そう言えば…あの眼鏡もう一つあって父さんが持ってるって言ってたな…」
巡哉「はぁ?弘乃丞さんが?何でまた…」
なな子「なんか母さんが犯人と揉めて眼鏡がふっ飛んだ時にね…」
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ガチャンッ…
椿「あ…眼鏡…」
弘乃丞「椿ッ!!新しい眼鏡だァッ!」
椿「ありがとう…弘乃丞…」
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なな子「・・ってな感じで父さんが駆けつけるシステムになってるみたい…」
巡哉「・・・っっ、それじゃまるで…有名なパンのアニメみてぇじゃねぇかよ…」
なな子「・・・(苦笑)」
「あなた達、今日も"劇団シーズン"張りに注目を集めているわよ」
国語教師の御堂 可菜実が笑顔でやってきた。
巡哉は顔を赤くしながら可菜実を見る。
可菜実「まぁ、おかげで遅刻してくる生徒が居なくなったみたいだから良いですけどね、辰島先生ッ」
巡哉「・・っっ、まあ…そうだなッ!結果オーライだなッ」
なな子「風紀委員の顧問らしからぬ発言…」
巡哉「これは健全な風紀だろッ」
すると、なな子と可菜実が目を合わせ笑った。
なな子「はぁあ…、一年前からは考えられないなぁ、こんな朝の登校風景…」
可菜実「人生、そんなものよ。それに…これはこれで悪くないんじゃない?」
なな子は可菜実の言葉を聞き静かに微笑むと、頷きながら言った。
「確かに」
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悠佑「オイ、亀ッ!なな子のどこに惚れたんだよッ!おまえまさか、顔って言うんじゃねぇだろぉなぁ…」
琉生「ちげぇよッ!声と話し方と強さと優しさと…全部に惚れたんだよッ」
悠佑「・・・同感。でもなな子の彼氏の座は譲らねぇけどなッ」
琉生「…チッ。絶対奪ってみせるッ」
悠佑「ぜってぇ阻止するッ」
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涼太「何か、悠佑のやつ…ななちゃんと付き合い出してから毎日戦ってんなァ…(笑)」
多満子「そうだね…。ほぼ毎日誰かしらと戦ってるよね。前は香月くんの取り合いで女の子達が揉めてたのに、今は逆になってる…(笑)」
涼太「アハハッ!確かに。ななちゃんの方が人気者になっちゃったもんなー。この前だって…校舎の壁に立てかけてあった木材が倒れかけて、女の子が下敷きになりそうだった時もさァー・・・」
---
ガタガタガタ…
悠佑「ヤベッ…あれ倒れるッ!」
玲花「きゃーッ」
涼太「…っっ!!」
吾郎「…っ」
多満子「あっ、なな子ちゃんッ!」
なな子「・・っっ」
ダタタタタッ…
なな子は女子生徒の方へ駆け出して行った。
悠佑「っっ!!な、なな子ーッ!!」
一同「・・・っっ!!!」
シュッ…ダダーンッ!!・・バラバラバラ…
なな子「・・大丈夫?」
女子生徒「は…はぃ…」
なな子「良かった。…ったく、何でこんな所に木材なんて…」
悠佑「おぃ…大丈夫か?」
涼太「ちょ…大丈夫!?」
多満子「大丈夫ー??(泣)」
玲花「え、無事ーッ?もーうビックリしたあーッ(涙)」
吾郎「・・っっ」
なな子「うん、大丈夫」
悠佑「いやマジで焦ったわー…。つーか、おまえ、足速えんだなッ」
なな子「私、持久力走はダメだけど瞬発力には自信があるの」
涼太「すげーぇっ!ななちゃんの回し飛び蹴りで木材が木っ端微塵になってるーッ」
女子生徒「あのー…」
なな子「ん?」
女子生徒「あ、ありがとうございました…」
なな子「いえいえ」
女子生徒「す、好きですッ!」
なな子「え」
悠佑「・・・っ!!?」
一同「!!」
--
涼太「・・って事があったじゃん。ななちゃんがあの場で助けた女の子から告白されたのには驚いたわ」
玲花「そうそう。さすがの悠佑くんも本気で慌ててたわね(笑)それにしても…あの後に、"あんな大っきい木材をあんな所に立てておくなよッ!"って先生にマジ説教してた吾郎も最高にかっこよかったわ」
吾郎「・・・っっ」
涼太「そうそう!吾郎くんが先生より先生に見えたッ!あの時、吾郎くんの将来が見えた気がしたわ」
吾郎「え…」
多満子「ほんとほんとッ!」
玲花と涼太、多満子は笑い合い、吾郎は一人だけ顔を赤くさせ戸惑っていた……。
すると、多満子は思い出したように、なな子のエピソードを話し出した。
「そういえばー…この前も、なな子ちゃんが小学生の男の子を、いじめっ子達から助けてあげたことがあったんだけど、その助けた男の子からも告白されてな…なな子ちゃん・・」
玲花「やだッ!それって…また何年後かに第二の亀みたいになってなな子の前に現れるってパターンじゃない?」
涼太「悠佑の戦い終わらねーじゃん…(笑)」
吾郎「もはや人類と戦ってる感じだな…」
多満子「なな子ちゃん、老若男女問わずファンがいるね」
涼太「カッコいいもんなー、ななちゃん…」
多満子「涼太くんもかっこいいよ…」
涼太「・・っっ!!たまちゃん…」
涼太は驚き多満子を見た。すると、顔を赤くさせながら恥じらう多満子の表情に涼太は思わず見惚れた。
玲花「ま、吾郎もかっこいいけどね」
吾郎「・・・っっ」
吾郎は眼鏡をクイッと上げ赤くなった顔をごまかした。
しばらくして、多満子が悠佑に目を向けると、静かに口を開いた。
「・・さすがに…今回のライバルは強敵そうだけど、香月くん…。でも何だかんだ言って香月くんは楽しんでそうだよね」
涼太「そうそう、それ俺も思った!悠佑のやつ、何か生き生きしてるよなァ。でも悠佑が楽しそうなのって、ななちゃんを信用してるからなのかもなァ」
多満子「そうだね。なな子ちゃんもクールだけど一途だからね」
涼太「俺も一途だよ」
多満子「…っっ!!わ、私も…」
涼太「・・・っっ」
涼太と多満子はお互い顔を赤くし照れ笑いした。
玲花「いちいち熱いわね、あなた達」
「俺も一途だけどね」
吾郎が玲花を見つめながら言う。
「・・・っ!!わ…私も…」
玲花は意外な吾郎の言葉に赤面した。
多満子「なな子ちゃんって…、普段クールな表情してるけど香月くんに近寄ってくる女子の対策を真剣に考えてたりするんだよ」
涼太「え!!そうなの!?」
「そうそう」
多満子はそう言いながら、にこやかに笑った。
ちょうどその頃、可菜実と巡哉と談笑していたなな子の頭の中に何故か一瞬ある物がよぎった。
"宇宙服…"
多満子、驚異の透視能力である。
玲花「へぇ!余裕そうなのに…意外と戦ってるんだね、なな子も」
吾郎「香月くんは気づいてないみたいだけどね」
涼太「悠佑は悠佑で戦ってるからな。気づく暇がないのかも…(苦笑)。でも…何気に俺だって戦ってんだよ?」
涼太は照れながらチラッと多満子を見た。
多満子「え?誰と?」
涼太「たまちゃんの魅力に気づいた男達が、たまちゃんが眼鏡を外す瞬間を狙ってんだよ。それから守ってんのッ」
多満子「え…そうなの?」
玲花「それ…私も同じよ。吾郎が眼鏡を外した素顔のシャッターチャンスを狙ってる女子達と戦ってるんだからァッ!」
「じゃあ眼鏡外す時は玲花を見るよ」
吾郎はそう言うと、眼鏡を外して玲花を見た。
「・・ちょっっ!!それは嬉しいけど…心臓が…」
玲花は顔を真っ赤ににしながら狼狽えた。
--
その頃、周りの生徒達はなな子達を眺めながら口々に話していた。
「毎朝あそこで騒いでる人達、みんな美男美女だよね。この学校選んで良かったなァ…毎日、目の保養…」
「毎朝登校するの楽しみだよね」
「今年は一年の亀木くんまで入ってさらにパワーアップしてんじゃんッ!何であんなに美男美女が集まるんだろう?」
「やっぱ…心が綺麗そうだから…?」
「たしかに…。あの人達からは悪口なんて聞こえてことないもんね。よく聞こえてくる話と言えばー・・この前は鷹鳥さん、宇宙服の話してたな…」
「穂積さんは戦国武将の話、楽しそうにしてたわ…」
「逸ノ城さんは乙女の…タートル何チャラっていうアニメの話してたっけ…」
「なんか…いろいろ興味深いな…」
「それをまたそれぞれの彼氏達が愛おしそうに見てるところがホッコリすんのよねーっ!幸せオーラが溢れてて…羨ましい…」
「あのカップル達って…なんか見てて飽きないんだよねー…」
「性格が良いと、きっと容姿も美しくなって行くのかもね」
「そうかも…」
「この学校、遅刻者ゼロってあの人達のおかげなんじゃね?ほとんどの人が眺めてるもんなァ」
「確かにそぉかも!いーなぁ、私もあの中に入りたい。あの中に入れば私も美女になれそうな気がする…」
「俺もあの中に入ったらイケメンに見えるかな?あぁーあ、俺だって入りてぇーよー」
-----
琉生「あの、なな子さんって呼んでもいいですか?」
なな子「え…」
悠佑「ダメ」
琉生「なな子さんはいつもこの時間に登校してるんですか?俺も明日からこの時間に来ます」
悠佑「オィ、コラッ!亀ッ」
なな子「・・・っっ」
なな子は思った。
"こりゃ本気でこの亀王子に見合う原石を探さねばいかんな…"
するとなな子の人材探しのスイッチがONになり、なな子は鷹のようなギラギラとした目つきで辺りの女子を物色し始めた。
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「ん?鷹鳥さん、キョロキョロし出したぞ」
「何か周りの女子達を見てない?」
「まさか…スカウト!?わ、私ちょっと行ってくるッ!」
「え…」
「一応、眼鏡も持って行こうっと」
「おぃおぃ…」
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校長「チャン、りん、シャン…今日もなな子ちゃん達は元気だね」
チャン「ワンッ!」
りん「ワンッ!」
シャン「ワンッ!」
校長「なな子ちゃんのおかげで、おまえ達にもお友達がたくさん増えたね、良かったなッ」
チャン「ワンッ!」
りん「ワンッ!」
シャン「ワンッ!」
校長「この学校の生徒達…前よりも一段とキラキラしてるな…きっと、あの子達のおかげだね」
チャン「ワンッ!」
りん「ワンッ!」
シャン「ワンッ!」
-----
この世では、"ギャップ萌え"という言葉をよく耳にする。
それだけ人間は、ギャップに弱いということなのか…いや、それだけ人間は勝手なイメージを作りやすいということなのかもしれない。
私が眼鏡を外したら…
あなたはどう見るだろうか。
私が実はケンカが強かったら…
あなたはどう思うだろうか。
目に見えてる全てだけじゃ語れない姿を、人は必ず持ち合わせている。
一つのイメージに囚われず、いろんな姿を想像してみる。
そしてその人の心も想像する。
そうしているうちに…
さっき日陰だった場所が、今ひなたに変わる。
昨日風が強かった時間が、今日穏やかな風になる。
去年雨だった日が、今年晴れになる。
昔犬猿の仲だった人間が、未来の味方になる。
あなたの人生である特別なあみだくじの先は、考え方や見方が増えたり変化したりすることによって、通れる横線もどんどん増えて行き、その流れのままに進むと…選んだ時には思ってもみなかった未来へと辿り着くかもしれない。
その時はもう…
あなたがかけている
目には見えない
眼鏡を外すとき-
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