さよなら……愛しい人
第24話
どこかの山奥の小屋
「泉石? お前の言う通りだったよ?」
6日前、いつもと様子がおかしかった同僚で、時々パートナーを組む、泉石渚に、「お前、この頃眠れないのか?」とまるで世間話しをするような感じで声を掛けた。
けど、俺は、今、それを後悔している。
そのせいで、俺は、知りたくなかった恋人の裏の顔を知ってしまった。
『……あの人は、優しいけど、私を本当の意味で癒してくれるのは霧矢さん。貴方だけ』
『……なに言ってだよ! それを言うなら、俺をこんな気持ちにさせるのは、杏奈お前だけだ!』
☆
『……霧矢さん。私は、霧矢さんが好きです。だけど、千里さんの事も好きなんです。だから、教えてください。千里さんはいまどこにいるんですか?』
「……杏奈? きみがどんなに叫んでも、あの男は、僕の居場所は教えてくれないよ? それどころか?」
6日前、杏奈の携帯のストラップに仕掛けた盗聴器から杏奈と柿谷霧矢の会話が聞こえてくる。
『霧矢さん! 黙ってないで答えて下さい! 千里さんはどこにいるんですか!』
『杏奈ちゃん。俺は……ゴメン。きみには言えない!』
『どうして! 私達恋人なんだよねぇ?』
『……杏奈ちゃん。確かに、僕達は、恋人だよ? けど、僕達の関係はあくまで遊びで、僕が、本当に愛してるのは……』
『……霧矢さん。それ以上は、言わなくても大丈夫です』
『……杏奈ちゃん?』
『だから……今すぐ、私の前から消えて下さい! 私が……』
『杏奈……』
『その名前で呼ばないで!』
草津は、二人の会話がまだ続いているが途中の盗聴器の電源を落とし、自分の携帯を取り出し、茉莉川杏奈への人生最後のラストメッセージを打ち込み始めた。
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