夜の独り言

第1話

また夜が来る

死にたくなる夜が来る

他の人々はまだ見ぬ明日に期待を寄せているのだろうか、不安を寄せているのだろうか

そんな人たちがいる夜で僕だけが卑しく死に急いでいる

こんな僕に生きるための場所など元よりない

あるのはただ死ぬために舗装された坂道だ

後は転がり落ちさえすれば晴れてこの世からおさらばだ

それでも僕にはこの道に身を委ねる勇気はなく

ただ死にたいという気持ちだけが空回りしている

なんと情けない人間なのだろう、いや本当に人間なのか?

何にも熱情を抱けないこの空っぽの骨と肉で出来たこの入れ物は人間と呼ぶに値するのか?

そんな疑問を投げかけたところで返ってくるのは否定だけだ

こんな無駄な時間だけが過ぎて行き、やがて夜が降りてきた

もう夜が来た

眠れない夜が来た

僕以外は寝て明日を待つ、僕は惨めに明日に怯えている

鳴り止まないこの希死念慮にはどれだけ苛まれただろうか

数えることすら億劫になってどれほど経つか僕にはもう分からない

ならば誰かが代わりに数えてくれただろうかいや、そんなことはない

期待すらされなくなって終わってしまった僕の周りに誰がいるだろうか、答えは既にある

家族、友情、恋情そんなものに価値は無いと吐き捨て

孤独を選んだ僕には何も無い

これでよかったのか?そんなはずはない

噛み切れない後悔があらゆる言葉を淀ませる

今までの積み重ねに意味は無いと否定する

そんなことは無いと誰かが言ってくれる筈と期待してしまう

そんな夜を笑う誰かがいた

僕がいた


結局僕は何を成し遂げただろうか

自分にありもしない可能性があると、高を括って無謀にも立ち向かっていた自分はとても眩しく見える

立ち向かうことすら出来ず蹲ることしか出来ない僕を君はどう見るだろうか

終わってしまい、足も腕ももがれ何処へも行けない僕を笑うだろうか

それとも、それでも生きろと、立ち向かえと言うだろうか

そんな事を言われても弱音を吐くだろう、この醜い僕は

それでもしつこく叱咤してくれるだろうか

自分のことすら信用出来ない僕は何処へ行くのだろうか

その答えは今は何処にもない

そうだこの答えを見つけなくちゃ、惨めったらしく足掻いて探さなきゃいけないんだ

こんな希薄な道標いずれは消えてまた路頭に迷う

でもそれでいいこんな僕にはそれがお似合いだ、どうせまた卑しく死に損なうのだから

ああ、また朝が来る

死に損なった朝が来た





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