ドリームハンター

ちゅにゃ

第1話 悪夢

「何かの間違いだ!私の息子が夢追い人なわけがない!まだ子供なんだぞ!」

 俺は悲痛な叫びをあげた。しかし上司のヘルマーの手はすでに拳銃を握っていた。

「同じドリームハンターのアムラ君なら理解してくれ。いくらきみの息子でも夢追い人の検査結果がでたからには…」

 俺はヘルマーの言葉を遮った。

「もう一度検査してくれ!子供が夢追い人になるなんてありえないんだ!」

 俺は必死に説得した。しかしヘルマーの拳銃の照準はすでに息子に向いていた。

「子供が夢追い人になることは滅多にないことはもちろん知っている。しかし100%ならないというわけではないのだ。」

 ヘルマーはゆっくりと撃鉄を起こした。ヘルマーの目の前にいる俺の息子は、不思議そうにその様子を眺めている。

「なぜもう一度検査をしない!その権利はあるはずだ!」

 俺は泣きながら懇願した。

「上層部からの命令なんだ。一時的に君のドリームハンターとしての職権は無効にされてしまっている。だからきみの権限で再検査を行うことはできない。私だってきみの息子を殺したくはないんだ。しかしこれは仕事なのだ。頼む、分かってくれ…」

 ヘルマーは引き金に手をかけた。俺はそれを止めようとしたが、先ほど受けたテーザーガンのせいで体が動かない。息子はこちらを無邪気な笑顔で見ていた。

「やめろぉ!!!!!!!!!」

 次の瞬間、銃声が2回鳴り響いた。



 ハッと気づいたときには朝になっていた。

「はぁ、はぁ、夢か…」

 頭痛がする。昨日の残業のせいか、それとも自棄酒のせいか…そんなことを考えていたら、隣で寝ていた妻のカトリーヌが心配そうな顔でこちらを見ていた。

「大丈夫?ひどくうなされていたようだけど…」

「あぁ、問題ないよ。ちょっと悪い夢を見ていただけさ。それより今は何時だい?今日は仕事の急用があって、少し早く出勤しないといけないんだ。」

 俺はベットから降り、カーテンを開いて背伸びをした。

「今は6時半よ。朝食はもう作っているわ。リビングにあるから。あ、お湯は沸かしてるから、コーヒーは自分で用意してね。それより、あなた最近しっかりと休んでる?働きすぎなんじゃないの?」

 俺は服を着替えながらぶっきらぼうに答えた。

「しっかりと休んでいるさ。俺のことは心配しなくていい。朝食をとったらすぐに家を出る。」

 いつからだろう。妻を以前ほど愛せなくなってしまったのは。別に嫌いになったわけじゃない。しかしなにか自分のなかで距離ができてしまったみたいだ。彼女は今でも俺を愛してくれている。

「わかっていると思うけど、今日は早く帰ってきてね。今日はエルの誕生日だから…」

 着替えを終え、一緒に朝食を取り始めたカトリーヌが言った。

「わかっているよ。今日でもう6歳か…あっという間だな…」

 俺は胸の奥がキュッとした。もし生きていれば今日で六歳。最後に見た笑顔は4歳の時だったかな…

 今朝見た夢のせいで、激しい悲しみが込み上げてきた。あの時どうすればよかったのか。エルを救う方法はなかったのか。いくら考えたとしても、息子が生き返るわけではないのに考え込んでしまう。

「朝食ありがとう。8時までには帰ってくるから。じゃあ行ってくるよ。」

 妻より早く朝食を食べ終わった俺は妻の頬にキスをし、ホバーカーで職場に向かった。

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