第31話

毒は 全ての物を食らいつく

 毒は 全てを無にする

 だけど 同時に 毒がない世界は毒以上につまらない

 山奥の小屋で一人

 クロユリの黒に見とれてた一人の男

 そんな男に、死神が囁く

「お前は、このままここで死ぬのか?」と

 そんな死神に、男はこう答えた。

「僕だって死にたくって死ぬじゃあない? ここに毒があるから死ぬんだ」と

「ふん? じゃあ? その毒をなくなれば、お前は死ねないのか?」と死神は、男に訊き返す。

「あぁ! そうだなぁ? この毒が、クロユリの花束にでもなったら俺は死なないし、なんなら、死神? お前の言うこと? なんでも聞いてやるよ?」

 男は、死にたいわけじゃあない。

 ただ、死ななくてもない理由が欲しかった。

 だから、死神から、その言葉を言われて、自分の中に生まれた毒を恨んだ。

「そうだな? だったら、その毒ごと、お前を殺してしまえばいい」

 そう、男に告げると、死神は、男に向かって、鎌を振り上げ、男を毒もろとも殺害した。

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