外氣装甲の超反少女

四十万定六

第1話 その名はシュンカ

メキッ!!


鈍い音と共に、身長2メートルはあろうかと言う大男が真上に吹っ飛んだ。

そして、その男が立っていた場所には拳を突き上げつつ跳び上がる、幼い黒髪の少女の姿があった。


「なんだこのガキ!! 魔装具でも持ってやがるのか!?」


小汚い顔の男が、驚愕の声を上げる。


「お嬢様! お戻り下さい!!」


 脚から血を流す初老の男性が、必死に叫んでいるが少女は意に介さず、50人はいるであろう小汚い男の群れに向かって歩き出す。

 背中にはピンクのうさぎさん型のリュックが揺れている。


「退きなさい。」


 少女の可愛らしいトーンとは裏腹に、妙にドスの効いた声をかける。


「お嬢ちゃん。何やらすごい武器を持ってるみたいだけどさあ、この人数相手じゃあ息切れしちまうよう?」


 気色の悪い猫撫で声を出しながら、右手を差し出す男。しかし、すぐに豹変し


「今なら許してやるから、武器を寄越すんだ!」


 怒声を上げながら少女の頭を掴もうとするが、


「へっ? ぐがっ!!」

メキメキメキメキッ!!!


 男の手が空を切る。と同時に顎が跳ね上がる。

 男の顎の下には少女の突き上げた拳が刺さっていた。


ドサッ


 真上に吹っ飛んで、背中から地面に叩きつけられた男は、泡を拭いて気を失っている。


 少女は毅然とその場に立つと、残党たちを横目に睨む。


「なんだ? このガキ。素手でぶっ飛ばしやがった。」

「そんなアーティファクト、聞いたこともねえ。」

「ただの体術だってのか? じゃあ、なんであの体格で大男を吹っ飛ばせるんだ?」


 男たちに動揺が広がる。


「テメェら、ガタついてんじゃねえ!

どんな細工をしてやがろうが、タネには必ず限りがある。

全員で一斉にかかるんだよ!!

それとも、俺に殺されてえのか!!!」


 リーダー格らしき男が叫ぶと、男たちの目付きが変わる。少女を包囲するように移動すると、誰からともなく一斉に少女へと襲いかかろうとする。

 しかし、少女は機先を制すように、最も近くにいた男に向かって駆け出すと、大きくジャンプする。


「馬鹿が! 串刺しにしてや、うがっっ!!」


 剣で迎え撃とうとした男の顔面に回し蹴りがクリーンヒットし、元からガタガタだった歯が5、6本飛んでいった。

 一撃で気を失った男に見向きもせず、少女はそのまま空中で旋回し続けている。まるで蹴り足をヘリコプターのようにして浮力を得たかのように、空中を水平移動しながら回し蹴りを繰り出し続ける。


 怯んだ男たちはたまらず包囲を緩めた。


「テメェら。何やってやがる!

そんなガキ一人に、ビビりやがって!!」


 リーダーらしき男は、偉そうにしているだけで、少女に近付こうとしない。


「カシラが手本を見せてくださいよう。」


 小柄で出っ歯の男が不満そうに言うが、


「ヤースーーー。テメェは後で私刑だ!」

「そんなあ。殺生な。」


 そんなやりとりには構わず、少女は目に見えないボールを小脇に抱えるような構えを取る。すると、その手の間に光が溢れ出す。

 次の瞬間、少女は両手を体の前に突き出した。すると、光の球が打ち出されたのだった。


 ヤスとのやりとりに気を取られ余所見をしていたカシラの横っ面に光球がめり込んだ。


「ぶへっ!!」


 無様な声を上げながら、気を失って倒れるカシラ。

 それをみて手下達は完全に戦意を失い、逃げ出し始めた。

 少女はその背中を睨みつけながら、


「あんたたちじゃあ、ハオーショーコーケンを出すまでも無いわね。」


と言い捨てると踵を返し、怪我をした初老の男性へと歩み寄って行く。


「お嬢様。いつのまにそのようなお力を?」


 その質問には答えず、


「命に別状は無さそうね。助けを呼んでくるわ。」


と言いおくと、次の瞬間には少女の姿は見えなくなった。


「シュンカ様、、、」


 己の非力を嘆きつつ、執事は少女の名前を呟くのだった。



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のんびり更新予定ですが、褒められるとがんばります!!

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外氣装甲の超反少女 四十万定六 @finch3

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