12月5日 天気:晴れ

最近テレビで見たクマノミが可愛くてたまらなかったので、今日は水族館に遊びに行ってきた。

電車に乗って水族館に行くと。まだ営業時間前だというのに入口の前には大行列ができていた。

何の行列なのか気になったので、前に並んでいるガタイの良い男性に声をかけてみたが、男性は私の声が聞こえていないのか一切の反応を示さない。

仕方がないので私は男性の前に回り込んで顔を覗き込み、驚愕した。

ペンギンだ。

体長300センチ程のペンギンだ。

このペンギン。水族館に囚われた仲間を助けるために人間のふりをしてやがる。

どうりで言葉が通じないわけだ。

前から見てわかったが、こいつ、ロケットランチャーを3丁も腰から下げている。

それ使ったら仲間死んじゃうだろ。

ペンギンの解放軍が行列に紛れていることには驚いたが、まだこの行列の意味が分からない。

私は後ろの客にも声をかけようと振り返り、驚愕した。

寿司職人だ。

身長170センチ程の寿司職人だ。

皺一つない真白な前掛けには、ゴシック体の黒文字で『私がやりました』と書いてある。

魚を捌いたという意味なのか、法で裁かれるべき人間であるという意味なのかは分からないが、そんなことは書かない方がいいと思う。

しかし、日本語が通じそうだったので話を聞いてみることにした。

「すみません。今日って水族館でなにかあるんですか?」

私が尋ねると、寿司職人は全ての歯が見えるように笑った。

そしてその歯全てに日本国旗が書かれている。愛国心の強い人だ。

「これは水族館の行列じゃないのら!先進国首脳会議の観覧をするための行列なのら!G7なのら!」

寿司職人はそれだけ言うと、ケタケタと笑いながら寿司を握り始めてしまった。

これは恐ろしいことになった。

何故G7が観覧できちゃう上に水族館で開催されているのか。

そしてロケットランチャーを持っているペンギンはどっちのつもり出来ているのか。

何もわからない。

「へいお待ち!」

寿司職人が突然叫ぶと、地面に勢いよく何かを投げつけた。

それは炙りチーズ拳銃握りだった。

こいつ、殺し屋か?

完全に頭がパンクした私はクマノミを見るのは諦めて帰宅した。


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