デスロード 死にゆく人々

@HANAMIHANATABA

第1話

 私、加藤百合は、人間として、普通の人生を歩んでいると思っていた。でも、あの時から、私の人生は、恐怖と絶望で、埋め尽くされた。

「あぁぁぁぁぁ!?」

「ぎゃぁぁぁぁぁ」

「やめてぇぇー、助けてぇぇぇ!」

私は、目をつぶり、耳をふさいだ。でも、それでも聞こえてくる。いま食べられている友人の悲鳴と化け物が、友人を貪り食らう音が・・・・。

「ごめんなさい。ごめんなさい」

私は、田中、佐藤。二人の友人を見捨て、逃げてしまった。そして、親友だった井上のことも・・・。

「み・つ・け・た!」

えっ・・・・「ぎゃああああああ」

「待ってぇぇぇぇー」

「いや、いや、来ないで!」

私は、追ってくる化け物から、一心不乱で逃げていた。恐怖と絶望。

(彼らのようにはなりたくない)、とそう思った瞬間だった。

「あれ?」

体が動かなくなった。恐怖によって、体が支配されたわけではない。見えない何かによって、体が固定されていた。

「いや、いやだいやだいやだいやだ」

口だけしかない化け物に食われてしまう。そんなのは、絶対嫌だ。だから、私は、必死になって抵抗した。でも、それも虚しく、「い・た・だ・き・ま・すー」

化け物の口に放り込まれた。

ああ、私、死ぬんだ・・・・。

「ごくん」、と化け物が口を閉じた。そして、私を噛み砕いた。痛いのは、一瞬だった。

死んだ・・・・・・・・・・はずだった。

「・・・・えっ?」

「どうしたの百合?」

「えっ、お母さん」

「そうよ。あなた最近おかしいわよ?」

「どうして・・・・」

「どうしてって、あなたが倒れていたから、こうして、ソファーで起きるのを待ってたんじゃなの」

じゃあ、ここは、私の家・・・・。

「それよりも、学校は、もう八時よ」



私はいつも通り高校に、登校した。

「そうだ・・・・・。あれは、夢だったんだ」

呟き。そして、いつも通り、クラスの友達と話していた。

「ええ、皆さん!お話があります」、と担任の川下先生が、教室に入ってきた。

「はいはい、皆!座ってよ」、と副担任の石原先生が言う。

一年A組の生徒がそれぞれの席に座る。

「ええ、みなさんには、とても、つらいお話です」

先生たちは、妙に落ち着いていた。いや、これから話す内容が、あまりにも衝撃すぎるから、現実を受け止めているだと思う。

「田中さん。佐藤さん。井上さんが、殺されました」

「えっ・・・・、なんで?」

私は、自分が見た夢を思い出してしまう。一年A組の生徒全員が、その口を一瞬閉じた。でも、「先生。「殺され」他とはどういう意味ですか?」、と花見さんが、立ち上がり、言った。

「だから、何者かによって殺されました。今、警察が捜査中です」

「先生。トイレに行って来てもいいですか?」

「加藤さん。どうしましたか?」

「だから、トイレに行ってもいいですか?」

「えっ、どうぞ」

私の記憶から、井上の最後の顔がよみがえる。そして、私は、トイレに行ったと嘘をつき、屋上に向かった。

「ごめんなさい。ごめんなさい。

さようなら」

私は、屋上から飛び降りた。落ちる時間。一瞬ことだけど、走馬灯が見えた。

「グシャ」、とコンクリートに重いものが落ちた音がした。

「えっ・・・・、なんで?」

なんで、私は、教室にいるの?

「きゃあああああああああああ」

「なんで」

「おい!大変だ!田中が」

窓を見ると、クラスメイトの一人。田中昭介が、屋上から落ちて死んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デスロード 死にゆく人々 @HANAMIHANATABA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ