第28話 新しい光の芽生え

「多文化交流月間」の成功は、沙也加たち「未来のハーレム計画」にとって一つの到達点であり、新たな出発点でもあった。イベントの反響は想像以上に大きく、多くの参加者から「次の活動にもぜひ参加したい」という声が寄せられていた。


商店街だけでなく、地域の学校や他の団体からも協力の申し出が届き、計画はさらに大きな広がりを見せようとしていた。


新しい提案


ある日、カフェを訪れた商店街の会長・藤田が、沙也加に新しい提案を持ちかけた。


「沙也加さん、この前の月間イベント、本当に素晴らしかったね。商店街の人たちも、また何か一緒にやりたいって言ってるよ」


「ありがとうございます。次に繋げられるように、私たちも何か考えたいと思っています」

沙也加は微笑みながら答えた。


「それなら、商店街全体で常設の『未来のハーレム拠点』を作るのはどうだろう?これまでの活動を形にして、もっと人が集まりやすい場所にしていくんだ」


「常設の拠点ですか?」

沙也加は驚きながらも、興味をそそられた。


「そうだ。カフェだけじゃなく、もっと広いスペースで多様な活動を展開できるようにする。展示、ワークショップ、文化交流――それを一年中できる形にするんだ」


メンバーとの議論


その夜、沙也加はカフェに集まったメンバーたちに藤田からの提案を共有した。


「常設の拠点か……それができれば、私たちの活動ももっと安定するし、地域全体でつながりが深まるよね」

拓哉が肯定的に話す。


「でも、それを維持するには資金や人手が必要だよね。私たちだけで運営するのは無理があると思う」

美奈が現実的な課題を指摘する。


「地域の人たちと商店街全体が協力してくれる形になれば、運営を分担できるかもしれない。拠点をみんなで作り上げるプロジェクトにすれば、もっと多くの人が関わってくれるかも」

ラミーが提案する。


「確かに、それなら一人一人の負担も減るし、地域全体でこの取り組みを支える形になるね」

沙也加は深く頷いた。


未来のハーレム拠点計画


商店街の会議で提案が承認され、「未来のハーレム拠点」を作るプロジェクトが正式に始動した。

拠点には以下のような活動を盛り込むことが計画された。

1. 多文化展示スペース

• 「つながりの地図」を中心に、異文化や多様性をテーマにした常設展示を展開。

2. 定期的なワークショップ

• 対話やアート、料理体験など、多様な価値観に触れる場を提供。

3. 交流カフェ

• 地域住民や観光客が自由に集い、自然に対話が生まれる空間。

4. イベントスペース

• 季節ごとに多文化イベントを開催し、地域の活性化を図る。


準備の日々


拠点作りに向けて、商店街の空き店舗を改装する作業が始まった。地域の住民も協力し、カフェの常連客やボランティアが集まって作業に汗を流した。


「この場所が新しいハーレムになるんだね。何だかワクワクしてきたよ!」

美奈は壁にペンキを塗りながら笑顔を見せた。


「こうやってみんなで一つの場所を作るのも、すでに未来のハーレムの形だよね」

ラミーも作業の手を止めて言った。


「地域のみんなが協力してくれるのが本当にありがたい。これが、私たちの目指してきたことの一つの形なんだろうね」

沙也加は感謝の気持ちを噛みしめながら作業に打ち込んでいた。


一人の住民の言葉


ある日、作業を手伝いに来ていた高齢の女性が、沙也加に声をかけた。


「私はずっとこの商店街で暮らしてきたけど、ここがこんなに賑やかになるなんて思わなかった。新しい人たちが増えて、いろんな文化が混ざり合って……若い頃には考えられなかったわ」


「そう言っていただけると本当に嬉しいです。この場所が、もっといろんな人を繋げる場所になればいいなと思っています」

沙也加が笑顔で答えると、女性は静かに頷いた。


「私もできる限りお手伝いするわ。この場所がみんなのために続いていくようにね」


その言葉に、沙也加は胸が熱くなるのを感じた。


手帳に記した言葉


その夜、沙也加は手帳にこう書いた。


「未来のハーレム拠点は、私たちのつながりの象徴になる場所。ここから新しい光が生まれ、広がっていくように、この一歩を大切に育てていこう」


地域全体で作り上げる新しい拠点。未来のハーレム計画は、さらに大きな挑戦の中で、その可能性を広げていった──。

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