第2話 舞い込んだ贈り物
風斗と話してから十日後。
家に帰った満に母親が声を掛けてきた。
「満、お帰りなさい。満宛てに荷物が届いているわよ」
「えっ、誰からだろう」
母親に確認すると、さすがに満の部屋のある二階にまでは運べなかったらしく、一階の居間に全部置いてあるらしい。
(全部っていくつあるんだろ……)
満は先に荷物が置いてある居間へと顔を出す。そこには大量の段ボールが積み上がっていた。
びっくりしながらも、満は荷物の宛名を見てみる。そこには確かに『
差出人の方を確認すると、これまた見た事のある名前が書かれていた。
『
「母さん、差出人、風斗のいとこだよ」
「あらそうなのね。でも、急にこんな荷物を送ってくるなんて何なのかしらね」
差出人に納得しても、荷物の量に納得できるわけがなかった。
それは満も同じである。
「母さん、自分の部屋に運ぶからちょっと手伝ってもらえる?」
「分かったわよ。落としそうで怖いけれど、お父さんが帰ってくるまで待ってられないし、片付けておかないとあの人怒るものね」
満は母親と一緒に届いた荷物を部屋へと運んでいく。
部屋まで運ぶと、早速荷物の開封となる。そこで満は改めて荷札を見る。
「えっと、デスクトップパソコン一式とモーションキャプチャ?」
書いてある内容を見て、一度開封を諦める満。どうしてこうなったのか、先に確認しておく必要があるからだ。
満は早速今使っているパソコンを立ち上げて、送り主とのコンタクトを試みる。
「えっと、二人の
風斗のいとこである二人のネット上での名前を思い出そうとしている満だったが、ふと目を向けた受信欄に
(ウォリーンとウェリーン……。世貴兄さんと羽美姉さんで間違いないや)
満はDMを開く。すると、荷物が届いた理由がはっきりと分かった。
どうやら風斗から満がアバター配信者をやりたがっているという情報が行き、二人揃って乗り気になってしまったようなのだ。
(うわっ、アバターも作ってくれてるのか。添付のURLからダウンロードできるって書いてあるな。僕のために専用のページまで作ってくれて、まったくすごい行動力だなぁ、二人とも……)
メッセージをチェックすると、どうやらパソコンなどはアバター配信をするために必要なものとして贈ってくれたらしい。なんとも至れり尽くせりである。
確認が終わると早速セットアップが始まる。段ボールの中にはセットアップの仕方が書いてある手紙が入っていたり、古いパソコンからデータを移すためのUSBメモリまで入っている。まったく、どれだけ手厚いのやら。
中身を確認していると、様子が気になったのか母親が部屋までやって来ていた。
「あ、母さん。中身はパソコンだったよ」
「まあ、そんな高価なものを? 今度お礼しなきゃダメね」
「うん、そうだね。で、今僕が使っているやつどうしようか。父さんに使ってもらう?」
「そうね。そうしましょうか」
話をしていた母親は、なんとも複雑な表情を浮かべていた。なにせ友人のいとこだなんてそんな大した知り合いでもないのに、こんな高額な贈り物をもらってしまったのだから。
母親と話を終えると、満は早速環境を整えるための作業を始める。
データの移動させてから古いパソコンをどけて、新しいパソコンを立ち上げて初期設定をする。必要なソフトを読み込んでモーションキャプチャの設定まで終えた。
ここまで終わると、いよいよアバター配信のためのモデルをダウンロードする段階になった。だが、ここまでの作業がかなり時間がかかり、母親から夕食に呼ばれてしまう。
仕方ないのでここでいったん打ち切り。夕食とお風呂、それと宿題を終えてから作業の再開となった。
あーだこーだと悪戦苦闘して、ようやく指定されたサイトから3Dモデルとモデルを動かすためのソフト、動画編集ソフトなどが一括でダウンロードされる。さらにはもしもの時の相談先として、二人の連絡先までが添えられていた。
風斗のいとこの二人に感謝しながらも、少しは動かしてみようとする満だったが、ふと時計に表示された時間が目に入ってしまう。
「うわっ、もうこんな時間か!」
パソコンのモニタに表示された時間を確認すると、もう夜の十一時を回ってしまっていた。
「よかった。今日はレニちゃんの配信のない日で。見逃してたら恥ずかしんでた……」
ファンとなったアバター配信者の名前を呟きながら、ほっと胸を撫で下ろす満。
もう時間としては寝る時間になっていたので、満はとりあえずアバターだけでも確認しようとしてファイルを開く。カチカチッとダブルクリックする。
いよいよアバターとのご対面だ。
満はごくりと息を飲む。
画面に表示されたアバターを見た満は、思わず固まってしまった。
「なんだこれっ!?」
夜中にもかかわらず、満は思わず大声を出して驚いてしまったのだった。満は一体何を見たというのだろうか……。
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