時には真面目な仕事の話!

崔 梨遙(再)

1話完結:2100字

 人材を採用する時、幾つも重要なことがある。その内の1つが担当者力だ。人事(採用)の担当者に魅力があれば、応募者は確実に増える。それは、様々な仕事にも共通するだろう。例えば営業でも、相手に良い印象を与えられる人材であれば、売れっ子の営業マンになれる。販売でも、感じのいいスタッフはお客様に好かれるので得をする。採用担当者も同じなのだ。採用担当者は会社の顔だ。担当者の印象で、応募者の人数が明らかに変わる。そこが興味深い。



 最強の採用担当者(責任者)が、某企業にいた。40代の課長だった。人気のある職種とは言えないのだが、おもしろいくらい応募者が集まる。会社や仕事の良いところも言うが、“しんどい”と思うであろうマイナスなこともキッチリ話す。良いことも悪いことも話すので信用・信頼される。何より、その担当者の人間力がスゴイ! とにかく印象が良い。オーラが出ている。勿論、トークもシッカリしている。これは人柄なので、言葉や文章で説明するのは難しい。とにかく、人の良さが滲み溢れているのだ。みんな、“この人がいる会社なら!”と思って応募する。


 ところが、新人研修が終わって各店舗に配属されると採用担当者はもういない。その結果、配属後、中には“思っていたのと違うので、会社を辞めます!”という新人が現れることもある。担当者の人間力に惹かれて入社した者は、担当者がいなくなると辞めることもありえるのだ。勿論、そうなると引き止めるために担当者が面談をするのだが。担当者は配属された新人のフォローに回らなければいけなくなる。


 これが、会社にとっての課題の1つになっていたようだ。なので、数年をかけて、担当者力に頼らない採用活動が出来るシステムを完成させたらしい。他の担当者が対応しても、或る程度の応募者を集められるようになったとのことだ。


 採用担当者は重要な仕事を背負っている。前述の通り、会社の顔であり、会社の窓口でもあるのだ。だから、採用担当者は万人ウケするタイプが選ばれる。また前述の通り、担当者が変わることで応募者が増えたり減ったりすることは珍しくない。だが、担当者の魅力で集めてしまうと、後で困る。だから難しい。しかし、目標採用人数という、ほぼノルマのようなものがある。だから、なんとしてでも応募者を集めたくなったりする。採用の仕事と営業は似ている気がする。


 そして、採用することがゴールではない。採用して、定着して初めてゴールと言える。ちなみに、何を基準に定着したと言えるのか? 最初の目安は3年だ。丸3年、辞めさせなければ定着したと言われることが多い。


 勿論、応募者全てを採用出来るかというと、そういうことではない。業種や職種によって求める人物像も変わるし、採用基準というものもある。採用基準を満たしていなければ断腸の思いで不合格にするしかない。


 そもそも、最初に採用設計をしなければいけない。例えば……新卒は大卒〇名、高卒〇名、そして中途採用〇名、といった感じだ。その目標に応じ、求人媒体を選んだり、合同説明会の参加を考えたりする。


 ちなみに、僕はネットに頼るだけの採用をする企業との差別化をはかるために大学や専門学校なども訪問していた。大学訪問は、事務に求人票を提出して、更に各教授・准教授にも挨拶をして、ゼミのメンバーが就職に悩んだらこの企業に応募させてほしいとお願いをする。学校訪問は、ネット社会でもそれなりに効果がある。なので、当時の僕は、“デジタルとアナログの両方を使って応募者を募りましょう”というトークを使うことが多かった。


 だが、学校訪問は緊張する。ひたすら丁重に、丁寧に接する。事務の担当者や各先生方に“この会社なら”と思ってほしいので、好感を持ってもらうことを目標に頑張る。学校訪問も、合同説明会などと同じなのだ。印象が悪いと損をする。


 どんな仕事も難しいと思うが、採用の仕事も難しい。でも、難しいけどおもしろい。やりがいもある。僕は、そういう仕事を経験出来たことを幸運だったと思っている。もう満足しているので、今からまた採用関係の仕事をやりたいとは思わないが。


 余談だが、新人達の入社後も興味深い。実務を始めてからの成長ぶりだ。意外なことが起こる。入社前から期待されていた優等生がパッとしない時もある。逆に採用基準ギリギリで採用された人材がいきなり輝いたりもする。人間はわからない。そういうところも面白い。



 それで、前半で登場していたスゴイ某採用担当者(責任者)だが、自分じゃなくても或る程度の応募が見込めるシステムを完成させた後、会社を辞めていた。退職の理由は知らない。だが、その人は優秀なので、スグに転職に成功し、今頃はどこかの企業で活躍していることだろう。心配はしていない。今回は、採用の仕事について、ちょっと書きたくなって一部だけ書いた。“採用”という大きく幅広いものの、ほんのごく一部だ。続きを書きたい。“採用”について書きたい。おそらく、近い内に書くだろう。その時、またお読みいただければ光栄です。よろしくお願いします!







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