第15話草っぱらで みんなと ー白いぼうしの〝お岩に〟が夢プロジェクトを語る
ー草っぱらー
草っぱらを前にして のらねこ お岩は
こういう うたをうたいだしたくなった。
♩
ははと わてと ふたり 花咲く道歩くんだっち
わては きれいな湖のほとりで~
白いちょうちょ 追いかけるんだっち
のらねこ お岩は思う、ここは
わては天国に たどり着くことができたんだ。草っぱらの向こうを見ると、
のらねこ お岩のおかあさん?灰色ねこがいる。おかあさん!
「やっぱり ここに来ていたんだね、おかあさん。おかあさんがとなりにいるなら、わて、いいな、天国でも。」
のらねこ お岩、すっかり天国を受けいれてるようす。その時だった、なにか聞こえる。これは〝お岩に〟の声? どうして⋯。
ここは天国なのに どうして ここまで
〝お岩に〟の声が聞こえてくるの。
「ちがうよ! 天国なんて行かないよ。天国は かなしいことを忘れることができるところ。
でも、そうなったら、いつも かなしみとともにある、のらねこ お岩の思い出まで忘れることになる。そんなの、いやだよ。それだったら、かなしいままでいるほうがいいよ。」
〝お岩に〟が、草をかきわけて、
のらねこ お岩を追いかけてきた。
白いぼうしをかぶっている、
ほんとにほんとの〝お岩に〟だ。
「ここは、天国じゃない、天国じゃないよ。たとえ ちっぽけな世界の片隅でも、ほんとに実在する場所なんだ。あの高台の森から歩いて
たった数十分で着く草っぱらだよ。
その灰色ねこ、灰色ねこが倒れてた あの時、
そばを通りかかったひとが保護してくれていたのだって。きっと今まで近くの保護センタにいたんだね。今度、ここに病院が建って、病院の
『夢プロジェクト』に送ったんだ。」
ここが天国なんて、早とちりもいいところ。のらねこ お岩の、とんだ かんちがい。
でも、それより、なにより、〝お岩に〟が そんな「夢プロジェクト」を思い描いていたなんて。それを思うと、なみだが出る。
のらねこ お岩は、なみだが こぼれないように、ぐっ、ぐっ、と、目に手を押しあてた。そうして、これも声になっているかは わからなかったけど、みんな ありがとう。そういう思いをこめて、のらねこ お岩は みんなを見回した。
となりに立つ、白いぼうしの〝お岩に〟。
けんけんをするように その場で小さく跳ねる、からす。
のらねこ お岩に向かって ほほえんでいるように見える、灰色ねこ。
みながみな、のらねこ お岩の前に、
たしかに存在していた。
のらねこ お岩は今度こそ ほんとうに
安心しきって空を見上げる。
ひとかけらの不安もない、雲一つない、
あおぞらのはれだった。
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