第25話 対話の広場
「多文化交流月間」の第2週目、テーマは**「対話の広場」**。つながりを深めることを目的に、未来のハーレムカフェでは対話型ワークショップや参加型展示を中心にしたイベントが企画された。カフェ内には「つながりの地図」がさらに拡張され、新しい参加者が自由に書き込みをできるようになっていた。
準備の朝
イベント当日の朝、沙也加たちは早めにカフェに集まり、最後の準備を進めていた。
「展示スペースはこれで大丈夫だね。つながりの地図に書き込む用のペンとカードも揃えた」
美奈が準備物を確認する。
「今日は新しい参加者が多そうだね。商店街の人たちも何人か参加するって言ってた」
ラミーが笑顔で報告する。
「進行はウィリアムと私がやるから、拓哉と美奈は参加者の案内をお願い。今日は少し参加者が増えそうだから、みんなで協力して進めよう」
沙也加はメンバーに声をかけた。
対話の開始
イベントが始まると、カフェには様々な年代やバックグラウンドを持つ人々が集まってきた。参加者は小グループに分かれ、「違いを知る」ことをテーマにした対話が始まった。
ウィリアムが進行役として問いかける。
「皆さんがこれまでに感じた文化の違いや、共感できなかった経験について教えてください。そして、それをどう受け止めたかもぜひ話してみてください」
一人の参加者の話
ある中年男性が口を開いた。
「私はずっと地元の商店街で働いてきましたが、正直に言うと、外国人観光客が増えた頃は戸惑いました。言葉が通じないし、商習慣も違う。最初はどう接していいか分からなかったんです」
「その後はどうされたんですか?」
ウィリアムが尋ねると、男性は少し微笑みながら答えた。
「ある日、一人の観光客が地元の特産品について一生懸命聞いてくれてね。その時、言葉の壁を越えて伝わるものがあるんだなって気づいたんです。それからは、違いを怖がるのではなく、知ろうとする姿勢を大事にするようになりました」
彼の言葉に、他の参加者たちもうなずき、共感の輪が広がった。
つながりの地図の拡張
対話の後、参加者たちは「つながりの地図」に自分の思いや気づきを書き込む時間を持った。カラフルな線が引かれ、新しい言葉が次々と地図に追加されていく。
「最初は緊張したけど、話してみるとみんな同じような悩みを持っているんですね」
「違いを受け入れるって簡単じゃないけど、こうやって話すと一歩前に進める気がします」
地図は、対話を通じて生まれた新しいつながりの象徴として、ますます賑やかになっていった。
沙也加の挑戦
イベントの終盤、沙也加は参加者全員に向けてメッセージを伝えた。
「今日は皆さんの対話を通じて、未来のハーレムが少しずつ形になっているのを感じました。このつながりの地図は、私たちの多様な価値観が交じり合って生まれるものです。これを見ていると、違いは壁ではなく、新しい可能性を生む窓になると信じています」
その言葉に、参加者たちは温かな拍手を送った。
イベント後のメンバーの振り返り
イベント終了後、メンバーたちはカフェに残り、今日の出来事を振り返った。
「今日はすごく良かったね。特に、商店街の人が自分の体験を話してくれたのが印象的だった」
美奈が語る。
「つながりの地図も、どんどん広がってきたね。この地図をもっと大きくして、地域全体を巻き込む形にできたら面白そうだよ」
ラミーも嬉しそうに言う。
「次回のイベントでは、さらに深い対話を目指したいね。今日の成果を次のステップに活かしていこう」
沙也加は力強く提案した。
手帳に記した言葉
その夜、沙也加は手帳を開き、こう書き込んだ。
「対話の広場は、未来のハーレムをつなぐ架け橋となった。違いを知り、受け入れることが、私たちを新しい景色へと導いてくれる。次は、もっと深い対話を目指したい」
「未来のハーレム」は、つながりと対話を通じて、少しずつその形を確かなものにしていった。物語は、新たな挑戦の予感とともに続いていく──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます