第7話

「あ…」


体育の授業終了後、外の水汲み場で玲花と吾郎が鉢合わせした。


「・・・・」

二人は沈黙の中、手を洗う。


「自分に正直に生きる気になった?」

突然、吾郎が玲花に言った。


「え…」

玲花は驚き吾郎を見た。


ジャバジャバー…

吾郎は眼鏡を外し顔を洗っている。


「・・・・」

玲花はジーっとそんな吾郎を横から見つめていた。


吾郎が顔を拭こうとタオルに手を伸ばすと、置いてあった眼鏡に当たり眼鏡が落ちてしまった。


「あ…」

玲花は仕方なく吾郎の眼鏡を拾った。


吾郎は顔を拭きタオルから顔を離した。


「あ、悪い…。眼鏡、ありがとう…」

吾郎がそう言いながら玲花を見た。


「・・・・っっ!!!」


玲花は吾郎の素顔に一瞬で心を奪われた。

実は吾郎も素顔はイケメンであった…。


玲花は吾郎の眼鏡を握りしめながら吾郎の素顔に釘付けになっていた。


「・・・・眼鏡、返してくれない?」

吾郎が冷静な口調で玲花に言った。


「あぁっ…。はぃ…」

玲花は顔を真っ赤にしながら眼鏡を返した。


吾郎は不思議そうに玲花を見ると言った。


「やっぱり逸ノ城さんは飾らない方が魅力的だね」


「え…」

玲花は呆然と吾郎を見た。


「鷹鳥さんと話して見たら?案外気が合うと思うけど」

吾郎はそう言うと少し微笑み、眼鏡をかけ直しながらその場を後にした。


「・・っっ」

玲花は吾郎の素顔と言葉に衝撃を受け、しばらく立ち尽くしていた…。


ーーー


「・・・鷹鳥さん…、ちょっと良い?」

放課後、玲花は意を決して吾郎の助言通り、なな子と話をすべく声をかけた。


吾郎は玲花を横目に読書をしていた。


悠佑は不思議そうに玲花となな子を見送った。


玲花となな子は屋上へとやって来た。


なな子はまた悠佑の事かと思いながら玲花の後をついて来た。


すると、玲花が静かに語り出した。


「私…鷹鳥さんの事、誤解してた。自分が実は美人だってことに優越感に浸りながら、同情で穂積さん達と付き合ってるのかと思ってた。でも…今日、鷹鳥さんがあの子達に言ってたのを聞いて…正直驚いた。損得勘定で自分の地位を守る為に人付き合いしてる子が多いのに、鷹鳥さんは自分の気持ちの方を守ってるんだって」


「・・・っ」

なな子は驚いた様子で玲花を見た。


「私は…逆に自分のイメージと地位を守ることに必死だったんだ。私、素の自分に自信が持てなかったの。本当は、少女漫画とかアニメがものスッゴイ好きなのに…興味ないふりなんかして。さっき鷹鳥さんが言ってた言葉…人は見かけに寄らないなんてことあるあるでしょ…ってやつ。あれ聞いた時に、私の中の何かが解けたの。心の中の何かが…。すごく…気持ちが軽くなったんだ…」

玲花はそう言うと、恥ずかしそうに俯いた。


「なぁーんだ。私と一緒じゃん」

なな子は天を仰ぎながら言った。


「え…」

玲花が驚いてなな子を見た。


「必死さで言ったら私も同じ。私も、損得勘定で寄って来られたり、敬遠されるのを防ぐ為に眼鏡かけて敢えて地味になることに必死だった。中身で選んでくれる人を探してそんな人と付き合えるように必死だったの。でも…そうなのよねぇ…。うん、もうありのままの自分で良いのかも」

なな子はそう言うと、そっと眼鏡を外した。


玲花は驚きつつも、そんななな子の姿に見惚れた。


「私だって自信なんかないよ。定期的に誰かから言われたり思い出したりしないと、すぐに自信持つことなんて忘れちゃうし。だから…私が誰かに対して、" 自信持って "って言うのは、自分にも言ってるようなもんなのかも…」

なな子は苦笑いした。


玲花は驚いたようになな子を見つめながら黙って聞いていた。


「逸ノ城さんがこうして私に気持ちを伝えてくれたことは…すごく勇気のいることだったと思うから、逸ノ城さんって凄いよね。だから…もっと自信持ちなよッ。…って、、、私に対しても言ってる…」

なな子がそう言って笑うと、玲花も釣られて笑った。

すると、玲花が静かに口を開いた。


「実はね、松尾に言われたんだ…」


「え…松尾くんに?」

なな子はキョトンとしながら玲花を見た。


「鷹鳥さんと話してみたら…って」

玲花はチラッとなな子を見た。


なな子は目を丸くさせた。


玲花「この前、悠佑くんに言われたんだけどさ…松尾くんと同じ事言ってたの」


なな子「…?」


玲花「私がね…毎回悠佑くんの事言ってるわりには、いつも鷹鳥さんを見てるって…」


なな子「…っ!!」


玲花「図星…」


なな子「え…」


玲花「女って何で勘が鋭いのかって悠佑くんは言ってたけど、男子も鋭くてビックリよ」


玲花は苦笑いした。


なな子も気が抜けたように笑う。


玲花は遠くに目をやりながら続けた。


「たぶんね、悠佑くんってずっと鷹鳥さんの隣の席だったでしょ?それで私は、悠佑くんのついでに鷹鳥さんを見てるんだと思ってたんだけどね…二人に言われてから気づいたの。私…先に鷹鳥さんを見てたわって」


玲花はそう言うと、小さく微笑みながらなな子を見た。


なな子は驚いたように玲花を見た。


「だから…悠佑くんの方がついでだったわ」

玲花がそう言うと、なな子と顔を見合わせて笑った。


「そうだったんだ…。松尾くんと悠佑が…」

なな子は小さく微笑んだ。


「だから…二人には感謝してる。鷹鳥さんと、もしかしたら気が合うのかもって思ってたのを、背中を押してもらえたから…」

玲花は照れながら言った。


「うん、確かに。私も少女漫画好きのアニメおたくだしね」

なな子はそう言うとニカッと笑った。


「え…。うそ…っっ。本当に?!えっ…じゃあ、アレ知ってる?乙女のタートルプリンス伝説!」

玲花は目を見開き、水を得た魚のように生き生きと話し出す。


なな子「あぁ、知ってる知ってる」


玲花「ヤダッ!うそッ!初めて話せる人がいたァーッ!!えっ…ねぇねぇ、あの王子って、あの時助けた亀だったってこと?」


なな子「そうそう、あの時の亀ね」


玲花「え、やっぱりぃっ!?」


なな子「だってあの王子が背負ってたリュック、亀の甲羅柄だったじゃん」


玲花「確かにッ!!見覚えのある柄だとは思ったけど、やっぱあれ甲羅よねッ」


なな子「ちなみに、あのリュックから出て来たパラシュートの柄も甲羅だったよ」


玲花「えぇっ!!マジ?!帰ってもう一回読み返してみるッ!」


玲花となな子はここぞとばかりに愛読している少女漫画について熱く語り合った。


玲花「ねぇ…なな子って呼んでもいい?私のことは…玲花って呼んでくれていいから…」


なな子「うん、わかった。よろしくッ!玲花」


玲花となな子はお互い打ち解け合い笑い合った。 


その日の帰り道ー


「おまえ…もう眼鏡はいいのかよ?」

悠佑が驚いたように言った。


「うん。私、無駄に必死になり過ぎてたみたい。だから、もういいの」

なな子は清々しい様子だった。


「俺は…ちょっと不安…だけどな…」

悠佑が俯いた。


「何で不安なのよッ!悠佑を好きだっていう私の気持ちは揺るがない。誰かが襲ってきたら私が倒す。これの何処が不安なのよッ」

なな子は堂々としながら言う。


「・・・っっ。…ふふ…ふはははははッ!」

悠佑はたまらず爆笑した。


「そんな爆笑しなくてもッ!」

なな子は悠佑の脇腹を軽く突っついた。


すると悠佑は、ツンツンしてくるなな子の手を掴むとなな子の身体を抱き寄せた。


"・・・っっ!"

なな子は驚き悠佑の顔を見上げた。


悠佑「最高…」


すると、悠佑はすかさずなな子に口づけをした。


「……っっ」


悠佑となな子はしばらく時を止め二人きりの世界を過ごした…。


---


翌日、教室にてー


「私の事、玲花って呼んで!多満子!」

玲花が元気に多満子に声をかけた。


「うん!ちょっと恐縮しちゃうけど…そう呼ばせて頂きくね…玲花…」

多満子が恥ずかしそうに言った。


「こっち側の世界へようこそッ」

悠佑がニヤニヤとしながら玲花に言った。


「何よ…こっち側の世界って」

なな子がジロリと悠佑を見る。


「たしかに」

吾郎がなな子の言葉に頷く。


「まぁ、ハイスペックな世界ってことだろ?」

涼太が笑顔で言った。


「そおゆう事だよ!そういう事ッ」

悠佑が鼻を高くしている。


なな子達六人は笑い合った。


すると、玲花は静かに口を開く。


「本当…松尾と悠佑くんには、感謝してる。・・・ありがと…」

玲花はそう言うと照れながらペコリと頭を下げた。


そんな玲花を見た吾郎と悠佑は、驚いた顔をさせながらお互いに顔を見合わせた。

吾郎は照れながら眼鏡をクイッと上げると、小さく笑みを溢した。

そんな吾郎を見た悠佑もフッと笑みを溢す。


すると悠佑は笑顔で言った。


「まぁ…良かったな、素直になれて」

悠佑はニッと笑いながら玲花を見た。


「うん。素直になるって…大事だって分かった」

玲花は深く頷いた。


なな子は一連の皆の様子を、優しい表情で見つめていた。

ふと悠佑と目が合ったなな子は、小さく微笑んだ。

悠佑は照れたように微笑み返した。


なな子達がしばらくたわいもない話をしていると、なな子達に聞こえるようにクラスの一部の女子達が言った。


「逸ノ城さんって本当したたかだよねー。鷹鳥さんが美人って分かって香月くんと付き合い出した途端に擦り寄っちゃってさァ…」

「ホント。魂胆見え見えー」 

「アハハハハッ」


「・・・・っっ」

玲花は表情を曇らせ俯いた。


悠佑「おぃ…おまえらッ…」

吾郎「おいッ」


バンッ!!


なな子が突然机を叩いた。


・・・・っ!!


その場にいた全員がギョッとし驚くと固まった。


"ギィィィーーーッ"

なな子は、自身が座る椅子の重低音を響かせながらゆっくり席を立つと、玲花の陰口を言っていた女子達に威圧感を身に纏いながら近づいて行った。


「ねぇ…そこのあなた達。本当の事知りもしないで、よくもまぁ…そんなに憶測だけで盛り上がれるわね。妄想が得意なのかしら」


「・・・っ」

陰口をしていた女子達が顔を強張らせた。


「気づいてないようだからこの際言わせてもらうけど、玲花よりもあなた達の方がよっぽど損得勘定で人を選んでるわよ?さっきのあなた達の会話だって、そういう発想が起こる時点であなた達の方が人を色眼鏡で見てるってことでしょ?」

なな子は威圧感を伴わせながら大人びた口調で言う。


「・・・っっ」

陰口女子達は何も言い返えせないでいる。


「人の真実なんて…所詮他人なんかが分かりようがないんだから、二度と人の事を分かったようにベラベラ喋んじゃないよッ!分かった?」

なな子は物凄い気迫で言い負かした。


「・・・は、はい…」

陰口女子達は俯きながら小さく返事をした。


そしてなな子は戻ろうしたが突然立ち止まり振り返ると、思い出したように女子達に向けて言った。


「あぁ、さっきあなた達が言ってた "したたか"って言葉。あれって本来は、"強くて自立しててしっかりしてる"って意味なんだけど、純粋にそういう褒め言葉として言ってたんだったら…私も同感だわ」

なな子がそう言うとニコッと笑った。


玲花「・・っ!!」


その場にいた女子達は、そんななな子の表情に呆然と見惚れていた。


「えっと、何の話だったっけ?…あぁ、風林火山ミッドナイトの話ね」

なな子が何事もなかったかのように席に戻ると涼しい顔して話を戻した。


「ありがとう…なな子…」

玲花が照れながら言った。


「気にしないで。私達の平和な日常を理不尽に壊すような人間には容赦しないから、私」

なな子はそう言うと眩しいほどの笑顔で笑った。


「ななちゃん…やっぱカッコイイわ…」

涼太が小声で呟いた。


「だろぉ?俺の自慢の彼女」

悠佑は照れながらも自慢げに言う。


「まぁ俺は知ってたから別に驚かないけどねー」

吾郎が涼しい顔して言う。


「ナニッ?!」

悠佑はギラッと吾郎を見た。


「ずっと友達だから、それぐらい分かってたし」

吾郎がサラリと言う。


「うっ…。確かに…まぁ、そうか。おまえだけハーレム状態だったもんなッ!俺、何気におまえの事羨ましかったんだからなァッ」

悠佑はムスッとしながら吾郎を見た。


「え、知らんし…」

吾郎は冷めた目で悠佑を見た。



そんななな子達の様子を、体育教師の巡哉は陰からそっと見ていた。

巡哉は誇らしげになな子を見つめていた。


すると、横から国語教師である可菜実が呟いた。

「なな子ちゃんがいとこなんて羨ましいな。きっと心強いでしょうね」


「・・・じゃあ…御堂先生もなりますか?…なな子といとこに…」

巡哉がなな子達を見ながら呟いた。


「え…」

可菜実が驚いて巡哉を見た。


巡哉は若干頬を赤く染めながら職員室へ戻って行った。


可菜実は穏やかな笑みを浮かべ巡哉の後をついて行った…。


午後の授業―


悠佑は今までの疲れが出たのか、体調を崩し保健室で休んでいた。


悠佑がベッドで爆睡中の保健室に、一人のある女子生徒が入って行った…。


―――


しばらくして悠佑は目を覚まし保健室から出ると、一人の女子生徒が立っていた。

それは、悠佑の事を未だに諦められないでいる悠佑のファンであり、先日なな子を壁に押し眼鏡を落下させたあの女子生徒である。


「悠佑くん、鷹鳥さんと付き合ってて本当に楽しいの?鷹鳥さんは美人かもしれないけど、言う事キツいし…クールな感じで何か冷たそうじゃない?」

その女子生徒は悠佑に詰め寄る。


「楽しいよ、なな子と付き合ってて。なな子の言い方がキツイのは、仲間守ってる時だけだよ。普段はクールかもしれねぇけど、冷てぇ人間なんかじゃねぇよ」

悠佑は真面目な表情で応えた。


「・・っ。でも、悠佑くんにはもっと可愛らしい女の子の方が…」

女子生徒は食い下がるように続けて言いかけた。


「俺がなな子を好きになっちまったんだからしょうがねぇじゃん。第一、俺がどんな奴を好きになるか決めて良いのは、俺だけだから」

悠佑は冷めた表情でピシャリと言った。


「・・・っっ」

女子生徒は悔しそうな表情を浮かべた。


「じゃ、そういう事だから。悪いが他当たってくんなァ…」

悠佑はそう言うとその場を後にしようとした。


「ねぇ、悠佑くん…。この写真…鷹鳥さんに見せたら、どうなるかなぁ?」

女子生徒はそう言いながら、悠佑に自身のスマホの画面を見せた。


悠佑「・・なっ!!!」


そこには、保健室で眠っていた悠佑とその女子生徒がキスをしている写真であった。


「おまっっ…いつのまに…」

悠佑はギョッとした表情で詰め寄る。


「鷹鳥さんがこの写真見たら…きっと悠佑くん振られちゃうんじゃない?鷹鳥さんこういうの厳しそうだもんねぇ。そしたら私、慰めてあげるよ?」

女子生徒は不敵な笑みを浮かべながらスマホをひらひらさせた。


「オィッ、テメェ…今すぐそれ消せ…」

悠佑はワナワナと苛立たせた。


「何してるの?」

ちょうどその時、タイミング良く現れたなな子は二人の後ろから声をかけた。


「・・っっ!!な…なな子っっ」

悠佑はさらにギョッとした表情でなな子を見た。


「鷹鳥さん、私…悠佑くんとこんな事しちゃったんだけど」

その女子生徒は、なな子に先程の写真を見せた。


「おまっ…」

悠佑が狼狽えた。


なな子「ふーん」


「・・・」


なな子のケロッとした表情と1ミリも動じていない言葉に沈黙が流れた。


女子生徒「え…」

なな子「ん?」

悠佑「・・っっ」

女子生徒「…えっと…こんな事したんだけど…」

なな子「・・・だから…何?」

悠佑「・・っ!!」

女子生徒「・・!…え…いや…っていうか…これ見て…何とも思わないの…?」


「べつに。そんなことぐらい、ウチらしょっちゅうだし…ねぇ?」

そう言うとなな子は微笑みながら悠佑を見た。


「えっっ!!あ…お、おぅ…」

悠佑は真っ赤な顔になりながらしどろもどろに応える。


「・・・っっ」

女子生徒は唇を噛む。


「良かったね!記念写真が撮れて。この先、もしあなたに素敵な彼氏が出来ても…もちろん大切に取っとくんでしょ?その写真」

なな子は不敵な笑みを浮かべた。


「・・っ!!い…要らないわよッ、こんな写真!」

その女子生徒は顔を赤くし、怒りながら足早にその場を走り去って行った。


「・・・・」


なな子と悠佑は無表情で静かに女子生徒を見送った後、お互いに顔を見合わせて沈黙した。


悠佑「あ…あの…なな子…さ、さっきの写真は、ご…誤解だから…」


なな子「どうせ保健室でやられたんでしょ」


悠佑「・・はぃ…」


なな子「…ったく、今度から保健室で寝る時はフルフェイスのヘルメットでも被っときなさいよッ」


悠佑「いや…それはいくら何でも…」


なな子「あっ!そういえば…うちに、防弾ガラスでできた宇宙服があったわ…。それここに置いとこうか…」


悠佑「うちゅ…おまえんち…マジで何なのそれ…」


「とにかくッ!もう他の女に唇奪われんじゃないよッ」

なな子は悠佑のネクタイをグイっと引っ張りギロッと見上げた。


「・・っっ。…はい…」

悠佑は力なく呟いた。


なな子は悠佑のしょんぼりした顔を見ると気が抜け静かにため息をついた。


すると悠佑は、なな子をチラッと見た後、静かに口を開いた。


「・・でもさ…なな子は…あの写真見て…本当に何も思わなかったのか…?その…嫉妬とか…。さっきのおまえ、すげぇあっさりしてたし…やっぱ俺のこと…そんなに好きじゃな…」

悠佑は顔を少々赤くし目を逸らしながら言っていると話を被せるようになな子が呟いた。


「嫉妬した」



悠佑「え…」


なな子「だいぶ…」


すると、なな子は悠佑の両肩に手を置くと背伸びをしながら悠佑に口づけをした。



悠佑「・・・っっ!!」


なな子「はい、これでリセット」


なな子は悠佑の胸にポンっと手をやると優しい眼差しで見つめた。


「・・・っっ!!」

・・・カァァァ…

悠佑に人生三度目の大きな恋雷が落ちた。

悠佑は顔を真っ赤にさせながら放心状態になり、呆然となな子に見惚れていた。


「置いてくよ」

なな子は颯爽と歩いて行った。


"やべぇ…俺一生なな子に勝てる気がしねぇ…"

悠佑は狼狽えながら慌ててなな子の後を追った。

底無しのなな子に落ちていく一方の悠佑であった。


一方、なな子は…


"うちにあるあの宇宙服、絶対使わないから今度マジで保健室に持ってこようかな…"


意外とやきもちを焼いていたなな子は、今後の対策として鷹鳥家にある宇宙服を持ってこようかと真剣に考えるなな子であった…。

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