毛むくじゃらのワイ、森の妖精だと勘違いされる

@BloodyBible

第1話 異世界でも毛むくじゃらは目立つ

「おいおい、また毛の話かよ!もうええって!」

なんJの「毛深い男は恋愛対象になるのか」スレで、ワイことタスたけは今日もキレ気味にレスをしていた。


【毛むくじゃらは存在自体がバグwww】

【モテない奴ほど毛深い説あるよな】

「いや、余計なお世話やろ……!」

PC画面を閉じ、ため息をつく。


自分の体は昔から毛むくじゃらだった。腕も足も腹も、見える部分は全て毛だらけ。中学では「ケダモノ」、高校では「毛の呪い」なんて陰口を叩かれた。大学には進学せず引きこもり、なんJだけが唯一の居場所だ。


「はあ……寝るか。」

布団に潜り込んで目を閉じたその瞬間――。


眩しい光に包まれ、体が宙に浮いた。



---


気がつけば、見知らぬ森の中だった。


「なんやここ……」

緑が濃すぎる森。空は見上げると青いが、木々が高すぎてほとんど覆い隠されている。


「おいおい、夢か?いやいや、ワイの人生にこんな冒険イベントなんてあるわけないやろ。」

自分の腕を見た瞬間、言葉を失う。


「……毛、増えとる?」

元々毛深かったのに、それがさらに濃く、そしてフサフサに。いや、毛の質感がやたら滑らかで、どことなく高級感すらある。


「あーもう、なんやこれ……」

独り言をつぶやいていると、どこからか声が聞こえてきた。


「きゃあ!何かいる!」



---


振り返ると、小柄な女性たち――いや、女性というより小人のような生物が数人、こちらを見て震えている。


「お、落ち着けや。ワイ、襲う気ないぞ。」

両手を上げて示すが、彼女たちはなおも怯えた様子。


「……あなたは、森の妖精様ですか?」

「は?」

思わず声を漏らす。


「この森を守護する伝説の妖精様。まさか、実在するとは……」


彼女たちは突然ひれ伏した。


「いやいやいや、ちょっと待て。ワイ、妖精ちゃう。ただのなんJ民や!」



---


その後、彼女たち――「森の民」と呼ばれる小人たちから事情を聞いた。どうやらこの森には、古の伝説に登場する「毛むくじゃらの守護者」がいるらしい。それがワイだと勘違いされているようだ。


「ワイはただ、寝てたらここに来ただけでな……」

「いいえ、妖精様。あなたのその美しい毛並みが、何よりの証です。」

「いや、これただの毛や……」


言い争いもむなしく、彼女たちはワイを「村」に案内するという。



---


村に着くと、さらに多くの小人たちが「妖精様!」と歓声を上げる。


「これ、思ってた異世界生活とちゃうぞ……」

呆然としていると、突如村の奥から緊迫した声が響いた。


「魔物だ!魔物が来たぞ!」



---


現れたのは、異様に大きな狼のような生物。鋭い牙をむき出しにし、村人たちに迫っている。


「た、助けてください、妖精様!」

小人たちは口々に叫ぶが、正直ワイは戦いなんて無理だ。


「いやいや、ワイに無茶振りすな!」

後ずさりするも、狼がこちらを睨みつけて吠える。


その瞬間――。


ワイの全身の毛が、金色に輝き始めた。


「……なんやこれ?」

輝く毛は風をまとい、次の瞬間、まるで盾のようにワイを包み込む。狼が突進してきたが、毛が防御壁となり、跳ね返した。


「お、お前ら見たか?ワイ、無傷やぞ……!」

「す、すごい……!やはり妖精様だ!」


村人たちの歓声の中、ワイは呆然と立ち尽くしていた。



---


「ワイ、どうやら普通じゃないな……」

こうして、毛むくじゃらの異世界生活が始まったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年11月27日 03:00
2024年11月28日 03:00
2024年11月29日 03:00

毛むくじゃらのワイ、森の妖精だと勘違いされる @BloodyBible

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ